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成果を挙げるWebの構造を理解する~ネットマーケティング(3)
実践的なコンバージョン向上の考え方を学ぶ~
株式会社エフ・コード
取締役マーケティング責任者
荒井 裕希 氏
サイトにユーザを集めてさらに良い効果を出すためには、集客した後に、理想とするアクションをどのようにユーザにとらせるのかが重要になります。その1つのアプローチがEFOです。EFO(Entry Form Optimization)とは、すなわちフォーム最適化です。問い合せや会員登録等のフォームが使いやすいものでないと、本来、獲得できるはずのユーザを逃してしまいます。EFO の目的は、フォーム完了する人を増やすことです(図1)。会員登録させたい、購入させたい、サービスの問い合せをしてもらいたいというようにフォーム完了の狙いは様々です。
(図1)
自社のサイト、商品やサービスの存在を知ってもらってサイトへ誘導する施策がSEMやSEOです。ユーザのニーズに合わせて、これが良いのではないですかと提示する施策をLPO、あるいはレコメンドという言葉で表現します。まず、SEMやSEOでサイトに入ってもらって、ユーザのニーズが現われる検索キーワードに合わせてコンテンツを出す。これがLPOです。そして、ページを見せた後に、サイト運営側が理想とするアクションをユーザにとってもらうため、出口の部分を最適化するのがEFOです。
LPO(Landing Page Optimization)は、ランディングページの最適化です。ランディングページとは、すなわち着地するページのことです。検索をしてクリックしたらトップページへ飛ぶというものが非常に多いのですが、リスティング広告の場合、検索してきたキーワードによって誘導するページを変えます。リンゴが欲しいと探して来る人には八百屋さんのトップに誘導するよりも八百屋さんのリンゴのページに直接誘導した方が良いわけです。
Web担当者フォーラムの調べによると(図2)、Web担当者のニーズの第一はアクセスアップです。
(図2)
狙いとしては間違っていませんが、サイトに人がたくさん来ればそれで良いということではありません。結果的には会員数が伸びていない、問い合わせが増えていない等、理想とするゴールにはなっていないのです。EFOをおすすめするのは、フォームに関して何らかの施策や工夫をしていないケースが多いからです。ですから、アクセスアップからもう一歩踏み込んだ形でゴールを設定しなくてはなりません(図3)。
(図3)
サイトの目的やゴールを明確にした後は、数値を高めるべきポイントを特定します。最終的にコンバージョンを増やすための方程式をフォームということに焦点を当ててみると図4のようになります。
(図4)
検索ボリュームは、世の中で探している人がどれだけいるかということです。リンゴという検索キーワードを100円の入札単価で設定していても、100回の検索で100回広告が出るとは限りません。検索されている全体の回数に対して自分たちの広告が何回出たのかというシェアの割合が、次のインプレッションシェアです。クリック率は、100回のうち50回表示されたとして、その50回のうち何人のユーザが広告をクリックしてくれたのかということです。そしてどれくらいの人がフォームに辿り着いたかというのがフォーム流入率です。そのフォームにて最終的にどれくらいフォームを完了してくれるのかというフォーム完了率です。これにより、コンバージョンの数字が決まります。100人が広告をクリックして、そこからフォームに入る人が30%で完了した人が10%ならば、最終的には3人ということです。
フォームの完了率が低いサイトが多く、「何の手も打っていなかった」とか「気にすることもなかった」というケースもあります。フォームの完了率が1%にも満たないサイトの会社は、6割~7割がサイトの工夫をしたことがないとのことです。図5の例において、フォーム流入数がEFOの前後で同じだとします。工夫してフォーム完了率が0.5%から1.2%に上がったとします。大した上昇ではないと思われるかも知れませんが、結果的には非常にインパクトがあります。
(図5)
