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Webの今後の成長は、賢くなること

掲載日: 2010年01月14日

裏に蓄積されたデータやロジックがあると、相当「気の利いた」サービスが可能であろう。PAGE2010特別連載(5)

デジタル放送に象徴されるように、今日では音楽も映像もデジタルで制作から一般家庭への供給までがされるようになった。しかし過去を振り返ると、情報革命とか高度情報化といってINSが叫ばれていた頃でさえも、デジタルの1と0の組み合わせで音楽や映像の配信をするようになるとは、人々は考えていなかった。アナログはアナログのままでいいと思っていたのである。確かに歌を歌う人と聞く人にとってはアナログtoアナログなのだが、制作・編集・供給という中間のビジネスにとってはツールがデジタル化した方がよいのである。

言い換えるとローコストで品質のよいサービスを提供し、利用者にとっても便宜のよい方法としてデジタルやネットという環境が発達してきたのであって、コンテンツからするとアナログとかデジタルの区別はないといえる。ビジネスとしては容易にダウンロードできる売り方の方がたくさん売れる時代に向かっているというものの、デジタルやネットを使えば誰でもビジネスが可能になるわけではない。デジタルやネットで仕事をする仕掛けをするところが儲かるだけである。つまりeBusinessがビジネスとして成長するのである。この能力を身に着けることが重要である。それはどのようなところか?

かつて音楽や映像がデジタルになることが一般人には考えられなかったように、これからコンピュータが知的な単純労働をするようになることは、今日まだあまり考えられていない。Webでは検索エンジンの進歩がWebの利用度を向上させてきたし、YouTubeのように映像にいくらかのタグをつけただけでもそれなりに検索して使え、横に表示される関連画像を見出すと止まらないようになっている。こういった情報活用の技術がこれからどんどん進んでいくと、コンピュータは「ちょっとした物知り」くらいにはなっていくだろう。つまりWebやケータイのサービスはもっと気の利いたもの向かいつつあるといえる。

現状ではあまり気の利いたものを見かけることは少ないかも知れない。よく検索をしていて、いかにもロボットが掻き集めたものを無造作に並べているだけのページがあってがっかりする。一般に知られているのはGoogleNewsが最も出来がよい部類かもしれないが、自動的に情報を収集・整理するツールはいろいろあり、企業内の利用としてはかつてセマンティックWebの開発の流れでいろいろなものが作られている。以前PAGEでエンタープライズサーチ - Vivisimo Velocity(ビビシモ・ベロシティ)が紹介されたこともあった。まだ日本には少ないのが残念である。

セマンティックWeb自体はW3Cのティム・バーナーズ=リーが提唱したもので、いろいろな文書の中を意味を辿りながら閲覧するための枠組み・仕組み・ツール群であり、遠大な計画である。しかし何年か前にWeb2.0が提唱された時に似たような考え方がいろいろ出てきたので、このW3Cの仕組みにこだわるのではなく、既存の技術や別の技術も使いながら「セマンティックな」Webを目指すような考え方が定着してきた。

そこからYouTubeやSNS・情報共有サイトなどで使われるようになったタギングやそれを集計するアプリ、Webサービスなどが発達した。現在では「セマンティックな」技術は多様化し、しかもAPI化が進んで個人でもアプリを作れるような段階にきている。そのことは(全部がセマンティックなわけではないが)日本で毎年開催されているMASHUP AWARDからもみてとれる。これは個人のプログラマでも参加でき、最優秀賞百万円ということで、2009年のMA5には346作品が集まっている。

MA5に応募するプログラムはワンポイント的なものではあるが、簡単なMashUpであっても、その裏に蓄積されたデータやスマートなロジックがあると、相当「気の利いた」サービスが可能であろうことは想像に難くない。かつてのAI・人口知能・エキスパートシステムが絵に描いた餅のようになってしまったのとは対照的に、使いながら試行錯誤で進化させられるものであるのが特徴である。こういった技術は今はゲームに近いようなコンシューマ向けのものだが、次第に社内の情報をまとめて見ることができるもの(グループウェアの発展系)とか、経営分析などのグレードの高い情報処理になっていくはずだ。

関連情報:2月3日(水)16-18 B2 Webはどこまで賢くなれるか?

 

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