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DMに宣伝文書の代わりに"1枚のレコード"が入り、しかも"レコード針"が付いていたら!?
星の数ほど送られてくるもの、それはDM。世の中にはどのくらいダイレクトメール(DM)が行き交っているのだろうか。そんな統計があるとは思えないが、成人が毎日1通受け取っているとすれば、成人人口約1億人だから年間で総計300億通にもなる。まさに星の数。以前ある米国人デザイナーが12個のオブジェを展示した。それは1年間毎月受け取るジャンクメールを束ねて裁断した紙の塊。たったひとりへのメールなのに、もの凄い量だった。
チラッと見られればよし、開封せずに捨てられるDMも数多い。だが稀に「とっておきたい」と思うクリエイティブなDMもある。宣伝文書の代わりに"1枚のレコード"が入り、しかも"レコード針"が付いていたら、回してみたくなりますよね。
バンクーバーのサウンド・デザイン・スタジオ GGRP(Griffiths Gibson & Ramsay Productions)が音楽関係の顧客に送ったDMはサウンド付き。音を出すために、まずカードボードのパッケージを開けてレコードを取り出す。"ターンテーブル"よろしく突起に装着。蓋部を2つ折りにしてヘリにはめ込まれた"レコード針"をのせる。手持ちの鉛筆を使ってぐるぐる回すと…おお! ナレーションや音響が聴こえる!
「どんな狙いでこのDMをつくったのですか?」。PR担当のMegan Griffithsさんに聞いた。「お客さま(ミュージシャンやレコード会社)に"音楽制作ができます"という基本的な事実を伝えるのはもちろんなんですが、"クリエイティブな驚き"を伝えたかったの」。
結果は大成功。DMを受け取った人からはもちろん、送っていない人からも「どうすればもらえるのか」と大反響。GGRPは自社ウェブサイトのリニューアルPRを検討していた。そこに広告会社Grey Vancouverがこのプレーヤー販促を提案。片面には「A Town that Found Its Sound」という子供向けの朗読物語、裏面は特殊音響(SFX)をランダムに録音。手回しでよく聴こえる音のサンプル制作には手間もコストもかかった。
高価についたこのDMの採用の狙いは、単なる販促ではない。同社の歴史ゆえだ。Little Mountain Soundという伝説的な音楽スタジオを1973年に設立。エアロスミス、ボン・ジョヴィ、モトリー・クルー、AC/DCなど名だたるバンドが、そこで歴史に残る名盤をビニール盤レコードで制作した。その血統を伝えるからこそ、このDM。DMとは"企業そのもの"を表現する媒体なのだ。
★『プリバリ印』6月号「マーケティング価値校」より
著者:郷 好文[ごう・よしふみ]
マーケティングコンサルタント兼ライター。兼クリエイターズ・ショップ&ギャラリーutteの主宰者。
中小企業診断士。(株)ことば 代表取締役。マーケティングリサーチ、新事業立ち上げ、コンサルタント
を経て独立。著書に『顧客視点の成長シナリオ』(共著、ファーストプレス)などがある。
ブログ「cotoba」(http://cotoba.jp )にて千日修行中。連絡先:
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