本記事は、アーカイブに保存されている過去の記事です。最新の情報は、公益社団法人日本印刷技術協会(JAGAT)サイトをご確認ください。
今、印刷業界ではユニバーサルデザイン(UD)が大きなうねりになりつつある。
『プリバリ印』4月号(4月10日号)では'人にやさしい印刷'を総力22ページの大特集。
昨今、ユニバーサルデザイン(UD)への取り組みが自治体や企業でも増えている。
印刷物にもUDの視点を取り入れ、利用する側のことを考えて、きちんと情報が伝わるという、その役割を果たせるものにしていく必要がある。
本誌特集では業界で最大のUD発信源である全日本印刷工業組合連合会(全印工連)常務理事 森永伸博氏に、メディア・ユニバーサルデザイン(MDU)への取り組み、フォント・色・デザインの使い方についてお話を伺った。今回は、その一部をご紹介したい。
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〔本文より抜粋〕
全印工連は、都道府県別に組織された印刷事業者の連合体、全国団体だ。全印工連には、メディア・ユニバーサルデザインプロジェクトという、UDに特化した部門がある。森永氏はその代表を務めている。全国レベルでのUDへの取り組みの経緯については次のように語る。
「UDは、もともと数年前に全国青年印刷人協議会が始めたものです。これはいいことだ、ということで、全印工連で取り組むことになりました。最近の印刷物ではカラーが一般化していますが、その色を認識するのに障碍(しょうがい)のある方は意外と多いのです。男性で20人にひとり、女性では500人にひとりくらいの割合でいらっしゃいます」。
色覚障碍があると、印刷物を見るうえでどんな問題があるのだろう。
「色覚障碍のない方は、赤緑青を感知する機能を持っていますが、障碍のある方はそのうちのひとつが弱い、または欠けています。そのため、印刷にたとえれば、赤の感知能力のない人には、4色で刷った印刷物も、マゼンタを抜いて、3色で刷ったように見えるのです」(森永氏/以下同)。
◇同じ情報を共有できない
特定の色が見えにくい、見えないことでの最大の問題点は「同じ情報が伝わらない」だと言う。
「たとえば、地下鉄の路線図などは、色で路線を区別しています。赤の感知が弱い人には、どの色も茶色に見えてしまいます。それでは、路線の区別ができません。われわれ印刷事業者は、これまで何気なく印刷物をつくってきましたが、それでは、印刷物が本来目指した情報伝達が果たせない場合があるわけです。そこで、色とデザイン、フォントのプロである私どもが、障碍のある方々にも、障碍のない方々と同じように情報が伝わるようにする必要があると考えたわけです」。
※中略
では、どのようにページデザインを行えばUDと言えるのか、具体例を挙げてみよう。
まず、色に関しては、多くの人が識別しやすい色の組み合わせをする。色の見え方は、障碍の型によって様々なので、色だけではすべての人への配慮にはならない。明度差をつけたり、形状など色以外の要素と組み合わせたりすることが必要だ。
ことに色による分類を表示するデザインでは、他の要素との組み合わせは必須だ。地下鉄路線図などがその例だが、この場合、色、線の形状も、直線のほか、点線、二重線などを併用すると判別が容易になる。
「カレンダーの場合、休日などを赤で表示しても、赤がグレーに見える人もいます。だから、赤字部分を白抜きにするとか、数字の背景に丸をつけて文字を白抜きにするとか。そうすると休日であることがひと目でわかります」。
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自分がその立場にならないと不便を感じる人の気持ちに気づかないことがある。しかしながら、情報を知り、それを反映することで、誰にとってもわかりやすく優しい印刷物をつくることができる。記事からはMUDを通して'印刷会社が社会に対して貢献できることがある'という森永氏のメッセージを強く感じることができる。
【取材協力】
全日本印刷工業組合連合会 常務理事/同連合会MUD推進プロジェクト委員長 森永伸博
http://www.aj-pia.or.jp/
印刷の価値を新たに創造する月刊誌『プリバリ印』4月号(4月10日発売)
http://www.jagat.jp/pv
【特集】
人にやさしい印刷
・印刷業界から発信するユニバーサルデザイン
・だれにでも見やすいフォントとは
・印刷物のカラーユニバーサルデザイン
【インタビュー】
普通につくって、手に取ってもらえるものにしていくのです。
財団法人共用品推進機構 星川 安之 氏
【特別リポート】
通販における、「印刷媒体」の新たな可能性
★バックナンバーはこちら http://www.jagat.jp/content/view/676/258/