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今後、実用化が進むであろうLED-UV乾燥システムは、コスト面など未だ不透明な部分は残っている。
2008年からLED-UV乾燥システムが発表されているが、現在では数社のメーカーから販売されはじめている。UV印刷とは、紫外線硬化型のインキを使用して印刷し、紫外線を照射することで瞬時に硬化、乾燥を実現する印刷システムである。印刷後の乾燥が不要となり、すぐに後工程に回せるというメリットがある。
しかし、今までのランプ方式は電力消費量が大きく、特別な受電設備や排気ダクトなどの付帯設備が必要なことが普及の妨げになっていた。そこで、LED-UV乾燥システムの登場により、光源をランプからLEDにすることで、これらの問題点を解消するものである。
LED-UVは、従来のUVランプに替わって長波長、低消費電力のランプを使用し、LED-UV専用のインキが必要である。消費電力は約70%少なくてすみ、CO2の発生も少なくなり環境負荷の軽減になる。ランプも従来のものに比べ約12倍もの長寿命で交換回数を減らすことができる。また、オゾン発生がないことから、換気のためのダクト工事が不要である。
さらに、LEDは赤外線を含まないため被印刷体や印刷機への熱影響を防ぐことができる。とくに、フィルム等の原反が伸縮する心配もない。作業性からみると、瞬時に点灯できるため乾燥装置のための待ち時間を抑えられ、光源直下でも常温を維持できて安定する。
一方、照射装置と印刷面との距離が短いため厚紙印刷に不向きである。印刷会社にとってイニシャルコストや材料コストがまだ高いという課題もある。このように、いくつか課題もあるがデジタル印刷分野ではインクジェットのLED-UV乾燥が始まっている。
このLED-UV乾燥は、オフ輪に使用できないのかという声もある。今後、いろいろなかたちでハイパワーになることが予想され、輪転の速度にも対応できる可能性もある。しかし、この乾燥装置の導入が拡がらないとLED乾燥専用インキのコストが下がらない。
周知のようにインキのコストは、オフ輪インキ<枚葉インキ<UVインキ<LED専用インキとなっている。今後、導入が拡大したとしてもコストがどこまで下げられるか不透明な部分も残っている。したがって、現時点ではオフ輪まで本当に到達できるかどうかはまだ難しい状況である。