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印刷物の為の校正、オンラインによる新しい手法
環境の変化
インターネットを利用した印刷校正を行うためのソリューリョンは、10年以上前から大手プリプレス企業より製品として発表されていた。ただ当時は、入稿はほとんどアナログ、通信回線も今日のようにブロードバンドが安価に提供されておらず、インターネットによる校正作業はほとんど見られなかった。また印刷企業向けにシステムとして導入するソリューションがこの1、2年注目を浴びていたが、費用やシステム管理といった点がネックとなり導入に至ったケースは限られているようだ。
インターネットのインフラが整い、高速通信が当たり前になって何年かを経て、多くの企業向けアプリケーションやデータサービスが、クラウドと総称されるインターネット、データセンター、アプリケーション開発、セキュリティ、コラボレーションをキーワードとする渾然一体となった利用サービスとして大きく取り上げられている。
オンライン校正ProofHQ
どんな印刷方法であろうと印刷物がある限り、常に校正作業は発生する。ただし、短納期、小ロット化が加速度的に進む今日、校正手法は紙を利用したものから、PDFとメールへ、そしてオンライン・コラボレーション環境での利用に移行する時代に突入している。
日本において企業向けクラウドサービスは脚光を浴び始めているが、海外ではアメリカやイギリスなど英語圏を中心に世界的なサービス提供が既にどんどん進んでいる。オンライン校正ProofHQのサービスはまさに“クラウド系”、低コスト、手間いらずといった切り口の新しいソリューションである。ProofHQはイギリスの企業が提供するオンライン校正のためのクラウドサービスで、商用サービスを開始して既に2年近くたっている。国際的な企業を含めた印刷のサプライチェーンなど、ブランド・企業、広告会社、デザイン・制作会社、印刷会社や出版社に多くの契約をいただいている。
特にワールドワイドで展開している企業の導入実績では、単に印刷物の校正が目的として導入されるより、承認システムとして利用されているケースも多く、導入規模も大きい。例えばルールの厳しい企業のロゴや製品写真を、社内外を問わず印刷物や広告で利用する場合にProofHQのシステムを利用して本社の承認を取らないと印刷に回せないルールを設定したり、または世界中の販売代理店が広告を作成する場合に、メーカー本社のアドバイスや承認を得るなどのルールを徹底するために承認システムとして利用されているケースである。国際企業の場合、アメリカやアジア、ヨーロッパなど地域を越えた承認システムが必要になるため、ProofHQのログが残せる、承認の締め切りを設定できる、どこからでもアクセスできて導入が簡単という点が導入のポイントとなっている。
ProofHQの特徴
校正には文字校正、レイアウト校正、色校正など制作物の段階により校正の目的が変わる。ProofHQの機能は校正作業に求められるほとんどすべてを網羅する。ただし、モニターのキャリブレーションを管理することで遠隔地において色校正を行うシステムは多少ハードルがありProofHQの機能には含まれていない。
・安全なインターネットを経由したデータ転送
・データセンターのRIPサーバー機能によるDTPデータのストリーミングデータ化
・ブラウザ画面で高速に描画展開、拡大や移動にもストレスを感じない確認作業
・複数の校正者が同時に同じ校正画面を確認しながら、直しなどの指示を確認
・マーキングツール、コメントツール
・バージョン間での変更箇所の確認を簡単に行える並列表示
・締め切りなどのプロジェクト管理ツール、完全作業記録とメールによる通知
・アクセスや承認権限の設定による、スムーズで明確な責任分岐
以上のような機能は、特別なアプリケーションソフトをインストールすることなくWebブラウザからProofHQデータセンターにログインアクセスするだけで利用できる。インターネットに接続できるどのデスクトップ環境でも同じように利用することが可能だ。
オンライン校正の主な機能
ProofHQでは、Webブラウザで開ける専用アカウントページからファイルをアップロードするだけで、指定した校正者に専用URLがメール送信される。受け取った校正者はURLを開くだけで、コメントを書き入れることができる専用サイトを開いたり、ファイルをダウンロードすることができる。この校正者は何人でも設定することが可能だ。
DTP関連ファイルをはじめ、幅広いファイル形式に対応。AIやPDF、EPS、TIFF、PSDなどのDTPに特化したファイル形式だけではなく、Webデザイン用のHTMLファイルや、建築や設計で使われるDXFファイルにも対応してるので、利用者の幅が広がる。さらにAdobe PDF Library対応で、PDFの透明効果、オーバープリントの確認も可能だ。複数ページのデータをアップすれば、全ページをプルーフに変換してくれる。