EFOはそれほどお金のかかる施策ではありません。様々なツールがありますが、月に1万円~3万円で導入できます。ツールを使って最適化した後、外してしまうこともできます。月に1万円~3万円で2~3ヶ月利用した場合、10万円にも満たないくらいの費用でフォームを改善することができます。フォーム流入数が同じでもコンバージョンが2倍以上になり、1コンバージョンを獲得するコストであるCPA(Cost Per Acquisition)については半分になります。一度最適化してこの辺りの数字が良い頃合いかなというころでツールを外せば、EFOの前後で費用対効果が大きく変わることになります(図15)。
(図6)
個人向けの金融商品、FXや株等を扱う金融業界のフォームは非常に優れています。例えば、株のサービスを提供している会社の場合、ユーザ側は多くの情報を入力しなくてはなりません。生年月日、住所、職業、年収等々、とくかく項目が多いのです。しかし、必要な項目ですので、入力してもらうために非常に細かい工夫をしています。不動産もまたしかりです。その辺りをご覧いただくと、参考になるかと思います。
必須項目を入力漏れしていた場合に、確認ボタンを押したらその項目に戻されることが通常です。しかし、最適化しているフォームであれば、半角英数字で入力するべきとことを全角で入力したら、その時点で入力エラーを教えてくれます(図7)。入力フォーム関連で遷移する際に1つアクションが減るだけで、20%~25%の離脱を防げると言われています。
(図7)
図8もEFOの工夫の1つです。電話番号を大きく明示したり、フォームのプロセスを明示する場合が増えてきています。メールだけが良い人もいれば、電話して直接聞きたいという人もいます。
(図8)
また、プロセスが多いと途中で離脱してしまいます。入力時間の目安が表示されたり、どのくらいのボリュームなのかが分かればユーザも安心します。以前、女性の求人が多い業界のサイト運営のお手伝いをしたときに、携帯サイトに職歴等を入力する目安が1時間と表示したことがありました。そのためそのフォームを止めて、電話でのヒヤリングや紙に記入して郵送してもらう方法を試したら結果的に登録する人の数が増えました。時間を表示したりプロセスを明示するのも中身が大切です。ユーザ心理を研究して良いフォームを作ることが重要なのです。
次は、フォーム完了するメリットを訴求するということです(図9)。
(図9)
弊社は、オンラインの見積もりをやっています。オンラインの見積もりをやっているシステム開発の会社はそれなりにありますが、多くの場合、概算で一式何百万という見積もりになり分かりにくい。何にいくらかかるかを具体的に細かく知りたいというお客様が非常に多いです。そこで、弊社はその部分を訴求してみようということで、明確で具体的な見積もりを出しています。「このフォームに入力していただければ細かく仕分けて何にいくらかかっているのかが分かります」というメッセージを入れています。さらに「ご記入後は1営業日~3営業日のうちに返します」と明示しています。具体的な明細が、早ければ1営業日で返ってくるわけですから、割と早い対応になります。こういったメッセージを入れてから、数字は上がっています。わずかな労力でフォーム完了率が1.2倍ほどになります。
また、1日に少しの時間でもよいですから色々なフォームを見てみてはいかがでしょう。金融系、不動産系、弊社のようなサイト作るサービスを提供している会社のフォームを見てみると工夫が分かります。EFOは、ツールを導入すればそれで良いとお考えの方もいます。しかし、ツールはデータを取る部分だけです。そのデータを受けて、こういうメッセージを入れたらどうかとか、項目の順番はどうかと、ひとりひとりが知恵を出して進め、またデータを取ってはやりなおして進めていくという必要あります。ですから、ツールを導入してEFOは終わりというものではありません。オリジナリティのある工夫をしていく必要があるのです。
EFOのアプローチは2つあります(図19)。
(図10)
EFOツールでは、フォームの項目ごとの離脱率が見えます。ある項目で100人から30人に急に落ちた場合、この項目は何か変だと、その客観的な数値を見て分析できます。項目ごとにどれだけの人が離脱してしまったのかという数字は、一般的なアクセス解析のツール、例えば、Google Analyticsでは見えてこないところです。人力については、アクセス解析にてデータを見て改善するということも1つの方法です。しかしフォームに100人が入って完了が20人ということだけで、分析としては粗いものになります。
