本記事は、アーカイブに保存されている過去の記事です。最新の情報は、公益社団法人日本印刷技術協会(JAGAT)サイトをご確認ください。
地域企業によるブランド発信の実践[Xover Night #7]
~老舗TシャツメーカーのいまどきWebツール活用道~
久米繊維工業株式会社
代表取締役
久米 信行 氏
久米氏:久米繊維工業の久米でございます。皆さんの会社にはひと言で言いきるキャッチコピーがありますか。短いメッセージでいかに会社の特長を伝えるかということに私も苦心しています。「日本でこそ創りえるTシャツを世界へ未来の子供たちへ」これが私共の会社のキャッチフレーズです(図1)(図2)。
(図1)
(図2)
現在、地元墨田区の企業仲間と3本の動画つきブログを使って自分たちの会社を説明しようというプロジェクトをしています。まずは、私共の会社を紹介する3本の動画つきブログをご紹介しますのでご覧ください。
(図3)
1つ目は、究極の国産有機和綿Tシャツの話です。昔は、日本中に和綿畑があったそうですが、今はほとんどありません。5年前、私たちは有機栽培一筋の町田さんという農家の方と出会いました。そして、たった40粒の和綿の種から私たちのプロジェクトがスタートしました。当然、採算には乗らないプロジェクトですから、妻も子どもたちも動員して一粒一粒ポットに種を植えることから始めました。
私たちのコットンボールには葉っぱが残りましたが、葉っぱが残っている状態は非常に珍しいそうです。世界中で枯れ葉剤を使って葉っぱを枯らしてしまって、その上で収穫をするからです。つまり私たちが安価なTシャツを着ることは世界中の土壌を汚していることになるのです。将来、私たちTシャツメーカーが残ったとしても「お父さんの会社は地球をよごしたよね」と言われてしまうと思って、オーガニックコットン作りに励んでいるのです。
収穫した綿を綿繰り機と呼ばれる昔ながらの手回しのローラーの中に入れて種と綿を分離します。これを5年間続けてようやく綿が貯まったので、糸にしました。大正紡さんが糸を紡いでくれて、カネキチ工業さんが昔ながらの手編みをしてくれました。そしてお日様の力を使った私たちの工場で一枚一枚手縫いしました。それから、私たちのシルクスクリーンの工場で職工が刷りました。そのTシャツがゴア副大統領が提唱した世界7ヶ所LIVE EARTHコンサート日本公式Tシャツに選ばれたのです。
5年かけてたった90枚しかできなかったのですが、このTシャツを販売して、是非、NPOの里山再生の収益金にしたいと考えたのです。そこで、この物語を動画やブログで発信してYahooのチャリティーオークションに出品することにしました。ただチャリティーオークションにかけてもつまらないので、コンサートに参加した坂本龍一さんや絢香さんのサインを載せて世界で一枚のTシャツにしました。さて、いくらで落札したかということですが、皆さんは好きな人のサイン入りTシャツならいくらで買いますか?実際には30万円から70万円で落札しました。5年かけて作った世界で一枚のTシャツだというストーリーを理解してもらえれば、それに共感してくれるのです。
「もの」だけでは人は感動してくれません。2つ目は、「こと」のはなしです。恐らく日本で一番美しいTシャツアート展のお話です。四国の四万十川のほとりに美術館のない町がありまして、それならば、砂浜を美術館にしてしまおうと20年前から始まったプロジェクトです。
地元の町役場の若者とアーティストとアートディレクターで地域おこしをしたのです。今ではネットで1100枚のTシャツが集まり、ボランティアも勝手に集まってコストゼロのイベントになっています。NHKのお昼の番組で20分間生放送をされたり、また、民放でも取り上げられたり、「るるぶMAP」の表紙になっています。恐らく電通、博報堂に頼んだら5億、10億のイベントでしょう。
具体的には、私共のオーガニックTシャツにインクジェットでプリントをして、「世界で一枚のあなたのTシャツを作って飾りませんか」というイベントです。4000円を払えば誰でも参加できます。今年は巡回展として、モンゴルで開催します。Tシャツはイベントでひらひらした後に、自分のものになります。参加者のほとんどがリピーターですので、毎年宝物が増えていくことになります。私の子どもの落書きも入っているし、私が書いた絵も入っています。私も2000枚ほどコレクションがありますが、一番大切なのは子どもが3歳のときに書いたものです。子どもは、このイベントに参加すると自分のTシャツに向かってダッシュして、見つかった!写真撮って!と叫びます。そういったことがこのイベントについてくるのです。
3つ目は、日本の酒蔵Tシャツのイベントです。うちには日本酒の好きな若い社員がいて、日本酒のTシャツを作らせてくださいと蔵元にメールを出し続けました。そして、苦節4年。とりあえず10枚作ろうと、酔狂な蔵元が集まってくれました。「真澄」という長野の蔵元の広報の人も参加して、私共の錦糸町のギャラリーで利き酒会を兼ねたイベントをしました。
酒蔵Tシャツ100選をやり始めた理由は、これからは中国から4億人、5億人の人が来るので日本の蔵元と仲良くなっていれば良いことがあると考えたからです。私たちの両親や祖父母が初めて海外旅行に行ったとき、お土産にジョニ黒やナポレオンといった洋酒を買ってきました。そして、それをサイドボードに飾るということがステイタスでし多分、それと同じことを中国の人たちはするのではないでしょうか。私の父は、ナポレオン等のキャラクターを買ってきてTシャツにして売っていました。いずれは、「菊姫」等のTシャツを作って海外に広めたと思っています。
