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電子書籍・電子カタログは、紙媒体から1歩進んだリッチな表現をパソコンやモバイル端末上で実現できるデジタルツールであるが、その媒体が持つ特徴や性質によりビジネス展開も異なってくる。 [デジタルブック特集1]
一般的に「電子書籍・電子カタログ」と言えば、ほかにも「デジタルカタログ」「ebook」「デジタルコミック」などと表現され、その媒体が持つ特徴や性質によりその呼び方は多種多様である。いずれも、「紙媒体から1歩進んだリッチな表現をパソコンやモバイル端末上で実現できるデジタルツール」であることには変わりないが、その媒体が持つ特徴や性質により、呼び方も変わればビジネス展開も異なってくる。果たして印刷市場は、この「デジタルツール」とどのように付き合っていくべきか? 当社で展開しているデジタルブックサービスを交えてご紹介していきたいと思う。
さかのぼることおよそ20年前、これまでの写植・活版に代わる画期的なページ記述言語がアメリカより伝来し、印刷業界は「DTP」という大きな革命を経て現在に至っている。DTPでもたらされたデジタル化は、業界のスタンダードワークフローとしてさまざまな恩恵をもたらした。そこで培ったデジタルパブリッシングのノウハウ、クライアントとの信頼関係、さらには印刷に耐え得る高品位なデジタルコンテンツを保有しているのは、紛れもなく印刷会社である。
電子書籍・電子カタログを作り上げる上で、まさにこの「デジタルコンテンツ」が大きな武器として生きてくる。(一般的には)クライアントですら持ち合わせていない高品位なデジタルコンテンツとノウハウを、新たな媒体に展開しない手はなく、結果的にクライアントへの付加価値や、自然環境への取り組みなどへとつながっていくことは想像に難くない。
電子書籍・電子カタログ市場で取り扱われているデジタルツールには、大きく分けて2つの分野がある。それは、そのコンテンツ自身が「売りもの」なのか、「売りたいものの宣伝」なのか?ということだ。一般的には、前者が「電子書籍」や「デジタルコミック」「デジタル写真集」などのことを指し、後者は「電子カタログ」や「デジタルチラシ」などのことを指すことが多い。
そのコンテンツ自身を「売りものにする」つまりそのコンテンツ自体が「商品」である場合についての話からしていこう。
ある印刷会社が、某アイドルタレント写真集の制作・印刷を請け負っているとしよう。従来の「紙」の世界では、クライアントや代理店から支給された写真ネガやテキスト原稿をDTPでデザイン・レイアウトし、校正・修正などを経て印刷され、出版・流通工程の後、店頭に並ぶというのが一般的だ。ではこの媒体を「デジタル写真集」として活用しようとした場合はどうか? その写真集が一般消費者の目に届くまでの時間(=コスト)が劇的に短縮されるのは間違いないであろう。
DTPで蓄えた高品位なデジタルコンテンツを活用し、デジタル写真集として変換さえできれば、印刷や流通工程を飛ばしてすぐさまネットの世界に公開できる。「紙媒体の2次利用」「クライアントへの付加価値」が実現でき、一見良さそうな気がする。しかしながら、そのコンテンツ自身が「商品」である以上、公開するにはさまざまな壁があり、その壁を埋めるべく技術やクライアントとの擦り合わせには少なからず労力を要する。印刷会社は、「コンテンツの宝庫」ではあるが、「コンテンツホルダー」ではないので、ひと口に「電子媒体でネット配信」と言っても、紙媒体と同じくそのタレントの肖像権や出版権の取り扱いに加え、デジタル著作権保護技術(DRM)や決済管理/消費者の個人情報管理など、クライアントとともにクリアにしなければならない重要課題がそこには存在している。「電子書籍」や「デジタルコミック」などにも同じことが言える。多かれ少なかれ、そのコンテンツに、何らかの「権利」が含まれている場合には細心の注意が必要である。
一方もう一つの「顔」、そのコンテンツが「売りたいものの宣伝」である場合はどうだろうか? 折込チラシの制作・印刷を手掛けている印刷会社があったとしよう。前述の場合と同じく、この折込チラシを、「デジタルチラシ」として活用しようとした場合である。もともとは折込チラシとして作られたものであるから、媒体自体が「商品」ではない。むしろタダで一人でも多くの消費者に目にしてもらいたいたぐいの媒体である。デジタルコミックであれば、「ちょい見せコミック」としての展開だ。目にする消費者が増えれば、そこに掲載されている商品が売れる可能性は高くなる。何か行けそうである。クライアントは、「何とかして一人でも多くの人たちに見てもらい、さらに効率的に購買につなげる方法は何かないのか?」などと頭を悩ませているに違いない。そこで登場するのが、「コンテンツの宝庫」印刷会社である! さらにこのタイミングで、当社のサービスである「デジタルブックコンバーターDeBiew(デビュー)」にも登場してもらおう。
DeBiewは、PDFをソースに手軽に電子カタログなどを作成できるASPサービスである。今回の事例で言うと、DTPで制作済みの印刷用チラシデータをPDF変換するだけで、初期投資なく、ネットにつながるパソコンとブラウザさえあれば、ワンタッチでクオリティーの高いデジタルチラシに変換が可能である。閲覧者から見ても、OSを問わず、Flashなどのプラグインも不要だ。Webサイトへの組み込みも特別なスキルは必要ない。
これで「一人でも多くの人たちに見てもらう」環境は整う(もちろんSEO対策など、サイトへのアクセスアップ努力は必要)。
さらにクライアントが頭を悩ます「効率的に購買につなげる方法」も実現可能だ。DeBiewは、「目次設定」や「ハイパーリンク設定」さらには「スキンデザインカスタマイズ」が可能なので、例えばECサイトを持っているクライアントであれば、売りたい商品にリンクを貼り、ECサイトの買い物かご直前まで誘導することができる。印刷だけでは実現できない範囲をカバーすることができるわけである。「スキンデザインカスタマイズ」を行うことにより、そのクライアント独自のデザインでデジタルチラシを見せることも可能だ。
DeBiewは、手軽なASPサービスでありながら、コンテンツダウンロード料金以外の、いわゆる手間の掛かるリンク貼り作業/目次作成/デザインカスタマイズなど、クライアントがまずやりたがらない付加機能については無償で提供しているので、クライアントへの付加価値プラスこのあたりの制作作業コストが確保できれば、十分ビジネスとして成り立つと考えている。この事例から分かるように、コンテンツ自体が売りものでなければ、消費者に公開するにあたりそれほど敷居は高くないので、チラシやカタログや会社案内などの商業印刷分野については、印刷会社としてのメリットを存分に発揮し、新たな市場にどんどん切り込んでいっていただきたい。
(『プリンターズサークル』2008年10月号より)