ツールによるアプローチをもう少し細かく見ていきますと、まず、項目ごとに離脱率やエラー率を測定します。この2つの割合がとても重要になります。入力しづらい、分かりにくいといった理由で離脱する。または入力してもエラーが起きてしまうということです。エラーにより完了率が大きく変わります。エラーが起きるということは「こう書いて欲しい」ということがうまく伝わっていないということです。
(図11)
離脱率が非常に高い項目があった場合、それが絶対に必要かを検討することも大事です。フォームは完了させる部分なので情報を取れるだけ取ってしまおうと項目をたくさん設けている場合が多いです。しかし、社名、名前、メールアドレス、電話番号が分かれば充分なケースもあります。役職や会社のURLを入力してもらう必要があるか検討しなければいけません。会員登録してもらった後にその情報がないとこちらがアクションできないことなのか、を再考することは離脱率が高い場合には必要です。
入力しづらい (問いが分かりづらい)ということは、「質問されていることの意味が分からない」であるとか、「AかBを選ぶという質問だけれども私はCと書きたいのでその他を記入するところが欲しい」といったことが推測されます。また、入力規則が分かりづらくてエラーが出てしまうことも多いです。半角入力なのか書いていない、電話番号を入力するのにハイフンが必要なのかどうか書いていないなど、ほんの少しの工夫がされていないだけでユーザが他のサイトに行ってしまい、ビジネスチャンスを逃します。
今日できるEFOの第一歩!自社サイトにフォームがあれば、その再点検をしてみましょう(図12)。項目を減らしたり、並び順を変更したりといった検討をします。
(図12)
最近の傾向としては、会社名、氏名、電話番号等の個人情報の入力が先にくるケースよりも何らかの問い合せ内容を先にもってくるフォームの方が多いです。やはり、プライバシーポリシーの部分で個人情報をやたらに出すのは敬遠する傾向がありますので、気楽に入力できるお問い合せの内容や、チェックボックスを入れる、プルダウンのメニューでどこかを選ぶということをフォームの上にもってきて、それから個人情報を入力してもらうケースが多いです。
ページの遷移が必要かということですが、1つのアクションがあるごとに20%が離脱すると言われています。ですから、可能な限りページを変えるというアクションは減らした方が良いです。何の疑いもなく、入力→入力内容確認→完了としているのならば、それが本当に良いのかを再考する必要があります。
フォームを全く見直したことがなければ、とても大きなチャンスがあります。電話番号を1つ入れるだけで、数字が大きく変わる可能性が充分にあります。その第一歩は自社のフォームの見直しからです。必ずいくつかのポイントがありますので、そこを変えるだけで流入の数字が同じでも最後のコンバージョンが2倍になるわけですから、やる価値のある施策だと考えます。
サイジニア株式会社
専務
吉村 真弥 氏
コンバージョンを考えるときにまず必要なのは、「人はなんのために買うのか?」ということです。リアルビジネスのシステム構築とって、そもそもなんのために買うのかということに着目しないと、採用すべきツールや実行するオペレーションを考えられないので、さらに深掘りして考える必要があります。
そもそも買うときの前提として、何かが不足しているといった不安な状態がユーザの中にあります。例えば食事を例にすると、お腹が空いているから食べるわけです。また満足したい、さらに安心したいという部分を突き詰めていきたい人もいます。こういう場合はさらに相対的になって、不安な誰かを見て安心する自分がいるということもありますし、逆に満足した誰かを見て不足していると思う自分がいることもあります。
つまり、人はなんのために買うかといえば、購入後の未来のイメージで買うということです。本が良い例です。実際に読んだ後に買うわけではなくて、本のタイトルだけで思わず衝動買いしたり、買っただけで読まずに満足してしまうこともあります。化粧品や服も然りです。これを一般化すると、行動原理は常に以下のように表現されます。
購買欲求=(未来)-(現在) かつ 購買欲求> 0
後は、金額によって決まるわけですが、そのときに重要なのは「未来は結果ではなくて予想の上で成り立つ」ということです。買ったものが良かったかどうかは、次の現在になります。痛い目にあったから次は買うのをやめようとか、良かったからもっと買おうとなるわけです。
