本記事は、アーカイブに保存されている過去の記事です。最新の情報は、公益社団法人日本印刷技術協会(JAGAT)サイトをご確認ください。
※PAGE2010コンファレンスでは「フリーペーパー制作におけるWeb to Print活用」を取り上げた。PAGE2010報告(8)
オープンエンド代表の平田憲行氏は、Web to Printの全体像を提示しながら、株式会社ぱどのフリーペーパー制作システムのワークフローについて解説した。
■Web to Printとは
Web to Printとは、大きく分けてWeb入稿システムと組版システム、Webの受発注システム等から構成される。Web to Printとサーバ組版が連動する方式もあるし、組版しないシステムもある。
情報誌とかフリーペーパーの内、小組ごとにお客様があるものは、小組ごとの校正を出さなればいけない。それが単票校正紙であり、サーバで生成してお客様に渡す。
中古車情報誌はページで売るスタイルなので、これには当てはまらない。
校了になった小組は、コマ割り、面付けをして、最終の印刷データにしなければいけない。最終的にWeb to Printで作ったページだけでなく、持ち込まれた広告なども挿入して、印刷会社にデータを渡す。
■ぱどWeb to Printシステムの実際
ぱどの紙面は小組(フォーマット広告)で構成されており、その情報入力はブラウザで行う。通常は、先行掲載しているWebの情報をインポートする。他のシステムで使っている顧客情報もインポートする。
小組をデザインするには、まずテンプレートを選択する。可変デザインエリアを持つことができ、クーポンを複数掲載したり、店舗情報やメニューを掲載するなど選択することができる。結果的にデザインがリッチとなるし、お客様の細かい要求にも応えられる。
自動組版にはForm Magicサーバを使用している。Form Magicサーバには、端末の台数を増やせる仕組みがある。混み合うと自動的に組版エンジンを増やしてくれる。
そしてコマ割りをおこなう。ぱどの場合、複数ページを画面に出すという要望があり、全体をできるだけ大きい範囲を見渡しながら、配列しやすくしてある。配列の変更も容易にできる。
実際の運用は、営業担当者、各拠点の担当者、コマ割りも各拠点の担当者、最後に印刷会社がおこなっている。組版のテンプレートは開発側ではなく、ユーザー側で作る方式である。そのため、媒体を増やすことが容易である。最初は1媒体だったが、数ヵ月かで3媒体になっている。
ぱどシステムのもう1つの特徴は、印刷物と並行してeBookを制作していることである。eBookでは、クリックすると商品やお客様のURLに飛んでいく仕組みがある。そのため、コマ割りした時点の情報を元にeBookのリンクを自動発生する仕組みにした。
株式会社ぱどのシステム部長、小林一成氏は「ぱど」の事業と「Web to Print+自動組版」システムについて紹介した。
■ぱどの事業概要
ぱどは、フリーペーパー発行を中心としてきたが、既にフリーペーパーだけの時代ではなくなり、Webサイトも作っているし、これからは集客コンサルティング、地域活性化事業などに軸足を置いていく。
ぱどの大元の事業は家庭版フリーペーパーであり、これによって会社が大きく発展した。
全国で約180エリア、1週間なので月4回、発行部数は1,000万部である。家庭のポストに届けるため、約13,000人の配布員がいる。毎週5,000店程度の店舗がお客様であり、情報が集まる仕組みである。
2002年には約1,100万部ほどになり、その後、1,200万部レベルまで上がったが、今は約1,000万部になっている。
その他には、オフィス配布の「ラーラ」があり、OL向けである。ラック置きの媒体では、横浜の「ハマカラ」、大宮地区の「バズクリップ」、静岡の「ウィーラ」など地域版もある。
「ご近所ドクターブック」という各地域のお医者さんを特集したものも、年刊で発行している。
また、これらは誌面をWeb上で確認できるeBookの形式にしている。
Webでは、「ぱどナビ」という地域別の総合サイトがあり、その中でグルメ部門を扱う「ぐるめぱど」、ジャンル別の「きれいぱど」と「ビー・ユー」がある。
携帯では、「ぱどナビ」のモバイル版があって、それと連動する会員組織の「ぱど商売名人」というものがある。
■既存の制作システムの問題点と新システム
ぱど本体(紙媒体)の制作システムは、初期のDTPシステム(MacDTPが普及する以前)から、MacのDTP、WindowsのDTPへと移行してきた。イメージセッターのフィルム出力を社内で内製化していた時期もあるが、現在は印刷会社のCTPに移行している。
横浜(本社)では、紙媒体の制作部門とWebの制作部門に部署が分かれている。
当初、Webは紙媒体の制作システムの延長として取り組んでいたが、Webが進化して制作システムも別々の状態になってきた。そうすると、営業マンはそれぞれのデータベースにデータを入れるような非効率な状況になっていた。
本体以外の地域のフランチャイズでは、もっと大きな悩みを抱えていた。
店舗情報の制作工程は同じだが、求人情報については印刷会社のシステムを使って求人媒体を制作していた。
首都圏、関西、仙台等各地域ごとに情報誌、雑誌、チラシなど発行形式が異なる。原稿の流れや取引データも連動しないという状態になっていた。
今回それを改善するにあたって、まずWeb商材を基準にすることにした。
Web商材を中心としたシステムを構築し、フランチャイズが紙媒体を発行する際には、Web商材で使ったデータを紙媒体に展開する。
「ぱどナビ」というWebサイトの店情報は、裏に管理画面を持っている。その管理画面は、クライアントがいじれるものになっている。
つまり、コンテンツをクライアントと営業が共有して管理する状態になっており、そのコンテンツをモバイルに展開したり、校正紙や、フォーマット制作システムへと展開する流れにした。
フォーマット制作の自動組版をASPとして提供し、フランチャイズのコストを減らすことも実現した。
「ぱどWeb Auto Publisher」という紙媒体の制作システムは、「ぱどナビ」の掲載情報や店舗情報から必要なデータをピックアップして、クーポンフォーマット、ぐるめフォーマット、キレイフォーマット等のフォーマット広告の自動組版をおこなうようになっている。
Webコンテンツ管理とフォーマット制作システム、自動組版システムの連携は、ある程度実現することができた。
今後は、取引データの連携をどのようにWeb to Printの流れに組み込むか、模索していく。
Web to Printとは、単にWeb入稿やオンライン校正を行うだけでなく、Webサーバーを介在した媒体制作システムとなる場合もある。
「ぱど」の場合は、さらにWebサイトの運営・管理と印刷物制作を連携することに成功した例である。
情報誌として、Webサイトの運営と印刷物発行を切り離して考えることができなくなったという事実と、制作方法もWebと印刷物を連動することが当然となっていることを痛感させられた。