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ハリウッド映画では、いまやそのほとんどが3DCGに取って代わられている。コストも品質も従来方法を上回るCGが印刷に利用されないわけはないので印刷原稿としてのCGが急増している。
印刷に使用されるカラー画像はこの10年間で大きな変化があった。これほど急激に画像環境が変わることを想像できた人はそう多くはないだろう。 10年前だったら、カラー画像はリバーサルフィルム(通称カラーポジ)と相場は決まっており、カラービューアを使用さえすればだれでも色を確認できるので安定したワークフローが確立されていた。いわゆる分業体制で文字工程の最終成果物は版下としてビジュアルで確認できたし、画像入稿はカラーポジとして確認できたわけである。画像修正も含めて文字と画像の合成、いわゆる製版工程の成果物は集合ポジ(ネガの場合もあり)として目視で確認できたし、校正刷りとしてプレ印刷しても確認することができたのだから各工程の責任範囲は明確だったと言える。
しかし、よくよく考えてみると本当に正しい色をカラーポジが伝えていたかというと、その辺に関してははなはだ疑問なのである。記憶色とか心理的なとかよく引き合いに出されるが、そんなレベルではないかなり作った色という場合がほとんどであった。対してデジタルカメラの色は相当正確に再現されていると言える。初期に赤外カットフィルタやCCDの性能やチューニングでトラブルはあったが、今となっては過去の遺物と断言できる状態である。色のチェックにしてもAdobe RGB対応の液晶キャリブレーションモニタのほうがカラービューアや校正刷りより余程安定していた。
リバーサルフィルムはひと言で表現すれば、正確な色再現というより好ましい色再現を目指して色彩設計されている。その上データとして使用する場合には、カラーポジをカラースキャナで色分解するわけだから、カラースキャナで色に対する補正が大きく影響してくる。カラースキャナこそ印刷業でお金を取れる色再現に特化しているため、リアルな色よりも印刷発注者が満足する色作りにターゲットは絞られている。実はアナログ時代は責任分担や品質保証がしっかりされていたというのも大いに疑問が残るところなのである。
印刷原稿として使用される画像データがデジカメになったと思っていたら、もう既に印刷入稿されている画像データの中にCGデータ比率がかなり高まっている。印刷業界ではTIFFやJPEGデータとして入稿されているために気づいていないが、実写ではなくCGで作成されているものが多く混ざっているのも事実なのである。自動車などの工業製品はほぼ100%CADで設計されている。ゼロからCGデータを作成するのは大変だが、CADデータがあれば構造に関するデータ、いわゆるワイヤーフレームはできているので、後は光の当たり方さえ指示してやれば、CGソフトのレベルによって20重反射や30重反射を計算してリアルな写真ができ上がるというわけである(CADソフトの会社とCGソフトメーカーが同じところも多いのは今後の道筋を示しているとも言える。何重反射も計算できればリアルなライティングをシミュレーションできる)。
素人のフラッシュ撮影は被写体に直接光を当てるが、プロフェッショナルは天井にバウンスさせたり、アンブレラ(傘)に反射させたり、わざと逆光にしたりと99.9%直接光は使わない。天井に反射された光が、さまざまなところに光が反射して被写体に当たり、被写体の反射光がまた天井に反射したりして彩度被写体に当たったりするのが、何重反射ということだ。ここまで反射光を再現できるとかなりリアルな再現が可能になる。
(『Jagat Info』2008年10月号より抜粋)