そうなると、良いイメージを考えなくてはなりません。基本的にヒト、モノは自分のことを自分で知ろうとしてもなかなかできません。ですから、自分を知る者から自分を知る、自分を知るモノから自分を知ることになります。それによって自分のイメージを知るわけです。その材料は、友達だったり、iPhoneの地図データで自分の行動を知ったり、携帯電話の変換履歴を見てどんな傾向の人か見たりできます。
自分のイメージが分かったら、次はイメージをさせます。これは、広告の広告たる所以になります。相手に、自分について良いイメージをさせて、そして(広告の意味である)広く告げさらに何回も告げる。それによって、人を動かして操作します。つまり、誘導してものを買ってくれる方向に導くわけです。
では、実際に良いイメージとはどんなものでしょうか(図1)。情報系の世界で言えばそれは価値情報です。
(図1)
新規性、独自性、そして嗜好性です。新規性の例として有名なのはTwitterです。正しいかどうかはさておき、その人しか知らない情報が出てきたら、それは非常に新しいということになります。独自性ということでは、クックパッドがあります。料理のレシピで他にはないものがあるからクックパッドに集まります。幅広い議論がありますが、今回は図2の嗜好性に絞ってお話をしたいと思います。嗜好性とは、類似性や相性に近いものになります。
嗜好性は、全く違うタイプが寄り添うというよりも自分に似たものが寄り添うというイメージです。「類は友を呼ぶ」という言葉が示すように、この考え方が信仰のようになっています。類を知るためにはデータ活用の流れがあります。基本的にデータを何かしようという動きに関しては、類を見つけるという作業がほとんどです。
レコメンデーションとは、サイト内で嗜好性のありそうなコンテンツをおすすめすることです。行動ターゲティングに関しては、サイト内におすすめを作るのではなくてサイト外で嗜好性のありそうなクリエイティブで広告するという方法です。例えば旅行サイトでは、沖縄旅行の広告を出す場合、どこのサイトに出しても良いということではありません。新聞に経済記事を求めて来ている人に出しても意味がありませんが、実際に旅行サイトでどこに行こうか検討している人たちに表示すれば沖縄に反応しやすいです。これも相性が非常に重要です。基本的なサービスの導入方法としてはどちらも同じです(図2)。
(図2)
JavaScriptをサイト内に配置して、人の相性や動きをひたすら計測します。それによって、おすすめを表示したり広告を貼ったりします。また携帯端末などのモバイルでは一部にJavaScriptが動かないという制限がありますので、少し特殊な方法で実装する必要があります。
嗜好性の導出としては、基本的には情報を集めれば集めるほど価値を生みます(図3)。
(図3)
まずは、なんの商品なのか、記事なのか、自分たちが作っているコンテンツの情報です。そして、ユーザのプロファイル情報として、年齢、性別等です。それから、インタラクションです。その人がものを購入したとか、カートに入れた、あるキャンペーンに反応した等の情報になります。次は、行動履歴です。誰がいつどこで何を見て行動したのかというようなアクセス解析よりもさらに知ろうとする動きが最近は出てきています。こういったものを積み上げてさらに上位の良質な情報として、レコメンド情報を作ります。レコメンドを作るということは、おすすめ情報のさらにおすすめ情報というようにどんどん多層的に高度化します。このように扱う情報が多いほど、計算が複雑であるほど当然、システムの負荷もかかります。
基本的にベースとなる考え方は、「アナタの好きなモノはワタシも好きかもしれない」という先程の類は友を呼ぶという同じ思想に基づいています。図4のように、お菓子に反応している3人の方がいて、例えば、赤いもの、小さいものに反応しているようだということから、能動的に固まり(クラスタ)を抽出します。その抽出した固まりが好きかどうか、つまり正しいかどうかは、また他人の動きから自分にフィードバックされることになります。このようにモノからおすすめされるというシステムを作れます。
(図4)