私は墨田区の観光協会の理事をやっていますが、蔵元がないのです。これから、スカイツリーが建ちますし北斎の美術館もできますので、今後、海外の人がたくさん来ることは間違いありません。そこで、日本中の美味しい酒をガード下で飲めるようにしたいのです。私共も老舗だと思っていますが、まだ100年経っていません。酒蔵は400年、500年は当たり前です。水を守り、土を守り、麹菌を守り、親を守り、杜氏を守ってきました。つまり、環境のこと、クールジャパン、私達が追求していることの先輩なのです。
このイベントを開催した後にどういうことが起きたかというお話をさせていただきます。
とにかく、Twitterでものすごく盛り上がりました(図4)。驚くほどでした。
(図4)
先日、私は日本財団でNPOの人のためにTwitterに関してのお話をしました。そのイベントはUstream(ユーストリーム)で生放送されたのですが、それを会場以外でのところで100人、200人が見ていてその場でどんどんつぶやいているのですから、本当に恐ろしい時代だと思いました。このように、イベントがあればその場でみんながどんどんつぶやくのです。錦糸町の片隅で開かれたイベントでもそれが起きているわけです。自分も町おこしに参加したいという声があったり、また、東武百貨店のバイヤーの方が、実際に蔵元さんの話を聞きながら飲むととても印象に残りますと言っていました。
今日、一番お伝えしたいことはここです。つまり、ある商品に対して一番思い入れのある人が直にネットで語る、これが人の心を動かすのだということです。今まではそれが難しかったのです。ところが、今はUstream(ユーストリーム)で生放送できますし、YouTubeで語ることもできます。日本酒Tシャツは宣伝をしませんでしたが、お客様が勝手につぶやいて宣伝してくれました。日本酒Tシャツ展のビデオは、来てくれた人お客様が作ってくれたのです。
墨田区では地元の若手経営者が、自分でYouTubeを作ろうプロジェクトをやっていて、横浜アートプロジェクトの榎田さんという方に講師をお願いして展開しています。5回ほど指導に来ていただいたら、ある程度のクオリティのものは作れるようになりました。
一ノ蔵さんに「すず音」というシャンパンのようなお酒があるのですが、これを私がつぶやいたら、「すず音」ファンから、「大好きです。仙台帰ると買います」という反応があり、さらに驚いたのは、居酒屋さんが「ウチに置いてます」と宣伝でつぶやいていたことです。
先程、トヨタのマーケターの方とカーナビについて議論していました。そのときに、図4をお見せして紹介したのです
が、「写真や動画も拝見。車飛ばしてお邪魔しようと思いましたが、満席との由あきらめました。」こういった楽しそうなことが流れてきて思わずそこへ行ってしまう、それも予めデータベースで登録してある情報ではなくて、勝手に教え合って作りあうようなカーナビになっていくのではないかという話をしました。
皆さんは印刷業の方ですが、本質的にはコミュニケーション支援ですね。ですから、クライアントに対して、こういうイベントを開きましょう、YouTube やUstreamで流しましょう、みんなにつぶやいてもらいましょう、というところまでやる時代が来ているのです。
しかし、何でもかんでもつぶやいてくれるわけではありません。やはり、ブランド価値のあるものにしかつぶやいてはくれないのです。ところが、日本ではブランドをはき違えていて、認知度が高いものがブランドであると思われています。その結果、ソニーやパナソニックが調査では上に来ます。しかし、ソニーやパナソニックがブランドでしょうか。では、ブランドとはどういうものでしょう(図5)。
(図5)
KDDIの稲森さんは自分で値段を決められるものがブランドであると言っています。つまり、限定性のあるものがブランドなのです。そこに行かないと買えない、数量や期間が限定されている、あるいは、買える人が決まっている、等というものになります。そして、ストーリーです。先程のTシャツがなぜ30万、50万で売れたかと言えば、5年かけて作ったとか、大好きな坂本龍一さんが賛同してサインをしてくれたとか、そういったストーリーがあるからです。それから、もちろんこだわりが重要です。無農薬で作りました、マメを復活させてまでやりました、昔ながらの釣り編み機でやりました、お日様の電力でやりました。これらのこだわりがあり、それがストーリーになって、初めてつぶやきたくなるのです。単にIT活用してもだめです。つぶやきたくなるようなことをしないといけません。
先日、ソニーのシークレットパーティーがあってブロガーとして呼ばれました。そこで、モバイルのVAIO Pのお披露目があり、設計の人の話をききました。「極限まで薄くしたかったのです。そのために邪魔だったのがヘッドフォン端子でした。ですから、見てください!ヘッドフォン端子が楕円です。」途端に、みんな一斉にTwitterで、「わーっ、楕円だよ!」と始まりました。ヘッドフォン端子が楕円かどうか、気にしたことはあまりないですね。しかし、そこにこだわりとストーリーがあるわけです。さらに、そのことを知っているのは担当者から教えてもらった私だけ。だから、つぶやきたくなるのです。こういった条件をクライアントに提供しないとネットコミは起らないのです。
