JAGAT Japan Association of Graphic arts Technology


本記事は、アーカイブに保存されている過去の記事です。最新の情報は、公益社団法人日本印刷技術協会(JAGAT)サイトをご確認ください。

相手に合わせたメッセージでレスポンス率を向上させるバリアブル印刷

掲載日: 2012年08月05日

一括大量生産の印刷物に比較して相手により的確な情報を伝えることができるため、ダイレクトマーケティングや顧客サポートと相性がよいとされている。個別に可変させたQR コードを用いたDMなどにも利用される。【DTP エキスパートのための注目キーワード2:バリアブル印刷】

バリアブル(可変)印刷が注目される理由は、一括大量生産の印刷物に比較して、相手により的確な情報を伝えることができることである。はじめに訴求対象の絞込みを前処理の段階で行い、相手に合わせた個人宛の手紙のようなメッセージを送付することで、相手からのレスポンス率を高めることができるという考えで印刷物を作成する。つまりバリアブル印刷は、データベースを元にしたダイレクトマーケティングや顧客サポートと相性がよいとされており、とくにOne to Oneマーケティングによる販売促進策として注目を集めた。そのためにはバリアブル出力もフレキシブルに対応できるように準備しなければならない。簡単に言えば、パソコンでの差し込み印刷のようにソフトウェアで可変情報に対応し、規模の異なる様々な出力機を使えるようにするという考えである。

バリアブル印刷用に開発されたXMLベースの標準言語、PPML

従来は出力機メーカーごとに独自のバリアブル出力のフォーマットを決めていたが、PPML(Personalized Print Markup Language)というXML ベースの標準言語が、PODi(Print On Demand Initiative)という団体を中心にして普及されつつある。PODiは、1996年にアドビシステムズ、アップル、サイテックスの3社が中心となり発足、オンデマンドプリント関連の主だったメーカーで構成されている。

PPMLは、可変データのRIP への渡し方を定義しようというもので、データを固定部分と可変部分に分離し、それぞれ1 回ずつリッピングしたデータをRIP に保存して再利用しながら出力するので、差し替えのたびにRIP 処理をしなくとも一度のRIP 処理で何度でも使うことができる。つまり、RIP に負荷をかけないという仕組みである。PPML はXML で記述し、PostScript やPDF をサポートしており、従来のDTPとWebの両方で使えるように考えられている。プリントに必要なマスク処理、画像の一部の切り出し、拡大・縮小、回転などの機能をXML で指定できる。

バリアブル印刷用のデータを作成するアプリケーションについては、最近の傾向として専用ソフトではなく、DTP 系アプリケーションのプラグインで構成されるものが多い。例えば、Personal Effect は、紙メディアの場合はAdobe InDesign のプラグインになっており、ホームページの場合はGolive、Dreamweaverのプラグインになっている。このため日本語組版機能が強力で、プロのクリエイティブなデザインをそのままパーソナライゼーションできる。

請求書等にカスタマイズ広告をプラス、トランスプロモ

「Transaction Mail Promotion:TransPromo(トランスプロモ)」とは、月次の請求者や利用明細書のドキュメントに取引情報とプロモーション広告を組み合わせて印刷し郵送する手法である。請求書や利用明細書は、金融情報が含まれた重要な情報で、受け手が毎月の到着を予期しており、開封率が通常のDM と比較すると格段に高い。そのため、トランスプロモは最もコスト的に有効なコミュニケーションチャンネルの一つである。そのプロモーション広告も今までの取引情報をベースにして、その顧客の購買動向や嗜好にあった広告にカスタマイズすることもできる。紙の請求書自体が、減少する傾向の中で付加価値を持たせる手段として、こうしたバリアブル印刷での応用も考えていかなければならない。

紙+他メディアでの展開

ダイレクトメールの効果を向上させる一つの組み合わせに、携帯電話と連動したQR コードを利用した可変DM がある。通常、携帯電話で読み取るQR コードは単純にアクセスするサイトのURL 情報を提供している。バリアブル印刷で個別に可変させたQR コードを用いることで日時やカウント数、携帯キャリア、機種などサーバー上で取得が可能となる。また、GIS「地理情報システム( Geographic Information System)」と連動させることにより、地図情報とその付加情報によりエリアごとの分析が可能となり、よりパーソナライズされたサービスの提供ができる。

(『JAGAT info』2012年5月号より抜粋)

(C) Japan Association of Graphic Arts Technology