プルーフ画面を見ながらコメントや返信が可能で、リアルタイムに閲覧できるため、同時に閲覧している校正者同士のコミュニケーションツールとしても利用できる。またプルーフ画面ではバージョンの違うプルーフを並べて比較表示したり、コメントをクリックするとその箇所が自動表示されるので、迅速な確認が可能だ。校正者はコメントを入れるだけではなく「承認」「保留」などプルーフに対する校正の「判断」を行え、プルーフをアップしたオーナーは常に誰がどのような判断をしているのか見ることができる。決められた締め切りまでに判断をしないと、自動的にリマインダメールが送信されるように設定することもできる。1点1GBまでのデータのアップロード・ダウンロード機能を使えば、この共有スペースを介して参加者が安全な制作データのやり取りも可能であ
る。外部との共同作業に必要なアクセス権などの管理機能を使え、安心の作業環境を構築できる。
写真家にとってもメリットは高い。高解像度の画像データをクライアントに渡すことなく、ProofHQ経由で詳細のデータ確認をしてもらえる。自分が出向かなくても作品候補を何点か見せた上で選択してもらえるのは便利だ。高倍率で拡大することで、シャドウ部のノイズや輪郭部の偽色の有無も確認できる。
アカウント内では、ユーザーやワークスペース、プルーフの管理だけではなく、常に誰が何を行ったかのアクティビティログが残るので、企業内ワークフローの確認に利用することも可能だ。
低料金、月額設定、初期費用なしで利用できるサービスで、1カ月単位の契約・解約、変更ができる。想定しているユーザーが写真家やデザイナーなどのクリエーターから、印刷会社や企業といった印刷サプライチェーン全般にわたるため、利用規模に応じて月額9000円から7万8000円までのプランがある(税別)。
安全・安心なセキュリティ環境
専用施設で動くProofHQの複数のサーバーは、24時間体制の監視カメラと静脈認証システムで警護され、ネットワーク設備や内部のシステムの周期的なテスト等も含め、サービスをノンストップで利用できるよう設計されたシステムを備えている。予備発電機、複数の通信会社が提供する回線、さらにサーバー管理セキュリティ、データベースセキュリティ、システムセキュリティ、データバックアップ、災害リカバリープランなど、最新で実績のある技術を利用して最高レベルのセキュリティを実現。可能な限り最も広範囲なセキュリティを利用し、高い技術を持つプロフェッショナルが厳しいテストを実行している。
ProofHQへのアクセスは、有効なユーザー名とパスワードの組み合わせでのみ実行でき、その際はSSLを利用した暗号化によって通信される。ProofHQの管理画面は、顧客が他のデータにアクセスできないセキュリティ設定がなされ、このセキュリティ設定はユーザーがサイトにつないでいる間、全データに対して実行される。
ProofHQのメリット
企業、代理店、制作会社、印刷会社などの参加者が、即時にデスクトップ環境で校正作業を完結できる点は非常に大きいメリットがある。欧米ほど国土が広くなく、国境を越えるビジネスが比較的少なかった日本でも、昨今のアジア経済の勃興に対応してゆく流れが強くなった。以前から制作を中国に外注しているケースも多々見られるが、そのようなケースでの活用にもすぐに対応が可能だ。手軽な月額料金、初期費用が不要という価格体系ならではのメリットとして、ROIすなわち投資に対して効果が認められないとなれば、いつでも契約解除できる点が今的と言える。打ち合わせのための移動時間を削減でき、より生産的な作業に時間を使えるといった単純な投資効果は簡単に想像できるが、他を含めたソリューションを組むことにより、顧客の満足度増大を可能にする。
関連コラボレーション
オンライン校正のツールといった性格から、広告会社や印刷会社の営業、営業企画に携わる方の興味を引くと思う。コラボレーションツール、自社の制作部門の参加やお得意様企業の部署、部門にまたがる担当者を含め一挙に校正作業を進められるメリットは多大だ。
また、制作部門やプリプレス部門においてPDFのプリフライトによるデータチェックや、手軽に出力可能なインクジェットプルーファーを組み合わせれば、少ない投資で大きな顧客満足度を手に入れる可能性が出てくる。
特に印刷企業にとっては、重い生産設備の追加投資や償却が難しい経済環境に突入している。簡単で、しかも少ない費用で顧客満足度を上げるオンライン校正・プラスαのソリューション構築のご提案を今年のテーマとしていきたい。
お問い合わせ先
株式会社ソフトウェア・トゥー
URL http://www.swtoo.com/