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交通標識や案内表示、リモコンなどに採用されているフォントは、文字自体のデザインを吟味するというよりも、どういう情報なのかが、さっと分かることが重要という発想から生まれている。
ユニバーサルデザインは、ロナルド・メイスが1990 年代に提唱した思想(概念)だが、背景として大量生産・大量消費社会がある。「安くて良い物」にほとんどの人が満足しているが、どうしても一人ひとりには合致しないものもある。
そういう大量生産の反省も出ていた時代にメイスが提唱したのが、CUD(センタード・オブ・ユニバーサルデザイン)である。ユニバーサルデザイン7 つの原則としてまとめたものが、「誰にでも公平に使いやすい」「さまざまに使える」「使い方が簡単で直感的に分かる」「情報が分かりやすい」「間違っても危険がない」「少しの負荷で使用できる」「大きさと空間が十分ある」という7 つである。
ユニバーサルデザインの思想をフォントデザインに応用したフォントをユニバーサルデザインフォントという。とりわけ携帯端末、パソコンなどの文字情報には日常的に接している。その時、文字自体のデザインを吟味するというよりも、どういう情報なのかが、さっと分かることが重要という発想から生まれている。
また最近は、「かな」の使用量や外来語が増加してきている。漢字は2 割、「かな」が8 割で、「かな」は非常に重要になってきた。外来語はカタカナで表示するので、必然的にカタカナも多くなる。数字使用の増加もある。そして、それらが表示されるものは伝統的な紙ではなく、新しい画面というディスプレーなので、それに合致する文字が求められるようになり、新しい書体(ユニバーサルデザインフォント)の開発が望まれるようになったのである。
ディスプレーで表示させる場合、従来のフォントの問題点はまず濁点、半濁点が区別しにくいことが挙げられる。また、エレメントが込み入った部分がつぶれる。点や丸や濁点が、日本の伝統的なフォントデザインで小さくなっているなどが挙げられる。これは旧仮名使いで「何々すべし」を「すへし」と書いていることに由来するのではないかと思われる。
ユニバーサルデザインフォントに求められるものを列記すると
製品(フォント)名でいうと「製品に見やすいフォントを」と言う考えで松下電器(Panasonic)とイワタで2006 年に共同開発された「イワタUD フォント」が最初の製品となる。特に最近では高速道路の標識をはじめ、公共機関の案内版にも視認性が良いものに変更が進められており、UD フォントが採用されている件数も増えて来ているようだ。
現在発売されている商品としては前述したイワタUD フォントの他に、モリサワUD 書体(パスポートに収録)、ヒラギノ版UD フォント(モリサワパスポートに収録)、タイプバンクのユニバーサルデザイン書体シリーズなどがある。ユニバーサルフォントが有効な事例はいろいろあるが、代表的な事例を挙げると
がある。
(『JAGAT info』より抜粋)