本記事は、アーカイブに保存されている過去の記事です。最新の情報は、公益社団法人日本印刷技術協会(JAGAT)サイトをご確認ください。
デザイン制作工程に手軽に導入できるオンライン校正サービス
印刷物を発注する側では、オンライン校正システムを導入して校正のやりとりを簡略化したいという要望が、年々大きくなっている。
しかし、オンライン校正システムは高価なものが多く、それほど普及している状況とは言えない。
オンライン校正システムの普及動向について、ソフトウェアトゥー の金子栄一氏に話を伺った。
■印刷校正の三段ステップ
印刷校正には、まず、クライアントに近い川上でおこなわれるレイアウト校正がある。この段階では、コピーライター、写真家、デザイナーなどが関わったレイアウトを、発注元の製品担当者や広告担当者がチェックする。現状のレイアウト校正の実態として、数多くの問題がある。
メール添付でデータを送ることやFTPでのデータ送信は、操作が煩雑となるだけでなく、セキュリティやファイル管理の面でも問題がある。
また、多数の確認用PDFが往復するような状況は、複数の校正者やグループで作業をする場合、確認作業も大変になる。
その次の段階は、入稿データの校正である。入稿データの校正とは、印刷会社に入稿されたデータに問題がないかをチェックすることで、RIPの際に問題が起こらないか、罫線が印刷できない等の問題がないかをチェックする。
最後の段階は色校正であり、印刷会社にとって品質保証のコアとなる部分と言える。
これらの校正要素を見直すことで、印刷会社の付加価値を向上させ、顧客とのコミュニケーションを改善することができる。
特にレイアウト校正の段階では、Webブラウザを使ったオンライン校正の仕組みが効果的である。
■オンライン校正を実現するクラウドサービス
「ProofHQ 」は、イギリスの会社が2008年から提供しているオンライン校正サービスである。現在、アメリカ、イギリス、ヨーロッパで利用され、契約数は約1,000社である。Webベースであるため、誰でもどこでも利用することができ、レイアウトや文字校正がおこなえる。注釈を入力し、その履歴も残すことができる。
クラウドサービスであるため、自社内でサーバーを保有し、管理する必要がない。月額の使用料金だけで手軽に利用できる。また、色々なスキルをもった人が校正作業を進められるよう、簡単で分かりやすい操作性となっている。
制作部門を持つ印刷会社であれば自社内でオンライン校正を利用するメリットがあるし、制作部門を持たない印刷会社でも、取引先に使ってもらうことでメリットがある。
■入稿データ校正
ソフトウェア・トゥーでは、7年前からPDFのプリフライトソリューション「PitStop 」を扱っている。
その当時、PDF入稿はほとんどおこなわれていなかった。
昨今はPDFを書き出すことも手軽になったし、印刷会社でもPDFプリントエンジンを搭載したRIPの導入も進んでいる。PDF入稿も、25~30%を占めるようになった。
しかし、PDF入稿の際、入稿されるデータをチェックするのに、結局人手がかかっている現状もある。
オンライン校正であれば、PDF入稿されたファイルをそのまま校正することができる。
さらに、PitStopを使うことで、データ入稿後に自動プリフライトすることも可能であり、人手を介さない安全確実なPDFデータとして下版することができる。
印刷会社を経由したオンライン校正をおこなうということは、印刷の仕上りに対して責任を持つことでもある。お客様が作ったPDFデータが安全確実であることを保障することは、印刷会社の付加価値となる。
このような仕組みを印刷会社の付加価値として取り込むことで、今後のビジネスを優位に進めていくことができる。
(テキスト&グラフィックス研究会、文責:千葉弘幸)