ブランドピラミッドにはやはり神話が必要です(図6)。和綿のTシャツが30万円で売れても久米繊維には一銭も入っていません。私も家族と畑で100日くらい労働しています。それが神話なのです。経済合理性ではありません。
(図6)
一部上場企業で利益が出たと言ってもほとんどがリストラです。今すぐに利益の出ないものはすぐやめろという方向です。ですから、神話はことごとく切り捨てられます。だからこそ逆に中小企業、個人では神話が作れるのです。ただし、お金をかけないで自分でやるということです。
和綿は売れないけれど、オーガニックコットンは売れました。砂浜美術館では参加費を1000円上げてもオーガニックコットンにしてくれました。もちろんお客様は限られます。国産が好きという言うお客様は2割しかいないかも知れませんが、その2割が8割の利益を作ってくれます。とは言え、私どもも工場を回してくためには、8割でOEMもやらなければなりません。
神話を作るためのことをしなければ、ただの下請けです。もっと安くしなければ中国に持っていくよと言われて値切られておしまいです。どうやって神話を作るか、どうやってお客様が喜んでくれるプレミアム商品を作るか。そして、一方では多くのお客様を作るか。ミックスが必要なのです。
ここからは、クラウドサービスの最新活用についてです。以前はたくさんのソフトをPCの中に入れなくてはなりませんでしたが、今はどこかにあるサーバーと繋がれば何でもできます。クラウドサービスというのは、中小企業、NPO、個人、弱者を強くするツール、ネットワークだと思います(図7)(図8)。
(図7)
(図8)
大きな男の人と女性が戦えば、女性が負けます。しかし、ピストルを持った場合は互角になります。さらに、ピストルの使い方が女性の方が上手かった場合には女性の方が強くなります。クラウドサービスを使うのが上手いのは大企業ではありません。どちらかと言えば個人です。導入コストもランニングコストも格安なので個人に歓迎されるのです。そして、クラウドサービスがすごいのは最新のサービスに常にバージョンアップされていることです。
私はGメールを使っていますが、つい数ヶ月前にすごいバージョンアップがありました。本文にファイル添付しますと書いたのに添付しないで送ってしまったらエラーメッセージがでました。このようにみんなの意見で勝手に良くなっていくのです。さらに、iPhone、iPadです。日経パソコンの元編集で現在は局長の渡辺さんは、いつもPC を持っていましたが今はiPhone しか持っていません。いつでもメールが読めるしTwitterができます。当然、ネット上にバックアップがあります。仮に地震が起きて私のPCも東京も全滅しても検索で「久米繊維」と入れればYouTubeで動画が見られます。広告情報が常にネット上にあって、まさにクラウドに乗っている感じです。
クラウドサービスの一番のポイントは大企業で導入が難しいことです。大企業の多くがブログ、Twitter禁止、ノートPC持ち出し禁止、USBメモリは潰してあります。金融機関ではFAXを送るのに2人で指さし確認です。私は、大企業は本当に生産性システムが上がったのかという経営情報学会の調査に参加したことがありますが、上がっていないのです。今、一番生産性が上がっているのは、個人事業主です。例えば、イラストレーターは何でも自分でできてしまい、設備不要で非常に生産性が高いです。
では、ここで皆さんのネット活用度をチェックしたいと思います(図9)。
(図9)
事前準備の項目を順を追ってみていくと、少しずつ手があがらなくなると思います。では、一番重要な部分ですが、私の好きな映画を知っていますか?私がいた日興證券は非常に営業が厳しい会社です。私の上司だった人は高校を卒業して入社し、伝説のトップセールスでトヨタと空前の取引をしたり、最後はトーマスという監査法人の顧問までした営業の神様です。その方に言われました。「久米君、これから買っていただきたい人の好きなものが分かった時点で、営業は半分終わったも同じだよ」私のところには日々飛び込みで営業がきますが、私の好きな映画から入る人はひとりもいません。5分か10分調べれば分かることなのです。
先程の日本酒の蔵元を口説いた村上君は、誰かにメールをする前に必ず5分か10分調べてから、メールを出します。普通のメルマガはレス率が0.1%を切っています。ところが彼は10%あります。この事前準備をするからです。誰でもできることです。
図9の次の項目に進んでみましょう。こういったことで一番すごいと思う人は、ソフトバンクの孫さんです。10年前に勉強会でご一緒していましたが、いつも一番前で聴講していました。そして、いつも一番最初に質問していました。そして、終了後は、感想などをTwitterやブログに書くことが普通のスタイルです。その上で、お礼状やお礼メールを書きます。さらに、講師はメルマガやブログ等自分のメディアを持っていますので、登録して読みます。
私の師匠のひとりである元電通の調査部長で電通綜研を経て、今はノゾムドットネットの代表の吉田望さんが10年前にすごい予言をしました。「久米くん、これからはネット上に情報が溢れるよ。メールで受信箱がいっぱいになるよ。でも、それは幸せではないし、逆に情報が見えなくなる人がいっぱいになる。一番良い方法は、自分にとって重要なジャンルを10個決めて、その10人の師匠を見つけて、その人たちのメルマガやブログを読んでいれば世界が分かるようになる。その人たちがあらゆるものを見てエッセンスを流すから。新聞、雑誌はいらなくなるよ。」その通りになりました。
