新入社員を迎えて 記事No.#1639
掲載日: 2010年04月06日
毎年ユニークな新入社員のタイプを命名している(財)日本生産性本部によると、今年のタイプは「ETC型」だそうである。
かつてないほどの厳しい就職戦線を勝ち抜いてきただけに優秀で、携帯電話などIT活用には長けていることから情報収集や情報交換も積極的であるという。物事の進め方もスマートで、CO2の排出量削減など環境問題への関心も高い。しかし効率性を重視するあまり人との直接的なコミュニケーションが不足する場面があり、性急に関係を築こうとすると直前まで心の「バー」が開かないので、先輩、上司はゆとりを持って接することが肝心であるというのだ。経済状況が厳しいだけに早く成果や結果を求めがちであるが、注意が必要のようだ。
打ち解けるまでに時間が掛かっても打ち解けてしまえば、まさにETC化によって渋滞が解消したごとく、仕事のスマートさやIT活用の器用さなどメリットが見えてくるようだ。皆さんの会社の新入社員はどうであろうか。
それにしても経済変動の波は個人の人生を翻弄するものである。卒業時が2~3年遡るだけで、状況は一遍する。同財団の入社年度別新入社員タイプの2008年は「カーリング型」「売り手市場入社組だけに会社への帰属意識は低い」「経済の先行きは一気に不透明」、2007年は「デイトレーダー型」「景気の回復で久々の大量採用」「売り手市場だっただけに、早期転職が予想される」と今年の新入社員には信じがたいコメントである。実態が本当にそうであったかどうかは解らないが、「18歳」「22歳」という学卒新入社員に対する異常なほどのこだわりが強い日本社会にあって、卒業時にどんな経済状況と巡り合うかが人生を大きく左右するのも事実。大企業にとっては安定した人材確保と年齢構成への配慮から新卒社員の採用は大きいのであろう。新卒就職を逃した人にとっては、年度別新入社員タイプの晴れの舞台から去らざるを得ない。中小企業にとっては採用環境が許せば大きなチャンス。ただ優秀な人であればあるほど、その能力を活かせる職場環境と将来構想が必要になる。現状補強ではミスマッチが起こる可能性が高い。
一方、視点を変えて、新入社員の上司にあたる中間管理者世代(40歳代)を見てみよう。
20年前の1990年から10年を遡ると「タイヤチェーン型」「液晶テレビ型」「養殖ハマチ型」「テレフォンカード型」「日替わり定食型」「使い捨てカイロ」「コピー食品型」「麻雀パイ型」「瞬間湯沸かし器型」「漢方薬型」といった名前が付いている。時代を感じさせる名前もあれば、液晶テレビのように現在に至って本格的になったものもありなかなか面白い。この年代の社会背景にバブル経済が反映しており、昨今の人材より優れているという証拠は見当たらない。むしろ、養殖ハマチ型、日替わり定食型、テレフォンカード型に象徴されるように、当時は「過保護で栄養分高いが、ピチピチしていない」「一定方向に入れないと作動しない」期待したわりには変わり映えせず、同じ材料の繰り返し」と分析している。先輩・上司として「俺達が入社したころは・・・・」と胸を張って言うには少々、振り返りづらい評価である。確かにバブル期入社の社員に対しては厳しい見方がある。ただこれらは新入時の世相を反映させた集団的特徴であって一喜一憂するようなものではない。時代とともに人も技術も経済もめまぐるしく変化していくのが社会であり企業であるということだ。すべては常に変化し続けるものであり、留まっているものはない。留まることは「死」を意味することである。
いま印刷業界も大変革期の渦中にあり従来の経験が単純には通用しない。新入社員といえば「教える」のがあたり前と考えるが、先輩社員が新入社員から「学ぶ」という発想をもたないといけない時代でもある。新しいメディア感覚を持ちITに長けている世代に希望を託し、彼らが楽しく力を発揮できる環境とチャンスを与えることが先輩・上司の役割であろう。そのために全力を傾けなければならないことが、IT世代の若者が一番苦手な「オーラルコミュニケーション」ではないだろうか。