JAGAT Japan Association of Graphic arts Technology


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新たな挑戦

掲載日: 2010年01月05日

[若手印刷人リレーエッセイ] わが社は何のためにあるのか、わが社の本当の目的が何かを考えた時、製造、流通の2要素が基本である。

厳しいご時勢とはいえ…

昨年、アメリカに端を発した経済不況により、この印刷業界も大変な激流の中にあることは、単価、数量の落ち込み、受注競争の激化など、身にしみることばかりかと思います。そのような中で、どのように活路を見いだしていくのか、頭の痛いことばかりではないでしょうか。

しかしながら、『ピンチはチャンス』『チャンスはピンチの顔をしてやってくる』などとも言われたりもします。企業の事業が、人々の暮らしが良くなっていくためにあるのであれば、間違いなく、どこかにチャンスはあるはずです。だからこそ、このような状況でも、企業は活力を維持向上し、継続的な発展を遂げるためにも、われわれの会社ではありますが、社会が企業として存在させてくれているという原則の下、マーケティングとイノベーションを推進していかなくてはならないと思います。それが、基本ではないでしょうか。

そのためにも、まず、「わが社は何を売っているのか」に答えることが経営であり、われわれが売ろうとしているものと社会が買おうとしているものがマッチしていることが前提でしょう。そして、新たな成長を目指すためには、ある程度のリスクにも、果敢に挑戦し、新しい事業分野を創造していくことが不可欠ではないでしょうか。

株式会社フジカ

フジカは、創業して、今期で40期目を迎えています。印刷ブローカーから始まり、印刷に関わるよろず屋として、そして、紙の流通として、またある時には、貿易雑貨のパッケージなどの製造などをさせていただくなど、いろいろなことを手掛けて今日に至っています。

その中での転機は、カラー印刷の広がりに伴い、4色印刷機を導入し、歴史も技術も人材もない状態で、全くの一からのスタートでフジカにおけるオフセット印刷の歴史が始まったことと言えるかもしれません。そして、それから、ほぼ25年以上が経ち、現在は、印刷がメインの会社となりました。オフセット印刷専門です。ここまで、続いてきたフジカではありますが、それでは、これからのフジカは何のためにあるのか、と考えると、今後も印刷を捨てることはありませんが、製造業として生まれ変わる時期に差し掛かっているのではないかと思うこともあります。

わが社は何のためにあるのか、わが社の本当の目的が何かを考えた時、やはり、製造、流通の2要素が基本です。その基本が満たされた上で、初めて生きてくる機能を、徹底的に磨いていくことが必要であると言えます。それは、安い、早い、安心感、ノウハウ、情報など、いろいろ考えられますが、その付随してくる機能が、今後、もっと大切になってくるはずです。

ある人から、中小企業が生き残るためには、同じ機能であれば、コスト半分、同じコストであれば、機能が倍なくてはならないと言われたことがあります。そこに、少しでも近づくには、どうすればよいのか。わが社の基本は、(1)要求された品質を満たした印刷をすること、(2)紙を必要な時に必要なだけ運ぶことです。その上で、速さと環境とを、追求していく必要があると今は考えるようになりました。

LED-UV

その一つの有効な手段として、LED-UV印刷も考えられるかもしれません。ご存じのとおりLED-UV印刷は、まだまだ、開発途上の新しい技術です。従来のオフセット、UV印刷と比較してメリットもあれば、デメリットもあると思います。そのメリットは、UV印刷と同じく、速乾性、特殊紙印刷への対応があるとともに、発熱量の低減、環境負荷の低減、ノンパウダーなど挙げられます。その反面、従来のUV印刷での、高付加価値と言われる印刷は、まだ、成功していません。現状、オフセット印刷と従来のUV印刷の中間に位置するものと認識するほうが正しいようです。

しかしながら、今回、フジカは、LED-UV印刷に取り組むことにしました。まだまだ新しい技術ですが、フジカが目指す基本的な機能と磨いていく機能を考え、少しチャレンジではありますが、思い切って導入することにしました。世の中は、少子高齢化、情報化、国際化が進む中、そして、環境問題がクローズアップされる中、これからも、印刷業界への要求は、多様化、複雑化していくと思います。

そして、きっと、世の中の求められる、役に立つことが、生まれてくるのではないだろうか、そんなことを考えながら、紙と印刷の可能性を、LED-UV印刷を通じて、追求していきたいと思います。オフセット印刷を始めて以来の新たな取り組みではありますが、事業の役割は、人々の暮らしが良くなっていくということと考えた時、フジカの新たな存在意義も少し見えてくるかもしれません。

[著者紹介] 加藤氏写真

加藤 義章(かとう・よしあき)。1968年8月31日生まれ、愛知県名古屋市出身、同志社大学卒。1991年大倉紙パルプ商事株式会社(現:新生紙パルプ商事株式会社)入社、1995年株式会社フジカ入社、2000年取締役に就任、現在に至る。趣味は、ゴルフ、旅行、読書(最近はまっているのが、半藤一利の昭和史物、宮城谷昌光の中国史物)。

株式会社フジカ
1970年創業、紙卸および印刷加工。印刷加工からスタートし、印刷会社の協力工場として、グループ4社にて、紙の販売、オフ輪から枚葉機、オンデマンド、そして、後加工まで対応、今期、LED-UV印刷機がラインナップに加わる。
本社:〒486-0923 愛知県春日井市下条町字南本781
TEL 0568-89-3661(代表)/ FAX 0568-89-3668

『JAGAT info』2009年11月号

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