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2009年10月、 第11回FAGATが開催された。オーストラリアからの発表では、守るべきモノがある立場、要するに印刷産業を守らねばという決意を一番感じた。
JGAS2009も終了しインクジェット印刷機などは前評判どおり注目を集めていたが、JGASに合わせてFAGAT(Forum of Asian-Pacific Graphic Arts Technology)が開催された。FAGATは毎年行われているアジアパシフィック地域の印刷関係者が集まる会議であり、今回で11回目を数える。
今回日本以外から出席している国はオーストラリア、中国、韓国、タイ、スリランカ、フィリピンの6カ国だが、個人的に一番共感できたのはオーストラリアで、守るべきモノがある立場、要するに印刷産業を守らねばという決意を一番感じた。恐らく日本以上に紙バッシングが強いのだろう、印刷が二酸化炭素排出の元凶のように言われているようである。「感情的な言い掛かりだ」とオーストラリア印刷工業会のJim Atkinson会長は憤っていたが、立場はなかなか苦しいようで、ITによるコストダウンやクロスメディア展開をして奮起しているが、「紙は悪者ではないという世界的なアピールが必要だ」と繰り返していたのが印象的であった。懇親会でも「混ぜ物をしていない紙は実は一番エコ的なメディアである」ということで意見が一致した。日本の印刷業界の近未来を予測するのに欧米を参考にするのもけっこうだが、実はオーストラリアが日本の半年くらい先を走っているモデルケースかもしれない。規模は参考にならないが技術トレンドや問題点などはかなり参考になるように感じた次第である。
対して中国の場合は、守るべきものという意識はもともと皆無であり、あれだけ大きい国なので幾つかのグループに分けるとわかりやすい。日本の4年から8年後を追い掛けているトップ集団、いきなりデジタル印刷に飛んでしまう亜流集団、東南アジアと同じ立ち位置にいる集団に大別できそうだ。トップ集団は、今まさにCTP化が旬でありドイツ製の印刷機が多く導入され実に活気がある。広東地区では中国製の紙による日本の印刷下請けも盛んに行われているようだ。この集団と日本の間に韓国が位置する感じだが、半導体など、韓国のほかの産業と比べると真面目さは感じるが、迫力はいま一つという感は否めない。
いきなりデジタル印刷集団は、印刷スキル習得も飛ばしてコピー感覚でデジタル印刷に移行してしまった集団であり、しがらみがないぶんIT産業として潜在的な強みを感じさせる。ある意味一番中国らしいとも言える。
最後の集団、それ以外の国はピンキリだが、ピンのほうはこれからインドの最新鋭印刷機を導入していくのだろうか? 中国はこの3集団の縮図、東南アジア地域も割合こそ違え、おおむねこのような感じである。注目はインドを中心とする印刷機材動向のような気がする。
(郡司秀明)
(「JAGAT info」2009年11月号より)
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