皆さんの中で、本を書いている人のメルマガに返信した方はいますか?是非返信してください。ほぼ、返ってきます。
本を読んで感動したらメルマガをネットで探して、返信したら仲良くなれるのです。私は年間2000人くらいの方にお話をします。そして、こういうことを一緒にやってくれて、メール出してくれたら、スカイツリー見がてらランチしませんか?会社に遊びに来ませんか?と声をかけますが、実際に会社に来るのは10人ほどです。
教え子の明治大学の学生に言うのですが、図9の16項目ができたら、君たちは何をやっても成功するよと。年齢、性別、学歴、会社も関係なく、良いことが起きます。ICT、クラウドサービスは無料ですが、それだけでは何もやってくれない箱です。必要なのは使う人の心掛けです。「知情意」で決まります(図10)。
(図10)
私の師匠のソフト化経済センター所長の日下 公人先生は、日本人に今欠けているのは意志であると言っています。
無料のツールがあるのに使っていないのは寂しい状況です。そして、せっかくこういった場で出会い、そこからメルマガ、ブログ等で繋がれるのにそれをやっていない。これは情が薄いと思います。ネット上に情報はたくさんありますが、本当の意味での知識や知恵はないと思います。皆さんの現場には生産の知恵、微妙はノウハウがたくさんあると思います。こういうことは達人に会わない限り分かりません。せっかく仲良くなれるのになぜ行かないのかと思うわけです。
私はこの10年、日経パソコンに連載しているのですが、2007年に「ググってウィキして会いに行け」という記事を書きました。
(図11)
誰かに会いに行く前にGoogleで調べて、分からなければウィキペディアで調べよう、そして会いに行こうよ、というコラムですが、日経パソコンの副編集長に頼まれて書いたものです。「ウチの会社は高倍率を突破して頭のいい子がたくさん入ってくるけれども、取材に行かない、人に会おうとしない、はっぱをかけて欲しい」という依頼でした。この記事の後、新聞の取材を受けましたが、記者の方が「そうなんです、全然取材に行かないんですよ」と言っていました。
クラウド活用はやはりメールが主役です(図12)。
(図12)
私は昔からニフティですが、それをGメールに全転送しています。5年分くらいバックアップがあります。いつPCが壊れても大丈夫です。毎日来る600通のメールも整理するのはやめました。検索すれば良いのです。スパムメール対策も勝手にやってくれます。充実したサービスがタダというのはすごいです(図13)。
(図13)
縁を広げるためのおさらいです(図14)。
(図14)
大人物ほどネット以前からこのようなことを実践しています。
私は、2004年に「メール道」という本を書きました。NTTコムウェアという会社のサイトの連載をまとめたものです。その後、NTTコムウェアへの表敬訪問の機会がありました。もちろん、事前に相手のことを調べてから伺い、名刺交換のときに私が感動したあれこれの事柄について話すと相手はにっこりして「久米君、これ良かったよ」と。「メール道」をちゃんと読んでくれているのです。ポストイットが挟んであって、このページのこれが良かった、と言ってくれるのです。ものすごく感動しますね。大人の戦いとはこういうものだといつも社員に話しています。
そして、ここからです。感動した光景をパシャパシャ撮します。例えば、社長室に通されたら経営理念や絵等、ネタを探して質問します。お店であればディスプレイを撮影します。さらに、お礼メールです。美辞麗句が並んでいるだけはなくて、きちんと感動を伝えます。中小企業で、それほどスキルがあるわけでも学歴があるわけでもない。口が上手でもない。しかし、社員がこういったことを実践すれば注文がとれます。
私が受け取るメールの多くは、面談のお願い、営業のご挨拶等です。しかし、こんなメールが来たら私は涙を流します(図15)。
(図15)
ひと言も面談して欲しい等と言っていないけれども会ってみたくなります。童話の「北風と太陽」の太陽みたいなものです。それから、クラウド活用のもう1つは、Twitterです(図16)。最近、私も試したらはまってしまいました。初心者がはまるだけではなくて10年来、ネットをやり尽くした人がはまっています。
(図16)
そして、法人営業に非常に役に立つのです。私は新しいツールが出たらまずは試します。その中でTwitterはどう考えても一番気軽で簡便です。しかし、縁を広げ深める効果が絶大です。つぶやくだけでアウトバウンドとインバウンドの両方を兼ね備えているのです。
男性はTwitterが苦手です。そこで、「ゆるカジTwitterでいこう」を提案します(図17)。
(図17)
「ジャージ姿で気軽に発信」と書きましたが、Twitterは真面目な人ほどつまらないのです。飲み屋で話しているような話題が一番良いのです。どういうものがTwitterなのかを知りたければ、ひとりでファミレスに行って本を読むフリをして、隣の奥さんたちの会話を聞いてください。楽しいです。まず、結論はないです。テーマもないです。Aさんの話とBさんの話は繋がっているようで繋がってないのですが、なぜか皆が楽しそうです。この感覚を男性は失ってしまっています。印刷業界の人は真面目です。校正がありますから。Twitterは誤字脱字、事実誤認の嵐です。まず、そういうものだと思ってください。
