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経営理念である「顧客最優先の開発経営」の下に、国内外のお客様のニーズにこたえられる製品、並びに付加価値の高いサービスを提供することで、世界の市場をけん引するノーリツ鋼機。同社の現状と今後の見通しについてお聞きした。
ノーリツ鋼機株式会社 執行役員 マーケティング本部長 岡崎寛生氏に聞く
――貴社のこれまでの歩みをお聞きしたい
岡崎氏 フィルムを現像しプリントする工程には、最後に水洗という作業がある。当初この作業は手作業で行っていたが、これを自動化しようということで、創業者の西本貫一が水車の原理をヒントに、停電時でも使える「写真印画自動水洗機」を発明したところからノーリツ鋼機の基礎を築き、歴史が始まった。
創業当初、「私にも作ってほしい」との要望が多く、現像所向け機器を多数製造したが、まだまだ処理作業に時間が掛かるため、もっと自動化してほしいとの声が聞かれるようになってきた。そこで開発されたのが、1976年に製造したフィルムを現像してプリントする工程を一元化させた「自動化システム QSS-1型」である。これが“ミニラボ”の原点である。1979年には「QSS-2型」を発表。コンピュータを搭載し、フィルム現像からカラープリント仕上げまで45分を実現し、自動処理システムの決定版としてアメリカで大きな反響を呼んだ。
現在「QSS-37型」まで製造され、“プリント幅のA4版対応”“幅広いフィルムへの対応”“アナログからデジタルへの対応”など、ユーザーの要望へこたえるべく、さまざまな改良がなされてきた。
――デジタル化へのきっかけは?
岡崎氏 大きな起点となったのは、フィルム規格APSが「インデックスプリント」を求めたことである。また同じころデジタルカメラが発売されたり、コンピュータが一般に普及してきて、そのデータを使ってPhotoshopで加工したものをプリントしようという動きも出てくるようになり、それらに対応するためデジタル化が必要だった。
――デジタル化も含め、技術・製品開発はすべて自社で?
岡崎氏 そうである。これがノーリツ鋼機の一番の特徴である。ノーリツ鋼機では、自社で研究から開発、製造、販売そしてサービスまで、トータルソルーションを提供できることが大きな強みである。今後もこの強みを生かしていろいろなことができるのではないかと考えている。
サポートセンターは全国各地に拠点があり、自社で徹底したサービス教育を行っているので、ノーリツ鋼機のユーザーからの評判は非常に高い。研究開発も本社全従業員約1000名のうち、約200名が従事しており、「ものづくり」へのこだわりが垣間見える数字である。
――海外での状況についてお聞きしたい
岡崎氏 世界180カ国に事業展開をしており、比率は日本が15%、海外85%(北米:36%、ヨーロッパ:19%、アジア/オセアニア:16%、その他地域:14%)となっている。
基本的なニーズは同じだが、国によっては若干の違いがある。北米などはプリントクオリティにあまりこだわらないが、インドなどは細かい要求が多いため、かなり苦労している。ただ、やはり一番クオリティに対して厳しいのは日本である。そういった意味では、日本で認められた技術は何処へ行っても通用する。
――国内での動きについてお聞きしたい
岡崎氏 これまでは写真屋さんとのお付き合いが主体であった。これからもそれに変わりはないが、最近は「フォトブック」が浸透してきており、引き合いも増えてきている。グラフィック業界の方たちも「フォトブック」に注目しているとの声をよく耳にする。ノーリツ鋼機としては、この分野へ力を入れていきたいと考えている。
また、大型ポスターなどを出力できる大判プリンティングシステム「MITYS-1」についても、次世代高画質出力を実現できる製品として、サイン&ディスプレイ業界だけにとどまらず、グラフィック業界へも事業展開していきたいと考えている。
――「MITYS-1」についてもう少しお聞きしたい
岡崎氏 とてもユニークな技術を採用している。これは協力企業と共同で開発したものだが、印刷のクオリティが良く、高級ブランド製品などにも採用していただいている。その他用途はさまざまだが、最近の事例では高速道路のゴミ箱に貼っているシールがある。ああいったところに使われているものは、汚れが付きやすかったり直射日光が当たるところに設置されているので、耐候性が良くなければいけない。分別するのに字が見えなくなったり汚れたりでは、ゴミ箱としては不都合である。拭き掃除すれば簡単にきれいになり、退色しないという「MITYS-1」の特長が生かせる。
新たな分野が広がったのではないかと実感している。また、光沢感が非常に高く、自動車メーカーのラッピングに関する商談を頂いた時も、「新車の光沢感と全く変わらないクオリティでラッピングできている」とお客様に非常に気に入っていただいた。従来のポスターやラッピングでは高い耐候性を求められてこなかったが、新たな用途での事例が増えていくことによって、「MITYS-1」で対応できる市場が広がっていくことが期待できると考えている。これらのことは、見て触れていただければ必ず実感できるので、ぜひショールームなどに足を運んでいただきたいと思う。
――環境保全活動への取り組みも積極的に推進しているとのことだが
岡崎氏 ISO14001の認証取得や、「3G活動」などの環境保全推進体制を整えている。3Gとは、“Green”“Global”“Generation”のことを表し、社員一人ひとりに周囲の環境と共存するという意識付けを行っている。写真現像廃液を出さないデジタルドライプリントの開発など、新製品開発においても環境に優しい製品の開発に取り組んでおり、今後も促進していきたいと考えている。
また、地域貢献活動にも積極的に取り組んでおり、毎年、和歌山で開催される「1万人大清掃」のボランティア活動への参加や、各種地域イベントへの協賛・参加、医療センターへの寄贈なども行っている。
――今後の展望についてお聞きしたい
岡崎氏 ノーリツ鋼機は、トータルソリューションプロバイダーを目指している。「印刷機器だけでなく、インターネットを通じてサービスの提供ができる」「工場を使ってお客様へのサービスが提供できる」「アフターサービスによって製品だけでなく別の周辺機器も提供できる」など、あらゆる場面に対応していきたいと考えている。今後は従来の写真関連機器だけでなく、グラフィック業界やその他の業界への進出も視野に入れながら、常に最良のパートナーとしての地位を築いていきたいと考えている。
ノーリツ鋼機株式会社
〒640-8550 和歌山県梅原579-1
TEL 073-454-0307 / FAX 073-454-0420
(「JAGAT info」2009年10月号より)