マスマーケティングとソーシャルメディアの違い 記事No.#1632
掲載日: 2010年02月15日
PAGE2010の最終日であった2月5日(金)、UCCがTwitter上で行ったコーヒーにちなんだエッセイや画像などの作品を募集する「コーヒーストーリー大賞」「コーヒーアート大賞」キャンペーンが行われた。
このキャンペーンは、「コーヒー」「懸賞」などのキーワードが入ったツイート(つぶやき)を機械により判定し、自動的にbotから「@username」に向けて「コーヒーにまつわるエッセイとアートを募集中!エッセイで賞金200万円!アートで賞金100万円!締切間近!!」というメッセージが送られるというものであったが、それを見たユーザーにはスパムに映り、Twitter上でたくさんのつぶやきが投稿され騒ぎとなりすぐに炎上し、開始後2時間弱でキャンペーンが中止になったという出来事があった。この話題については、金曜日中にTwitterやブログで話題になり、キャンペーン主催側から謝罪リリースが発信され、メディアで記事かかれるというソーシャルメディア隆盛の時代にふさわしい幕引きになった。
この問題の発端は、マスマーケティングの手法をそのままソーシャルメディアで使用したところにある。ソーシャルメディアは、ユーザーが情報を発信し、発信された情報に対して人々の相互作用が促進される仕組みがあるWebサイトのことを指している。ネットはバーチャルな世界であるというイメージがあったが、UCCの事例からも分かるように、生活者にとってはネットのほうがよりリアルであり、よりデリケートなコミュニケーションが必要となる時代になってきているようだ。
そもそも、マスマーケティングとはどういうものなのだろう。例えばビールのCMであれば、起用されたタレントがいかにもおいしそうにビールを飲み、印象に残るコメントを言うというものがある。言うまでも無くここには多少の演技や、やらせの要素が含まれているだろう。それに付随し、キャンペーンなどでも商品の良さなどを利用者に訴え、盛り上げていく操作も行っているかもしれない。利用者もそれを受け入れ、興味のある商品を購入してきた。作り手も受け手もイメージの増幅や誇張、ある種の虚構性のようなものを暗黙のうちに理解していたため、多少の大げささなども認められ、それを不思議に思うようなことも無かった。
しかし逆に、ネットでは互いに「共感を呼びたい」という意識が働いており、ユーザーが情報を発信している昨今のソーシャルメディアなどでは、その動きが顕著である。ネット上でユーザー同士の意見がぶつかるようなことがあっても、味方の意見に共感しつつ、相手陣営に反対意見を述べると言う「共感」を軸にしたコミュニケーションがなされている。それが、ソーシャルメディアの特色である。例えばTwitterで有名になった話題で、グリコの「ドロリッチ」を飲んだ人が「ドロリッチなう」とツイートすると、サンキューメッセージが届くというものがあったが、これは「ドロリッチ」についてツイートを行うと言うことは、ドロリッチという商品に好感を抱き、共感してくれているのだろうという推察の元に感謝を表すサンキューメッセージを送信したからこそ、ユーザーから受け入れられ成功したのだろう。マスメディアにおけるコミュニケーションでは実現し得なかった、ユーザー1人1人との関係構築が可能となったのだ。
マスメディアには、イメージの増幅や誇張、ある種の虚構性というようなものがあり、一定の距離感の上にコミュニケーションがなされていた。しかし、ソーシャルメディアの登場によりその関係性は透明感のあるものとなり、ある意味リアリティの高いメディアへとなりつつある。今後、ソーシャルメディアを利用したキャンペーンなどの試みはますます増えていくだろう。その時に必要なのは、使用するツールの特性や特色を見極め、そのツールに見合った使い方をするということなのである。