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リアルな世界に仮想コンテンツを付加して表示できるAR技術は、マーカーを印刷するという点で印刷とも親和性が高い。
2月11日付で産経新聞に折り込まれた会員紙『ウェーブ産経会報』には、QRコードのような形状をした白黒の模様が印刷されている。購読者はWebカメラを使う場合は専用のビューアサイトを開いて、またSmartphoneを使う場合は、専用アプリをダウンロードした後、マークをWebカメラで撮影することで、動画コンテンツや特定のWebページを閲覧することができる。(→参考:ウェーブ産経会報の説明ページ)
これは、「AR(拡張現実)」と呼ばれるもので、実写映像内にCGなど仮想の情報を付け加える技術を指す。おおまかに分けてGPSの位置情報を利用して表示するタイプと、印刷された専用画像を読み取るタイプがある。
後者の基本的な仕組みは、「マーカー」と呼ばれる画像パターンをWebカメラやiPhone、Androidなどの端末で撮影することによって、CGや動画などのコンテンツを表示する。「コードを撮影→コンテンツ表示」という仕組み自体はQRコードと似ているが、カメラをかざすだけで表示できることや(※ただしiPhoneは写真を撮る必要がある)、動画起動が早いなどの利点を持っている。今回のウェーブ産経会報を手がけた方正は、もともと出版・印刷や新聞に縁が深く、印刷を基盤としたAR技術にも積極的に取り組んでいくという。
方正の堅田氏によると、海外では、ARはプロモーションや広告用途以外でも積極的に利用されているという。例えば、スウェーデンのIKEA(家具メーカー)では、パンフレットにARのマーカーを印刷して家具のサイズや色をユーザーに確認してもらうのに役立てている。ARを用いることで、ソファやデスクが自宅に置かれたイメージを体感できるため、「このサイズでは大きすぎる」、「この色では部屋のカーテンと合わない」などを確認できる。(ちなみに大きいマーカーを撮影することで大きいサイズも表示できるのだとか。)
またアメリカのTOBI(ファッションサイト)では、ARのマーカーをかざすことであたかも自分がカタログの洋服を着ているかのような体験ができる。
ARはまだまだ馴染みが薄い。また、マーカーの規格がメーカーごとに異なっているため、各社でそれぞれ読取り用のアプリを配布する必要がある(つまり方正のアプリが入った端末で他社のマーカーを撮影しても何も表示されない)などの問題も持っている。
しかしWebとリアルを結ぶツールとして多くの分野で期待が持たれている。方正では、不動産の間取り図にマーカーを貼り付けて各部屋の写真や動画を表示したり、マーカーとGPS機能を組合わせ、店舗と自宅で表示内容を変えることでユーザーの来店を促進するコンテンツも提案している。
最後に、堅田氏にAR普及の課題について伺ったところ、「端末の普及、ユーザーに面白いと思ってもらえるコンテンツ」を挙げた。また技術を活かす企画力・アイディアの必要性も実感しているという。
(クロスメディア研究会)