私のつぶやきで一番返信があったのは「今日、久しぶりに4の字固めかけました」でした。どこで?誰に?となるわけです。子どもに遊び場でかけましたと書いたら誰も返信してくれません。豚骨ラーメンここ以外にない!詳しくはこちら。この本泣けるぜ!詳しくはこちら。これがTwitterです。含みを持たせるのです。
リツイートはガッテンボタンのようなもので、いい話があったときにリツイートを使うと私の1800人のフォロアーに流れます。今日のお客様が今日すぐに始めて、これからお話しする通りのことを実践したら1000人のフォロアーができます。この人数でかわりばんこにつぶやいて、ガッテンとやれば1000×30で3万人にリーチするわけです。すごい時代です。
龍馬伝を孫さんと見よう、ということが流行っています。放送の4時間前くらいから孫さんがTwitterで興奮して叫んでいます。私のおじいちゃんはテレビがある家に行って力道山や野球をみました。どこの家がテレビを入れたか皆知っていたわけです。楽しかったらしいです。今はワンセグでひとりで見るから楽しくないのでテレビ視聴率が低いのです。こういったことが、街頭TVの如き一体感を味わうということで、Twitterで復活しているのです。
Twitter共有というのは、例えばアマゾンや楽天で良い商品があったときに、Twitter共有をクリックするとTwitterで商品情報が記入された状態になって、どこがお薦めかを書くだけでお友達につぶやけます。このように、Twitterですごい勢いでマーケティンが行なわれているわけです。
SPA!という雑誌の馴染みの女性記者から取材を受けたときに、Twitterをやるように薦めたことがあります。さっそくTwitterを始めた彼女の写真のアイコンは飼っている猫のようだし、ユーザーネームは何とかキャットでしたので、すごい猫好きと分かりました。そこで、私の大好きな大人の童話、ポール・ギャリコの「ジェニィ」を薦めました。彼女から、すぐに「脊髄反射で購入」と返信がありました。
先日、東武百貨店で本日のような講演をしました。そこで、「皆さん、脊髄反射で購入してもらったことはありますか」と聞きました。商人であるなら相手の好きなものを感じて、それをつぶやいてあげれば「脊髄反射で購入」してくれるのです。Twitterは井戸端会議や昔の商店街の商いに限りなく近づいています。正直言ってマスマーケティングは終わってしまいました。私は本を書いていますが、新聞広告は全く効きません。それよりもTwitterでつぶやいた方がよっぽど効きます。
それから、フォローと返信で仲良くなりたい人の追っかけになれば良いのです。私は久米繊維のことを褒められるよりも、毎日撮っているスカイツリーや雲の写真を褒められる方がずっと嬉しいです。相手の個人的な趣味に返信すると仲良くなれます。とは言え、時間がありませんので、全部読んでいたら大変です。多少の割り切りも必要でしょう。
鳩山由紀夫さんと繋がっているとか、勝間和代さんと繋がっているとか言う人がいまますが、そういうツールではないと思っています。皆さんが日々会っているお客様やパートナー、これから仲良くなりたい身近な人にTwitterを薦めるのが良いのです(図18)。
(図18)
まずは、身近で仲良くなり、次にB to Bになります。日経パソコンのシンポジュームにパネルに参加した錦部製作所というところがありました。歯科器具を作っている葛飾の町工場ですが、Twitterを上手く使っていて感動しました。当然、歯医者さんとの付き合いがあります。ある歯医者さんがフォローしている友達を見たらほとんど歯医者さんだと彼は気付いたのです。
お付き合いのある歯医者さんに「先生、どなたかお友達を紹介してくれませんか」といきなり言っても紹介してくれません。Twitterなら、例えば趣味から入ってフォローすればお付き合いのある歯医者さんを基点にどんどん上手に営業ができます。友だちの友だちとほぼ自動的に仲良くなれるということです。
達人の周りには同じジャンルの達人がいます。ですから、10人の師匠の周りにはさらに師匠がいるということです。
これを今日から皆さんでやっていきましょうということです。そこで、何をつぶやけばいいのか迷うところですが、つぶやきですからそれほど気にする必要はありません(図19)。
(図19)
先日、ある会社のパーティーで銀行の支店長さんがとてもいいことを言いました。「成功の反対は何でしょう。失敗ではないです。何も挑戦しないことです。」つぶやいていいですかと支店長さんに聞いて、さっそく私はつぶやきました。ものすごくリツイートが来たので、支店長さんに教えたら彼はすぐにTwitterを始めました。そして、朝礼で全行員に薦めたそうです。
今、こんな本を読んでます、こんな音楽を聴いてます、が一番良いのではないでしょうか。普段は自分の好きな音楽をカミングアウトする機会はないですが、Twitterならつぶやけます。図19だけでも7つつぶやけます。営業が苦手な人は、仕事の話、趣味の話、役立つ話、役立たない話の4つの中で仕事に役立つ話ばかりしているそうです。仕事の話はつまらないと言われています(図20)。
(図20)
売れないセールスをしている人は、「この株は儲かりますよ」といった話ばかりです。「お孫さん、クワガタが好きなんですってね、採ってきました」という人がトップセールスです。昔は、100回くらい接待ゴルフをしなければ分からなかったことが、今は検索するだけです。Twitterを読んでいるだけで分かるのです。ただし、縁を広げるときには注意事項があります(図21)。
