新聞に頼らない折込広告・チラシの模索 記事No.#1637
掲載日: 2010年03月23日
新聞と折込広告は一蓮托生と考えるのが一般的だ。ところが、新聞部数が減少しているのに、折込広告が増えているという不思議な現象が起きているという。
米ロサンゼルス・タイムズの折込広告を扱う子会社カリフォルニア・コミュニティーニューズ社を訪れた朝日オリコミ戦略本部長補佐の鍋島裕俊氏は驚いた。そこには、現地を訪れなければ知りえなかった事実があったと言う。
アメリカの新聞業界も厳しい状況にあり、ここ20年で発行総数は15%も減り、インターネットによるオンライン事業へ移る新聞社も増えた。しかし、リーマン・ショック以降に無料公開したネット新聞への広告も激減し、2009年前期で新聞の広告収入は約30%も減少したのだという。厳しさは日本の新聞業界も一緒だが、個別宅配制度を持たないアメリカの新聞社の経営悪化はひどい。
新聞のビジネスモデルに100%依存した折込では、当然部数減によって広告の到達度は低くなってしまう。そこで同社では、新聞購読以外の世帯にも国勢調査によるデータを活用して郵便で届けている。クーポン好きのアメリカでは新聞折込のクーポンは目玉で、米小売業の売上げベスト50位の企業のほとんどが折込広告を実施している。そのような背景もあって新聞とは別のモデルを持って広告を伸ばしている。
日本でも折込広告に注目をして、新聞折込とは違ったビジネスモデルを試みているのがリクルート社のタウンマーケットである。東京都大田区・品川区・杉並区・世田谷区・中野区・町田市・目黒区および神奈川県川崎市・相模原市・横浜市での限定サービスとして展開している、折込チラシの無料宅配サービスであり、会員登録すれば週一回金曜日に届けてくれる。地域の生活情報とリクルートが独自に制作するタウンマーケットTVという週刊テレビ情報紙も付いてくる。会員登録制であることが大きなポイントであり、住所、氏名だけでなくメールアドレスも必須登録させ、希望によってプレミアムニュースの配信も行う。
広告主へのアピールポイントとしては新聞の未購読世帯へのリーチということであるが、登録会員のプロフィールを見ると、年齢別では約50%が30歳代、次に40代で新聞未購読の多い20代は意外に少なく約15%となっている。世帯数では2人が28.5%、3人が25.5%、4人が21.5%でほぼ近い割合である。1人は18.9%とこれも意外に少ない。職業別では、会社員が52.0%、専業主婦が23.7%。独身の若者といった新聞未購読者イメージとはちょっと違った結果になっている。既婚世帯で新聞購読層である割合も高そうである。そうだとすれば、比較的小さい子どものいる若い世帯にとって地域情報の価値が高いのかもしれない。
宅配スケジュールは、週の月曜日17:00が申し込み締め切りとなっており、広告・チラシの納品締め切りが、水曜日12:00、金曜日に配達となっている。ギリギリまで価格検討などがあるスーパーのチラシなどはなく、今のところ価格情報より、店舗情報、イベント情報などの方が向てるようだ。また、封入サイズは仕上がB3以上は折られた状態での納品で、綴じは8Pまでだという。糊綴じは可、針金綴じは不可で、折りはペラ、4P折り、8P折りという基準がある。広告・チラシの持ち込みは広告主であるが、納品期日から印刷会社の直納となる。
タウンマーケットの企画者によると、日々持ち込まれる広告折込の印刷を手掛ける印刷会社と代理パートナーを組むことが、タウンマーケットの販促につながり、納品までをスムーズに行えると考えているということだ。印刷会社にとっても「印刷・納品」止まりではなく、ワンストップサービスと考えれば、配布先との提携はプラスであろう。
日米の環境の違いはあれ、従来の新聞折込ビジネスが崩壊する中、新しい試行錯誤が始っている。読者の心を掴めるかどうかは、実践あるのみである。