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資源・エネルギー・環境という相互に関連して入り組んだ課題に対して、印刷業はどう取り組むべきか。
トピック技術セミナー2009 12/10開催
少し前までカーボンオフセットと呼んでいた概念と、それ以前からあるエコロジカルフットプリントが混在したような環境管理で、2009年度は商品種別算定基準(PCR:Product Category Rule)に基づいて、原案策定計画を作る試行事業が始まり、うるち米(ジャポニカ米)、菜種油、衣料用粉末洗剤のPCR原案が審査され、これらのPCRが公表された。
そもそもカーボンオフセット(carbon offset)とは、人間の経済活動や生活などを通して、「ある場所」で排出された二酸化炭素などの温室効果ガスを、植林・森林保護・クリーンエネルギー事業などによって「他の場所」で直接的、間接的に吸収しようとする、差し引きゼロを目指す運動である。ここでいうオフセットは相殺を意味する。
よく知られている二酸化炭素の吸収量を増やす手法は植林などにより二酸化炭素を固定化することである。また発展途上国の古い設備ややり方が二酸化炭素を多く排出することに対して、先進国の削減技術を用いて排出する二酸化炭素の量を減らし、その分の二酸化炭素量も相殺に組み込もうとしている。
また削減対象も二酸化炭素のみではなく、メタン、フロンなど他の温室効果ガスも含まれる。削減量は国連が認めるCERと、第三者機関が認めたVERの2通りがあり、様々な基準が存在する。二酸化炭素を排出しない発電「グリーン電力」利用は、二酸化炭素排出の替わりになるのか?、削減とは言えないのではないか? などの議論もある。
一方フットプリントとは、1990年代に考えられた人間活動が環境に与える負荷を資源の再生産や、廃棄物の浄化に必要な面積として表すエコロジカル・フットプリント(Ecological footprint)、という概念からきている。これは人が生活を維持するのに必要な一人当たりの陸地および水域の面積として示される。人間が自然を踏みつけた量(面積)という意味で、例えば日本は一人当たり必要面積が今の国土の何倍か必要になるわけで、生活レベルが高いほど環境負荷が大きい。世界平均はアルゼンチンで日本はその倍ほどになる。これも計算方法が難しい。
カーボンフットプリントとは、個別商品ごとにCO2排出量を「見える化」する方法で、生活の中で消費しているモノやサービスについて、原料採取から製造→包装→輸送→購買・消費→廃棄に至るまでのサイクル全体で発生するCO2排出量を算出(ライフサイクルアセスメント)してラベルなどに表示する。
これにより消費者の目にその商品の環境への影響を判断させ、消費者は自分が間接的にどれだけCO2を排出しているかに注意を払うようになり、自分の生活から温暖化などへ意識が向くようにし、また企業が環境活動に取り組む姿勢を消費者にアピールする機会として捉えていただく試みとなっている。両者を合わせて「消費構造の低炭素化」への好循環を作り出そうとしている。
ただし「ライフサイクルアセスメント」はあまりにも範囲が広く、その算出方法が複雑になりすぎて企業が準備しにくいであるとか、企業ごとに算出方法が異なってしまうと、結果的には信頼できないものとなるため、簡便にCO2排出量を算出できるシステムとか、表示内容を認証する第三者機関などが必要になる。
そこで経済産業省は、カーボンフットプリント制度の構築に向けた試行的取組として、2009年度より、「カーボンフットプリント制度試行事業」を開始し、その第一段階として、2009年6月1日より、商品種ごとの算定・表示のルールとなるPCR(商品種別算定基準)の策定のための計画の登録申請を開始した。これはTS(標準仕様書)Q0010という基本ルールに基づくものである。
平版印刷用PS版について、原料調達からリサイクルまでの商品ライフサイクル全般(LCA)の温室効果ガスをCO2に換算して表示するための算定基準(PCR)が、昨年10月22日に意見公募段階に入り、今後この原案が検証されると製品の市場流通の際にカーボンフットプリント(CFP)のマークの仕様が認められところまできている。
「JAGAT トピック技術セミナー 2009」では、全体テーマを[環境に印刷作りを合わせる]として、印刷が社会に対して新たな対応を示すために、資源・エネルギー・環境という相互に関連して入り組んだ課題に対して、デジタル印刷とオフセット印刷の棲み分けを考え直すとか、時代に合ったサービス製品開発などを通じて、従来よりも環境にやさしい印刷に組み替えていくことの提案がある。
特別講演は、ライフサイクルアセスメント活動の日本の中心である社団法人産業環境管理協会から、これまでのエコリーフ事業とこの制度の関連や、CFPをめぐる国際動向や日本の取り組み状況、今後についてお話を伺う。紙媒体の価値を認めていただいている発注者やエンドユーザの意向を反映した生産体制にしていかなければならない。
JAGATトピック技術セミナー 2009
2009年12月10日(木) 10:00~16:15
印刷工場のFA/CIMをテーマにして、より高い生産効率をあげるための工場づくりに役立つ新しい技術の流れを製品を通して紹介。