(図21)
ただ、つぶやくだけでは縁は広がりません。実名とプロフィールは公開してください。そして、会社のリンクをつけてください。つまり、怪しい人もいるわけですから、積極的にフォローしようと思う人は、やはり自分のことを明らかにしている人になります。GoogleもTwitterの検索をフォローし始めています。検索されるときに自分の名前が上に出てほしいですね。実名でなければ出ません。
そして、まずは100人フォローします。2000人までは誰でもフォローできます。2000人から先はむやみにフォローする人ができないように、自分がフォローされている数の1.1倍が目安です。つまり、2000人を追いかけていれば2200人をフォローできます。しかし、よほどの有名人でない限り最初からフォローしてくれませんので、自分で追いかけなければなりません。そして、達人がフォローしている人をフォローします。例えば、私がフォローしている人を見てみてください。上場企業の社長、すごいクリエーター、すごい先生もいます。ただフォローしているだけではなくて、思い切って返信してみるのです。それも商売返信ではだめです。そして、フォローしてくれた人にはフォローして、自分あての返信には親切に答えていきます。
Twitterは短いメッセージなのでリッチではありません。ですから、YouTubeとセットではないでしょうか。動画編集は大変ですが、スライドショーを作るのは難しくありません。写真を並べてボタンを押すだけです。でも、皆さんやらないですね。100の言葉を使うなら10枚の写真です。それも皆さんが携わった感動的なイベントの写真を使うのです。感動的なクライアントの写真を撮って使えば良いのです(図22)。
(図22)
東武百貨店に伺ったときに商品政策の取締役が、地下に良いお店ができたからと紹介してくれました。奇跡のサクランボを作れる山形の果樹園をようやく口説いて出店できたということでした(図23)。
(図23)
私はさっそく自腹で買って社員に渡して、「ブログに書くんだぞ」と。その場で写真も撮らせてもらいました。帰ってから30分ほどでブログに書きました。そして、商品担当の部長さん等にメールでお知らせしました。そうしたら、東武百貨店の中で回覧されていました。最初にご紹介したスライドショーもおまけのソフトで作りました(図24)。
(図24)
それから、Googleにスライドショー作成、無料ソフトと入れるとたくさん出てきます。是非お試しください。デジカメ写真を撮るだけで良いのでとても手軽です。ですから、全社員にお客様のところに行ったら必ず写真を撮ってくるように言っています。おまけのソフトでDVDにも焼けますのでお客様にも喜ばれるし手軽にデモもできます(図25)。
(図25)
基本的には社内の「当たり前」というものが一番感動的です。現在、墨田区では職人ツアー、町工場写真撮影ツアーをやっています。とても盛り上がります。私たちから当たり前のことですが、皆さんがすごく感動してくれます。とにかく、感動したものをYouTubeに載せるのです。私は音楽なしで載せて、YouTubeにある無料の音楽を付けることが多いです。コストゼロです。
とにかく、ムービーがあると営業がすごく楽なのです。2分で終わりますし、伸びません。これがとても効果的なのです。いきなり商品と見積書を出すと、もっと安くならいかと言われてしまいます。一生懸命PowerPointを作っても、結局いくら?と言われます。ですから、ウチの会社ではそれを止めたのです。冒頭の3本のスライドを見せても6~7分です。日本酒が好きなんだ等と会話が弾み、そして、相手の気持ちを温めた後でA41枚の企画書を出します(図26)。
(図26)
毎日新聞もついにTwitterを使い始めました。「MAINICHI RT」をご存じでしょうか。前日の毎日jpのベスト10の記事をTwitterでつぶやかれたコメントとともに掲載しています。ハッシュタグというものを付ければ検索できます。
毎日新聞の記者から、ここでつぶやいてくれと頼まれたので、教え子の明治大学の学生にもつぶやかせています。
「MAINICHI RT」というタブロイド判が6月1日に創刊されて、左側半分に記事、右側にTwitterのつぶやきが書いてあります。早速、ここに「採用された人Tシャツ」を作ろうと考えました。そこで、みんなが投稿したくなるようなTシャツという企画で、学生の前で毎日新聞の人にA41枚の企画書を渡しました。すると、その場で即採用されました。企画が面白ければA41枚で大丈夫でしょ、と学生に話したわけです。
ECについても同様です。いきなり買い物籠を付けるだけでは見てくれませんし、長いウンチクも読んでくれません。
それならば、商品ごとにスライドやムービーを付ける方が効果的です。そして、小出しのTwitterとブログやメルマガでジャブのように情報を出します。そこから、YouTubeにリンク、買い物籠にリンクする方法が良いのです(図27)。
(図27)
図28は日産ケンとメリーの愛のスカイラインTシャツです。30年前に私の父がお手伝いして作っていました。
(図28)
数年前にスカイラインの試乗記をブログに書いて欲しいと頼まれました。そこで、父がケンメリTシャツを作ったことを書いて、そのときいただいた「スカイラインTシャツの生産」に対する感謝状の写真を送ったら、すぐに日産の広報担当から連絡がありました。スカイラインユーザー向けの記念誌を作るのでお父さんの話を記事にさせて欲しいという依頼でした。記念誌は50万部無料で配られました。
