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印刷物を必要とするユーザーにとって、敷居が低い制作・発注システムに向かって世の中は動いている。
DRUPA2008ではオフセット印刷と対抗するかのようなデジタル印刷の予兆があったが、まだ実際には発売されていないものもあり、その後の動静は判断できない。デジタル印刷は思ったように進展していないのであろうか。 それとも今更とり上げる必要もないほど、すでにデジタル印刷時代になっているのだろうか。
オフセット印刷機をデジタル印刷機に置き換えることはほとんど起こっていないので、設備投資というところではごく一部の印刷業者しか移行は行っていないといえる。しかし印刷発注としてカウントされないところでのデジタル印刷やプリント応用はどんどん広がっている。
話はややこしいのだが、グローバルにみると地域によるデジタル印刷の使われ方の違いがある。もっとも出荷の多い北米では業務用の帳票類の比重が多いが、それは業務自体のIT化やその先にあるBPOという運用方法への変化がデジタル印刷の土台としてあるのだろう。これは旧来ならBF印刷を使ってプリントしていたようなところが、カット紙に直接データプリントをすることが増えたからである。
これらは一般にDPSというサービスであり、伸びてはいるが、もともとあった仕事の置き換えに過ぎないので、かつての軽印刷がofficeアプリケーションやプリンタに代わったように、必然性のあるところから順次置き換わっていくものである。それが日本でスムースに進まないとすると、それは業務自体のIT化やBPO化の動きが鈍いからであろう。
今までのDPSは昔計算センターといわれたところやBF印刷会社を中心にしていたと思うが、今後はプリントの先のフルフィルメント業者とか、プリント以前・入力業務のBPOの業者も関連してきて、そういった分野をDPS業者が連携していく方向と、あるいはフルフィルメントやBPOの業者がデジタル印刷をするようになる方向の2通りがでてくる。
日本では既存のBF印刷やDPSの業者がしっかりしたサービスを提供してきたので、そちらを軸に進んでいるが、国によってはBF印刷やDPSの業務の基盤がしっかりしていない場合もあるだろうから、印刷で言うとアナログから一挙にCTPにいってしまったように、業務のIT化によって直接デジタルプリンタを使う業務が進む場合もある。それは日本のほうがデジタル印刷の伸びが鈍く見える一因になっているのかもしれない。
いずれにせよ結果的には帳票はデジタル印刷になるであろうが、その流れに沿って他の印刷物もデジタル印刷が多用されるようになるのだろうか。 商業印刷は今はまだIT化ネット化というものに完全に乗った業務になっていない点からすると、課題は多い。印刷物の制作・受発注にネットが利用されるようにはなっているものの、オンデマンド印刷のWeb to Printと印刷通販などは別世界になっている例が多く、利用者から見るとネットの上で必要な印刷物が自由に取捨選択できるようにはなっていないからだ。
一般に印刷物の制作ワークフローは3つの種類があるといえる(図)。最初の段階は商品の企画とか試作の段階で、会議資料のようにMicrosoftOfficeで作るようなものがある。この時は内容も不確定で会議のたびに変更され、開発商品の確定とともに定まっていく。当然プリントは小ロットしか必要なく、利用者の手元のプリンタで作成されるだろう。
次は商品が売り始められる段階で、印刷物はデザイナーの手で作り直しをされる。これはAdobeCSなどのプロのツールを使って制作され、販売チャネル向け説明用の小ロットの印刷かデジタルプリントが使われるだろう。最近ではWebサイトにカタログ・パンフレットのPDFを置くとか、Webブラウザでパラパラめくるシステムを使うことも多いが、それもこの段階の制作物からくる。
商品の出荷が順調に伸びてくると、ある程度の期間は毎月一定量の印刷物が必要になるので、単価が安い大ロットのオフセット印刷でカタログが作られる。あるいはこの段階でもデジタル印刷でバリエーションを作りながら使いたいというニーズがある。オフセット印刷とデジタル印刷を同じ制作方法にして自由に切り替えられるワークフローが普及すれば、バリエーションのデジタル印刷もやりやすくなると考えられる。
ページ数の多いカタログの場合は、デザイナが作ったレイアウトのテンプレートを基に、自動組版をする場合があるが、これもAdobeInDesignとか専用システムであって、修正はそのシステムに戻さねばできない原則であり、あとでバリエーションを作るのは困難になる。以上のように、印刷物制作には不安期、変動期、安定供給期にそれぞれ適合した作り方ができてしまったことが、プリント枚数の多少に関するスケーラビリティを悪くしている。
現在新しく出現しつつある自動組版や印刷物制作のASPサービスは、前述の今までのオフラインで発達したそれぞれ適合した制作方法とは異なって、どこでも誰でも一定のものが瞬時に作れるシステムとして、プリント枚数のスケーラビリティ問題を乗り越えるソリューションになりえるものと期待できる。つまり印刷物を必要とする需要家にとって敷居が低い制作・発注システムに向かって世の中は動いているといえるし、その成長に合わせてデジタル印刷の活用度もあがっていくといえるだろう。
ALPS協議会 2009.10