大変革の時期だから、受け入れられるサービス
掲載日: 2010年02月04日
みんなが同じような仕事を重複して行う時代は終わった。PAGE2010報告(1)
PAGE2010コンファレンスの最初のセッションは、今日の物流の変化・ビジネスの変化に対応したサービスを探る、「
ビジネスが変わる 販促が変わる」であった。PAGEの期間中にコンファレンスで29本、セミナーや関連ミーティングを含めると70本ほど、さまざまなテーマの会合があるが、最初のセッションはそれらもろもろの事象を総まとめにすると、どんな課題なのかを取り上げている。つまり日本のビジネスの状況はある意味煮詰まってしまって、従来の取り組みでは現状を打破できないところまで来ていて、それに対して何らかの突破口を用意してきた会社の話し合いをしようとした。
最初に
サイバーリンクスMDBセンタ事業室の杉谷宗紀氏から、酒類・食品の流通業界の商品マスター・画像マスターの情報共有は、メーカーと卸のBtoBの世界で営業マンの商談用としてWindows95の頃から始まり、10年という年月をかけて画像の業界標準規格を決め5000メーカー30万件の食品画像作成・データベースサービスを確立し印刷チラシなどにも使われるようになったいきさつや、それが今日では小売業がネットスーパーを自分で運用する際のWebやケータイコンテンツにも活用されるようになったことが報告された。以前は卸や印刷会社が同じ商品を繰り返し撮影していて、そのためにメーカーもサンプルを何度も発送していたのがなくなった。
サイバーリンクスはもともと小売業向けのPOSシステムやEDIのサービスを行っている会社であるが、データベースよりも前のEDIの時から業界で共同利用することで安価なサービスにすることをキーワードにしていて、それを実現できるようにビジネスモデルを考えてきた。画像データベース事業だけでみると黒字化には15年かかっていて、日本最大の食品画像データベースができた理由は、同業者が皆いなくなったからと言う。これは会社の方針が事業を通じて社会に役立つ、というものであったために続けてこれたもので、共同利用の考え方である「みんなが必要なものは、ひとつあればよい(One Input Multi Use)」は、これらの事業戦略にもうかがえた。
新進商会はパソコンのフルフィルメントで有名な会社で、フロッピーやCDのダビングからIT系の業務が始まり、Windows95の時代になって国内各PCメーカーへのライセンス管理の業務とその証紙のようなラベルの発行などをしている。今はWindowsがVistaから7にアップグレードに関してはライセンス管理、データ複製、パッケージング、物流だけでなく、申し込みを受け付けるECサイトから決済、コールセンターまで含めて、日本向け国内外のPCメーカーの9社のアップグレードの事務局一切を引き受けた。さらに日本市場だけでなくアジアパシフィックのエンドユーザ対応を英語とアジア各国語で行うことも始めていることを菅野修氏が話した。
これらはPCメーカーからするとサプライチェーンの一部の完全なアウトソーシング・BPOで、メーカーが異なっても基本的に同じWindowsを扱うものだから、新進商会が集約して扱うことにはサイバーリンクス社の業界共同利用にも似たメリットがある。同じようなことで、パソコンがトラブッた時のWindowsのリカバリーディスクの提供サービスも新進商会が独自のビジネスモデルを作ってBPOのサービスをしている。この種のディスクは数千種類あり、CDなどでは在庫管理は無駄なのでオンデマンドCD-R/DVD-Rに焼いて提供できる自動システムを作って、それを各社が使えるようにしている。
PCメーカーがBPOせざるを得ないのは厳しい事業上の理由があるからで、担当者も少なくなり、しかも生産は9割が中国になって、それにもかかわらず国内の顧客のニーズは満たさなければならないからである。商品の生産が中国になるとフルフィルメントも中国で一貫して行うのがよいが、中国の印刷会社に依頼すると半分以上が不良品(日本のユーザが見た場合)になるとか出荷の遅れにつながるため、新進商会は5年前に上海に新商印刷という工場を作って、日本品質でパッケージングから物流までの一貫したサービスができるようにした。中国の印刷会社に比べると高めだが、納期なども含めてトータルに見ると競争力をもつ印刷会社になっていることを岩田芳季氏が報告した。
実はサイバーリンクスも小売業が大幅に減益になっている今日、小売業も伸びが予想されるネットスーパーのように自家メディアを介した直販に力を入れざるを得ないので、もっと消費者を意識した販促支援が大きなテーマになっている。商品情報といっても作り手のものだけではなく、最終的には消費者に益するように業界全体の取り組みとして、消費者の購買の判断に関係するCGMも集約して共同利用型のサービスにもっていくことが課題であるという。
以上の2社の例は、単に時代の先を行く取り組みというような、あるビジネスの形式を顧客に当てはめようとするものではなく、本当に顧客の業界が抱える問題をともに考えて、そこに自社の強みを活かして何らかのソリューションを提供しようというもので、これを粘ってWindows95のころから積み重ねてきたからこそ、今の大変革の時期にあって歓迎され仕事が集中するようになったといえる。顧客の側でも受注する側でも、みんなが同じような仕事を重複して行う時代は終わったといえるだろう。