その後、私がある取材を受けたときにこのTシャツがちらっと映りました。ファンはすごいです。すぐに電話があって、2週間後に歴代スカイラインが工場に集まるイベントがあるのでTシャツを復刻して欲しいと言うのです。日産が簡単にライセンスを下ろしてくれて、簡単なスクリーンプリントで作りました。そのTシャツを10枚単位で買って行くファンをみて、日産側から完全復刻しようと提案がありました。ところが現物がありません。そこで、ケンメリTシャツ復刻プロジェクトをスタートさせ、メルマガでTシャツを探したところなんと5万人が見に来て、持っている人が6人いたのです。日産の勧めで、糸から染屋さん探しまでの七転八倒のプロジェクトを全て書きました。4月に発売になった瞬間に全て売り切れでした。
このように、今は、商品開発の過程のドタバタをブログやTwitterで書いた方が良いのです。下請けを隠すような時代ではないのです。商品の発売をカタログに載せて商売するのは皆さんのメインだったと思いますが、その前にプレイベントとして買う気にさせなければならないのです(図29)。そして、皆さんが買った感想等をネットから集めて溢れさせます。
例えば、日産にはティーダブログというものがあって、ティーダに関することが、良いことも悪いことも統一的に読めるようにしてあります。これが購買意欲をそそります。格好がいいカタログだけではだめです。アマゾンでは売れ行きはレビューの数だそうです。悪口が書いてあると消してしまう場合がありますが、それは関係ない、レビューの数です。お客様は自分にとって良いか悪いかをちゃんと判断します。
(図29)
昔は、大先生がいてそこにみんながぶら下がっていました。今は、一個人が面白い情報を流せば、勝手に繋がってきます。直接繋がっている人が1000人だとしても、印刷業界の人が1000人いれば、1000×1000になります。
2004年に「メール道」という本を出しました(図30)。ハリーポッターに続いて、なんと売上げ2位になっていたのです。無名の私がです。ネットで検索したら、頼んでもいないのにみんなが口コミしていました。すごいと思いました。
(図30)
新聞や雑誌が売れないのは、暗い情報しか書いてないからです。でも、2割くらいは良いことをやっている人はいるはずです。そこで、私が理事を務めている日本財団のCANPANセンターが、良いことをやっている人たちの実名記事を表彰する「CANPANブログ大賞」というものを始めています(図31)。
(図31)
娘さんが小児ガンになって辛い思いをしたお母さんが、「理想の病院が作りたい」と叫んだら1年間で1億円が集まりました。また、日本には文科省の制限があって手話の学校が作れません。それはおかしい、手話の学校を作りたいと願う人がいたら、7500万円が集まり1年後に実現しました。報道されてはないのですが、明るいことをやろうというエネルギーも働いているのです。こういった人たちが私たち中小企業の味方です。是非、CANPANブログを見てください。
元ニューヨーク市長が作ったブルームバーグという機関投資家が日々みるサービスがありますが、そこと日本財団が提携しています。要は、企業が正しいことをやっているかどうかの通信簿を作っているわけです。正しいことをやった企業の株価が長期的に上がるという法則は証明されています。良いことをやることとお金儲けとは関係ないと思うかも知れませが、みんなが明るくなることをやっている人がネットでは注目されていくでしょう。
私は、明治大学で授業をしていますが、学生たちにネットで行商しろと教えています(図32)。
(図32)
ところが、私がショックを受けたのは今の子どもたちに好きなことがないことです。そして、地道に続けられないことです。私の授業は60名のうち10名しか残らない授業ですから、残るのはオタクです。日本の宝はオタクだということが分かりました。そういう学生は、コミュニケーションが苦手で人と目を合わせることができないのですが、思い切ってブログで発信してみろと言うと恐る恐る始めます。オタクがオタクを呼びますのでフォローがついて、褒められて、半年で別人になります。社員を採用するときに「面接の達人」を読んでいて面接で愛想のいい子を採ってはダメです。そういう人のために書いた「「すぐやる!」技術」が15万部も売れてびっくりしています(図33)。
(図33)
ブログもTwitterも同じですが、三文法が大切だと思います(図34)。
(図34)
宣伝のことばかり書いているのを見たら嫌な感じがします。かといって、自分の商品についても書かなくてはなりませんから、3分の1ずつが良いバランスです。次の3分の1は、尊敬する人やものについてですので、皆さんのクライアントについて、私のお客様はこんな素敵なものを作っていますと紹介すればいいのです。とても喜ばれます。残りの3分の1は自分の趣味について書いてください。さらに、自分が100回アピールするよりも100人の仲間に1回ずつ書いてもらう方が効果があります。Twitter、ブログ、YouTubeの使い分けは図35のバランスが良いでしょう。
(図35)
そして、P.F.ドラッカー示したオーケストラ経営で、社員全員でブログやTwitterでつぶやく時代になります(図36)。
(図36)
