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長期的、全体的な展望に立った戦略的Webサイト構築

掲載日: 2008年11月18日

サイトのターゲットを明確にしたほうがWebサイトの理解・納得を助ける。

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ビジネス上に不可欠となったWebサイトは「Web標準」「Web2.0」「Flash」「Ajax」「マッシュアップ」「ユーザー中心デザイン」などさまざまな「戦術」の活用のみならず、「戦略的」なWebサイト構築が重要視されている。またWebサイト構築事業者は、運用性や効果的な広告施策に対するコンサルティング能力が求められ、多様な能力を満たすことが得意先とのパートナーシップを築き上げることにつながるとされる。

アズ・シーツー代表取締役堀内敬子氏を講師に、Webサイト構築における技術動向を踏まえ、得意先の求める要件のヒアリングや設計、構築手法、課題などをWebサイト構築事業者の立場から事例を交えて紹介してもらった。

大切なことは「ユーザーを知る」こと

戦略的Web構築のために大切なことは「ユーザーを知る」ことである。「当たり前」とか「理想論」と思われがちだが、戦略的Web構築の大切な要素である。ユーザーがどのような目的を持ってWebサイトを訪問しているか、何をしたいのかを知る手法がある。

ユーザーが目的を達成できるWebサイトを作るためには、障壁が発生する。ユーザーは一人ではなく複数であるため、そのWebサイトに合致した目標を持っているかどうかということ。そしてそのWebサイトがアクセシブルかどうかという問題。さらにユーザビリティの問題(使い勝手が良いかどうか)、価格や信頼性という心理的な問題もある。そのような障壁を乗り越えて初めてゴールに到達できるということになる。これらの障壁を減らしていくため、技術的障壁と心理的障壁に分けて考え、適切なニーズを調査していく。

ユーザーは自分の気持ちを知っているか?

ユーザーの気持ちを知る手法としては、最初に定例調査、定性調査の違い・基本的な概念について復習した。定量調査は数値情報であり、定性調査は言語情報であると定義。従って、定量調査は事実を知るのに有効であり、何が起こったのかを知ることができる。定性調査はその起こったことについて、なぜそれが起こったかを知るのに有効である。定性調査については少数のサンプルで果たして良いフィードバックが得られるのかどうかという疑問が持たれるが、ヤコブ・ニールセンによれば「5人を対象にしたユーザーテストで、85%の問題を見つけることができる」。

ただし、ユーザーは必ず何か意識して行動しているとは限らない。意識しないで行動して、結果として自分でも再認識する場合もあるという。形式的なアンケートは参考にしかならず、設問の工夫などを求めた。

ペルソナ/シナリオ法について

Webサイトに対しての要望がクライアントから出たとして、それを全部かなえたとしても実際にユーザーのニーズに合致しているかは別の問題である。行動を知るための方法として、ペルソナ/シナリオ法がある。

ペルソナ/シナリオ法とは、顧客のデータを基に具体的なユーザー像(ペルソナ)を作り、その行動(シナリオ)を描くことでユーザーの気持ちを知る手法である。ペルソナ法に限らず、ユーザーの姿を知るというのは、実際には昔からビジネスでは行われていることで「具体的なユーザー像を出して、それを明文化しましょう。その人の行動を描き出しましょう」という意味である。

方法だが、まずペルソナシートを作る。これには写真があり、名前を書く。写真も名前も空想だが、ユーザーの実際のデータに基づいて「35歳、男性、課長。性格的には熱しやすく冷めやすく、ビジネスで独立をたくらむ」というように具体的に書く。勤務先や家族構成など記入していく。対比して、これから作るWebサイトやサービスをどのように使うかということを書いていく。このサービスにたどり着いたプロセス、使用する動機、実際に使用する際の具体的なシナリオなどを詳しくに書いていく。文字にして実際にその人の行動プロセスを追うことによって、問題点が洗い出され、改善点に至る。

ペルソナを作って、ユーザーを絞ると顧客が減るのではないか? しかし堀内氏は気持ちはよく分かるとしながらも、万人が満足するWebサイトなど存在しないため、だれが何をするために作られたサイトなのかはっきりしたほうが、そのWebサイトの理解・納得を助けると述べた。

(『JAGAT Info』2008年11月号より抜粋・クロスメディア研究会)

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