融合に向かう視覚表現の世界
掲載日: 2010年03月06日
コンピュータ化したことで画像・映像のジャンルの垣根を越えたクリエーションが可能に。
視覚表現の世界は、イラスト、写真、印刷、映画、アニメ、TV・ビデオ、CAD/CGなどなど別個の世界として発展してきたが、それぞれが電子化それからデジタル化を経ることで相互に関係することが増えた。しかし視覚表現の肝になる部分は従来から築いてきたノウハウがあるので異なる視覚メディアを融合して既存メディアに勝るようにするのは至難の業であった。だから今までの視覚メディアの融合は実験的なものや、アミューズメント用の短いもの、限定されたものが多かった。
最近になってCGの立体映画が街の映画館でも見られるようになって話題になった。あらゆるメディアの制作がデジタル化したので、技術的な意味ではCGの技術によってさまざまな画像・映像のノウハウをカバーできるようになった。しかしそう言ってしまうとCGが万能のように思えるかもしれないが、CGの中に既存の視覚表現の肝を持ち込めるようになったということであって、CGさえ知っていればどこでも通用する時代というわけではない。
映画の世界でCGが進んだのは、カメラマンがどのようにカメラを操作しているのかというところもCG化していったように、視覚表現の肝をアルゴリズム化・ソフト化ができたからである。昔なら演技をしている人のそばに鉄のレールを敷いてカメラをスムースに動かしていたようなことを、CGでは撮影現場を鳥瞰するような画像を出して、そこにカメラのレールをバーチャルに設定して、そこでどのようにカメラ操作をすればどんな映像が出来上がるかを座標変換でシミュレートして見ることができると、映画監督としては自由自在に映像をコントロールできるようになる。
こういった周辺のプログラムが充実してきたので、従来の映画から見ても違和感のないCGの映像作りがされるようになったともいえるし、また既存の映像作りのノウハウをプログラムにする競争というのも起こる。さらに音と動きを合わせるとか、音と色をあわせるなどいろいろな表現をコンピュータにさせることが始まる。コンテンツを作る側にするとコンピュータ化によって新たな表現ツールが増えてくることになる。
実はCGによる立体映像もそのような流れの中にあると考えればよい。立体映画は長い歴史があって、我慢して見なければならないとか、方式による一長一短が故に、議論ばかりされていた。立体映像にするかしないかは制作者側からすると大きな賭けであったろうが、CG映画ではどちらも対応できる。さらにストーリーの中で効果的に立体らしくすることも、立体化で無理が生じるシーンの不具合を隠すことも、CGで努力する範囲に入ってきたので、自然に立体映像が増えていくであろう。
当然ながら動画だけでなく、静止画でもベクターグラフィックスと自然画をうまくあわせる技術が増えているし、それは画像加工サービスではなく、最初のクリエイトの段階で行われるようになっていくであろう。
テキスト&グラフィックス研究会 通巻290号