真ん中で広報部門がYouTubeを貼り付けて楽譜をめくるように、こんな商品を始めましたとつぶやきます。そして各部門が、企画でこんな苦労した、作るのにこんな苦労した、とそれぞれ違うことをつぶやきます。さらに、社長は指揮者ですから、製造部門はこんな苦労してくれた、お客様はこんなに評価してくれたと引用すれば良いのです。そして、問い合せ窓口や買い物籠に、みんなが100人ずつ引っ張ってくるのです。これが中小企業のスタイルです(図37)。
(図37)
2004年から社員全員がブログを始めました。最初は社員に嫌われました。しかし、そのうち習慣になり、お客様から褒められるようになっていったのです。
(図38)
それまではただの出入り業者ですから、納期を守れとか、もっと安くと言われていたのです。それがお客様から、「うちを紹介してくれてありがとう」と言われるようになるわけです。
ブログを3つ書けるようになるとメルマガが出せますので、年賀状をやめました。お年賀メールにして無理矢理に名刺入れのアドレスを登録させました。1年で劇的な効果が出ました。多い社員になると1200人にメルマガを配信しています。1200人に電話やDMは出せないです。そして、今年から全員が本格的にTwitterを始めました。メルマガの編集長は、高卒で経理担当で入ってきた現在22歳の女性社員です。皆さんの会社にもそういう女子がいるはずです。発掘してください。
私共は、アマゾンでTシャツを10枚作ってくれれば誰でもクリエーターになれるというサービスをしています(図39)。
クリエーターはイラストレーターにTwitterやブログを教えています。売りたかったら自分でつぶやかなくてはなりません。そして、お互いがつぶやいて紹介し合うのです。
(図39)
要は、どこでもドアをいくつ作れるかです(図40)。これからネットで強い人は囲碁が強い人だと言われています。日本酒が好きな人、書道家と仲がよい人・・・色々なところに石を置いて全部繋げて行くのです。
(図40)
今こそ、Twitterを始めてください。私は、すぐやるシリーズの3作目を書いていますが、原稿を書いたらすぐにブログに全公開しています。そしてTwitterで、また1つコラムを書いちゃったとつぶやいて、メルマガでも告知しています(図41)。
(図41)
極論すれば、ブログを見れば本を買わなくても良いのです。しかし、公開して欲しいと言ったのは出版社です。こういうやり方の方が売れるからです。ネットで無料で公開した方がベストセラーになるのです。「「すぐやる!」技術」も発売前に全公開して15万部売れています。
質問:本を公開した方が売れた理由は。
久米氏:色々な説があります。ネット経済はギブアンドギブ経済だと思います。内容を分かっていても役に立ったから買おうとか、買わないけれど口コミしなくちゃという気持ちになる人が多いのです。もちろん、タダでもらい!という人もいます。しかし、どちらが多いかといえば、その恩に報いたいという人の方が多いように感じます。先程の「北風と太陽」もギブアンドギブの世界だと思います。私が先にやりましょう、紹介しましょう、タダでやりましょう、という姿勢の方がお客様が来るのです。
シンクロニシティ(Synchronicity)という言葉をユング心理学でご存じかと思います。色々なご縁に恵まれるということです。銀座でお握り屋さんや新潟で甘酒屋さんをやって成功している人が、成功した理由を縁に恵まれたからだと言っていました。儲けのことばかりを考えていたときは全然縁が広がらなかったけれど、お百姓さんや地元の人のことを考えるようになったら広がったと話してくれました。どうやら、リアルもネットもそういった気持ちになるとネットワークが広がるのかなと感じているのです。
質問:ブログやTwitterを始めるときに、失敗してしまうのではないかと考えたりします。書いてはいけないこと等ありますか。
久米氏:コツは校正しないことです。校正をし始めたら出せなくなってしまします。誤字脱字は当たり前です。「申告所得」を「深刻な所得」と書いてしまったことがあります。多少のご愛嬌があった方が面白と感じたり、親しみを感じます。
クライアントとネットワーカーは違うと考えた方が良いのです。完全ではなく不完全で良いのです。先程のスカイラインの件も厳密な人であれば絶対にやらない企画です。Tシャツを持っている人がいなかったら果たしてどうなったのか。糸を作っている人がいないなんて、やり始めてから分かったのですから。不完全な情報がライブに動いて育っていくことに皆さんが共感するのです。
もう1つ、ネットの大鉄則があります。「助けて!」と言うことです。宮城のくりこま高原自然学校を運営している人が、一昨年、KANPANブログで賞を獲りました。その人は、最初はいい加減にブログをやっていたのですが、そう言っていられない事態が発生しました。地震です。隔絶されたのです。携帯電話しか繋がらなくて、携帯電話で、「助けて!子どもたちがこうなっています!」と発信したら、日本中から救助の人が駆けつけて、自衛隊より速く到着してしまいました。車を持って来る人、NTTと直談判してネット回線を持って来る人。
これがネットのお互いさま経済です。完璧を作ると誰も助けてくれないです。推敲に推敲を重ねるほど、顔が見えない暖かみのないものになるような気がします。「MAINICHI RT」の件でも、もっとゆるいものが欲しい、みんな真面目すぎ、文章が上手すぎ、と記者が学生にリクエストしていました。特に男性は緊張して書きますが、ゆるい文章を書いた方が良いのです。いわゆる、飲んでいるときの話で良いのです。頑張ってください。
(終了)