プリンティングコーディネータも転換期 記事No.#1622
掲載日: 2009年11月30日
11月末、クロスメディア認証委員の佐々木雅志氏によるプリンティングコーディネータ養成講座の最終講義があった。
佐々木氏は「印刷は最上ではなく最適が求められている」、「作り方から使い方」への視点の転換を強調した。
プリンティングコーディネータ養成講座が始って13年が経過した。プロセスのフルデジタル化によって一気通貫型の管理が必要となり、クライアントの計画す
る印刷物を最適な方法と品質で実現する人材養成講座としてスタートしたが、初期の頃は、スキャナオペレータやマックオペレータが比較的多かったが。しか
し、しだいに企画・デザイン、営業分野の受講生が多くなった。
メディアとしては名前の通り、印刷制作を目指すもので、企画主体はクライアントにあるというスタンスである。時代の変遷の中でプリンティングコーディネー
タをどう定義するか、コーディネータ機能をどう考えるか、見直しの時期にあるかもしれないが、印刷物であることを前提にその計画に沿って最適なプロセスや
製品を支援することを役割としているのが、コーディネータであろう。しかし、もう一歩クライアントの懐に入ることやコーディネータの機能をプリンティング
に縛らないことも一つの考え方かもしれない。
「最上ではなく最適であること」を目指すのは容易でなない。むしろ困難であるといった方がいい。最上を考えるとき、クライアントの満足よりも自社、自身の
満足度にのめり込むことで、独りよがりが強くなる傾向がある。最適を意識するには、クライアントの満足度がなによりも重要であり、クライアントの本来の目
標が達成されないと最適だったと判断してもらえない。この大きな違いをプリンティングコーディネータとしてバランスよく提供しなければならない。印刷の設
計、制作はプロであって当たり前であると同時にメディアのコーディネータとしても見識、能力をもたなければ信頼は得られなくなるであろうと佐々木氏は述べている。
京都に本社がある印刷会社のプロデューサーとの話である。
その会社ではデジタルサイネージに注目して事業展開を始めて3年になる。メディアとしての基礎技術や人材面では質の違うものが要求されたが、違和感なく自
分たちの事業として取り組むことができたのは、もともとクライアントの販売促進支援をビジネスとしており、たまたま印刷物というメディアを具体的な商品と
していただけで、あくまで販売促進支援が自社のビジネスであるという視点に立っていたからだ。そう考えると、デジタルサイネージはその延長にあるもので、
そこを避けては通れないし、避けたのではビジネスを放棄することになるという。
かつては、何をビジネスとするか、何をクライアントに提供するかを判断するときに「クライアントの本当の目的」ではなく「自社が出来る印刷物製作」という
軸で決定をしてきたのではないだろうか。この軸で事業を判断するならば、縮小せざるを得ないことは明白である。クライアントの本当の目的を追求し、応えて
いくことが自社のビジネスであると考えるのならば、あらゆる手段、メディアを取り込んでいくのがこれからの自然な姿になるであろう。
とはいうものの、ビジネスの視点の置き場所でかなり大きな違いがあることは周知のとおりである。
プリンティングコーディネータといえども視点を広く、常にクライアントに向けて最適プロセスを導くと同時に、印刷しか分からないプリンティングコーディ
ネータでは印刷会社をリードすることはできない時代になりつつある。メディアコーディネータとして深い印刷の見識をもつ人材へと移行しなければならない時
がやってきたようだ。