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※自動組版に対する現実のニーズは、単純に生産時間の短縮、コピーペーストによる誤りリスクの追放にとどまるものではない。
昨今の自動組版システムに求められるのは、単に印刷工程の短縮や効率化ではない。印刷発注者の真のニーズに応えることこそが求められている。印刷発注者が求める自動組版システムとは何か、株式会社オープンエンドの平田憲行氏に話を伺った。
■ブロック系組版レイアウトのソリューション
ブロック系の場合は、高額なお金をかけてデータベースを作る前に、ExcelとかCSVを使いこなせばいいという発想を持ってもらいたい。
名刺などやったことがない会社が、突然500人の名刺を作ってくれと言われた。
この会社は社内にExcelのマクロとかVBを書ける人がいたので、何ということはなかった。姓と名前の間が半角であった。3文字2文字、2文字1文字といった字割りが、半角スペースで全部決められていて、3と2のときはこう、1と1のときはこうと言うルールが決まっていた。それを、Excelのマクロで全部やってしまったので、InDesign上に流すだけであった。
また、複数のテンプレートが必要であった。InDesignはインテリジェンスなテンプレート機能がないので、テンプレートを3つくらい作り、「ある項目に値があればこのテンプレート」というルールをマクロで作ってしまった。テンプレートを自動切り替えしながら、あっという間に作って、部署毎に並べて校正に出すということができた。
商品カタログ、製品カタログの相談は、非常に多い。それからスペック等の表組がある。
商品カタログの場合、注文番号毎に複数商品を表組に展開するものがある。
直しが多いが、直すと元のデータが更新されないといけない、というのが前提である。データ戻しなどもう当たり前なので、次の段階は、手でレイアウトを変えて、元データが変わったとしても、InDesign側もレイアウトを崩さないでデータ変更が反映されないといけない。
入れ替えたときに、はみ出したら変形をかけるとか、そこで自動組版ルールを適用する。そのためレイアウト結果が確実となる。
さまざまな体裁のスペック表を、スペックマスターから自動組版したいという相談があった。製品のスペック表というのは、マスターデータがあれば自動的に作れる。これは8つくらいの製品が入っている。
この機能があるか、ないかとか、Windowsに対応している、Macに対応している、そういうことである。この製品はWindowsだけとか、そういうものが表になっている。
データベースを作るとお金がかかるから、マスターテーブルをExcelで作っておき、Excel中のExcelでこれが作れるかということである。組版ではない。Excel中のExcelで、Excelマスターから組版と同じようなExcelが作れるかということである。
ここまで来れば、自動組版ができてしまう。むしろ組版が難しいのではなくて、このスペック表をどう作るかというほうに力を入れて考えなくてはいけない。しかもお金をかけずに、ということである。
下版直前の料金表の自動差し替えは深刻な問題である。旅行のカタログ、パンフレットをたくさんやっている会社がある。ページ下に横幅いっぱいで料金表があると、必ず2日くらい前に直しが入ってくる。
誰の責任でもなく、発注者も必死で直前価格を反映したいと考えているので、そうなってしまう。徹夜作業で、間違いも多く、それを何とかしたいという課題がある。
発注者が確実にExcelデータを提供してくれるなら、こちらは何の文句もない。そういう提案をしようということである。
お客様側に赤字を入れてもらうのではなく、「このExcelを完成させてくれれば、絶対に間違いなく出せる」と持ちかけるべきである。
小売業などのチラシでは、価格、限定数量、在庫数量とかいう項目は直前にしか決定しない。レイアウトが終了しており、レイアウトを崩したくないので、ターゲットであるその項目だけを入れ替えたい。
情報誌ページデータからeBook用のデータを生成したいという話もある。これはページのどこに何を置くということがわかれば、できる。
要するに、eBookに持っていくときは画像をオーバーレイして、リンクが貼ってあれば良い。クリックしたら向こうへ飛ぶ。そのリンクを手でやりたくないので、ページアップした後のInDesignからどこに何があるかを拾えばいい。そこからデータベースとマッチングして、このお客様のホームページのアドレスを取得しなくてはいけないが、それは組版と関係ない。
組版するときに手で置かないで、何かをフィルターにして自動的に展開するようにすれば、どこに何があるかは予めわかっているので、こういう相談が来ても怖くない。
■表組および校了データと原稿データのシンクロ
ブロック系組版・商業印刷系自動組版の相談事の多くは、表組ソリューションを求め、また校了DTPデータと原稿データのシンクロを求めるものである。これは特に、商品・製品カタログ制作に顕著なニーズのようである。
ここでは本格的商品データベースを使わずに商品・製品カタログを自動組版する方法によって、どのようにしたら、表組とその直前修正対応、また校正赤字を元の入力データに戻すことができるかを考えていきたい。
これからは、データ戻しは当たり前だと思ってやってもらいたい。データを戻すのは簡単である。難しいのは、レイアウト変更した後に修正した元データを反映するかどうかである。中心課題はむしろそちらである。
全部終わったPSデータをテキストに書き出すとか、そんなものではいけない。直したらその場で書き戻すというリアルタイム性がないと、修正が繰り返される途中で問題が起こってくる。
もし表で困っていたらExcelを使うことに挑戦してもらいたい。相談してもらえば、信じられないくらい安くできる。今までの世の中が高すぎた。その代わり、Excelに習熟しなくてはいけない。できたらExcel表の組版を先にやる。本当に簡単なテンプレートでできるということが証明できた。
問題はもっと高度なExcel利用の相談が来たときである。たとえば、スペックのマスター表がある。対応OSや機能の有無などという分類で商品がたくさん並んでいるようなマトリックスのExcel表を作って、それをマスターテーブルにする。
こちらからお客様に提案すれば、そこからレイアウト状態のExcel表を自動生成したいなどという要望が出てくる。言わなければわからないが、こちらが提案すれば、そういう要望が出てくる。提案すれば仕事になる。そういう原稿をお客様に作っていただく。
■印刷発注者との新しいコミュニケーション
自動組版に対する現実のニーズは、単純に生産時間の短縮、コピーペーストによる誤りリスクの追放にとどまるものではない。印刷発注者との新しいコミュニケーションの実現や、入稿データと組版データの同期によるデータ再利用性の獲得までを求めている。
先に列挙した案件は、一昔前のように、ともかく速くやりたい、安くやりたいという話ではない。お客様に提案したいなど、相談を持ってくる人たちの姿勢が前向きである。
お客様側も、どうしてほしいということをかなり具体的に言ってきている。本当にチャンスが来ていると思う。同じような自動化をするのではなく、新しい切り口でお客様とコミュニケーションを作っていくチャンスである。
お客様は原稿作成支援とデータのマルチ利用を望んでいる。その前提として、印刷会社・制作会社に対して、ますます入稿データと組版データの同期の実現を要求するようになると思う。印刷会社・制作会社側には、このような要求に対応する潜在能力は十分にあるはずだと考えている。
(テキスト&グラフィックス研究会 会報No.285より抜粋)
【関連情報】 2月5日(金)10-12 D4セッション
「Web to Print と自動組版を活用したフリーペーパー制作」