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顧客目線で、顧客がコアコンピタンスに注力できるワンストップサービスを提供している。
PAGE2010 基調講演「ビジネスが変わる 販促が変わる」では、フルフィルメント・データ複製や各種資材調達、パッケージングサービス・ライセンス管理を組合わせたサプライチェーンビジネスを展開している新進商会の菅野修氏と岩田芳季氏にお話を伺った。
新進商会は1940年に製図用品や文房具を扱う商社として創業し、1980年代から国内PCメーカーとの取引がきっかけでデータプログラムの複製サービス事業に乗り出し、IT系企業を下支えする企業に変身した。1995年にWindows95が発売され、マイクロソフトのAR(Authorized Replicator)権を取得した。AR権とは、正規のマイクロソフト製品かどうかを識別するCOAラベルによってライセンス管理する権利で、COAラベルの発行枚数ではおそらく世界一だろう。
新進商会のフルフィルメント活用事例として、Windows7アップグレードキャンペーンがある。国内外PCメーカー9社が参画し、アップグレード版を低価格、もしくは無料で対象PC購入者に提供するもので、キャンペーン期間は平均7カ月間、当初予想オーダー数20万件(実際は約30万件)、サービスエリアは日本とアジアパシフィック地域、決済はクレジットカード・代金引換・銀行振込(海外はクレジットカードのみ)とした。
新進商会はアップグレード事務局を請け負い、エンドユーザーがWebを通じて申し込むと、事務局のオーダーマネジメントシステムにデータが取り込まれて、データ複製、資材調達、組み立て、梱包・発送する。アップグレード事務局では物流だけでなく、Webサイトの構築、課金・決済やコールセンターも担当している。オーダーマネジメントシステムから各種レポートをメーカーに出して情報を共有する。ワンストップサービスなので、発注側でやることはあまりない。新進商会におけるすべてのビジネスセグメントを組み合わせてサービススキームができている。
初の試みとして海外のエンドユーザー向けの対応を実施した。アジアパシフィック地域なので、英語だけではなく、中国語や韓国語などのコールセンターをどこに作るべきか。国内ではコスト高になるので、コールセンターの会社と協業して上海にコールセンターを立ち上げて、現在も稼働している。
フルフィルメント受注の決め手は、第1に経験と実績、クライアント目線でのサービスプログラムを設計し、「かゆいところに手が届く」サービスレベルを構築することだ。第2にビジネスセグメントの組み合わせ、適材適所のワンストップサービスの提案になる。簡単に言えば、クライアントが楽になれるかどうかである。楽になった分だけ、クライアントはコアコンピタンスに注力できる。
これからのビジネスのキーワードは、共有、変える・変わる、組み合わせる、ローカルとグローバル、オンデマンド、ネット、人材育成、エコ、サービス、ネットなど、いろいろある。
一番重要なのはやはり人材育成ではないか。人材育成ができて初めて、いろいろなものを組み合わせることを考えられる人が出てくる。または避けて通れない。印刷業でも今後、カーボンフットプリントなど出てくるだろう。
グローバルな世界では韓国勢、中国勢が日本を脅かして、特にPCメーカーや電機メーカーは非常に危機感を感じている。製品のマーケットインの時間短縮や、さまざまな技術を組み合わせて時間を短縮することが今後の課題になる。マーケットインの短縮のために幅広いアライアンスを組まないとグローバルで勝てない。
デジタルサイネージやネットワークを組み合わせると、ローカルに特化したサービスビジネスは十分できるのではないか。ローカルにはまだまだ十分ビジネスチャンスはある。それをどう組み合わせるか、組み合うかが課題になってくる。
キーワードを組み合わせた新しいビジネスモデルの構築や、変化に対応できる柔軟な思考・提案力が必要になってくるだろう。可能にするのは人材の育成で、そういう人たちをどれだけ育てられるのか、あるいは自社でそういったリソースをもてるのかが、今後生き残っていくためには必要なのではないか。
(「JAGAT info」2010年3月号より一部抜粋)