もう1つ進んでみると、「ワタシに似ているヒトは友達になれるかもしれない」という考え方があります。友達になれるヒトなら、好きなモノも似ているかもしれないということになります。例えば先程の3人は多分友達になれるだろう、相性が良いであろうということを見つけ出して仮想的なコミュニティとして抽出します。そして、その人たちの好きなものから、さらにおすすめするともっと良いかもしれないと考えるわけです。
嗜好性にまつわるテクニックについていくつかご説明します。1つ目は、熟知性の法則です。これは繰り返し見せると、つまり接触が多いと好感を持ちやすいということです。サイトを移動しても繰り返し見せると知らず知らずに意識してくるのです。2つ目は、シンクロニー(同調)です。これは嗜好性そのものとして、他の誰かが好むモノを好むという方法です。3つ目は、ブランド効果です。他には手に入らない希少価値や、限定品に人は弱いということを利用した効果です。
4つ目は、あまり注目されていませんが、私は価値あると実感しているスリーパー効果です。これは時間とともに情報の信憑性が上がってくるという考えです。過去の話をある一定の時間が経ってから思い出してみると、すごく重要に思えるということです。そのときに意味がないと思っても、まずは伝えるという努力は無意味ではないと思います。5つ目は、傍観者効果です。自分が傍観者であるときはあまり興味を示しませんが、「あなただけに」ということにすると非常に興味を引くということがあります。6つ目は、バンドワゴン効果。人はやはり売れ筋に興味を示します。これがバンドワゴン効果で、ランキングが効果的であるという重要な前提になります。7つ目がアンダードッグ効果です。私は、逆に売れてないゲームや人気がないゲームに興味を持ちます。不評も人気の一つであり、だからといっても売れ行きが悪いわけではないことも多いのです。
このような動きを関係性から導き出すのがレコメンデーションです(図5)。
(図5)
図5のLさんに対して、Jさん、Kさん、Mさん、Oさんあたりが知っている範囲だとしても相性はちょっと離れた固まりにあったりします。ボトムアップにリンクの構造を変えてサイト全体を活性化するようなものが基本的なレコメンデーションの性質です。これを実現するのは結構大変なシステムです。コストは高くなってしまいましたが、そのぶん、かなりの効果を発揮することがあります。
あるECサイトの事例で、人の移動を表すデータをみるとレコメンデーション導入前は非常に過疎化していることがわかりました。台所用品を探してきたら台所用品だけを見て帰ってしまうからです。レコメンデーションを導入すると、かなり活性化します。ひとつの商品から別の商品へとさらに見ていこうという動きが増えました。
しかし、レコメンドは万能というわけではありません。弊社が50社ほどみてきた中で、実際にPVが上昇していくときのトレンドとしてレコメンドの効果があったかどうかについて分析してみました。すると業界別では、デジタル通販は大変伸びましたが、価格比較サイトは効果がありませんでした。価格比較サイトは、同じ商品でどこが安いかで買おうとしているのであまり他のものを見るモチベーションがないわけです。一方、会員制DVDレンタルなどは月額サービス料金、つまり価格が一定なので、購入コストが低く、より嗜好性が出やすいということだと考えられます。また成長していくWebサイトの構造の他の要因としては、リンク数が多ければ多いほど伸びないということもわかります。導線があればあるほど、人は意識が散ってしまいます。ですからリンク数は少ない方が良いのです。
同じように行動をターゲティングしていくに当り、ユーザがどういった傾向を持っているのかを考えます。広告と相性がよいサイトを探すために、広告に反応してくれるユーザの特性について考えてみます。広告を踏む前にユーザが何をしていたのかを見ると、動画、音楽、ストリーミング、検索エンジンを使っている人が多いです。つまり、ものを探す行為をしているからこそ広告にも意識がいくということです。逆にものを探す行為をしていないオークション、SNS、辞書等のサイトでは広告を踏むことは少ないようです。つまり、広告と相性が良いのはECサイト、検索エンジン。悪いのはSNS、ニュースという調査結果です。このようにフィードバックがとても重要になってきます(図6)。
(図6)
弊社ではビへイビア(振る舞い)と呼んでいますが、Webサイトに対して人がそれをどう見ていくかを分析していくと組織化、クラスタ化されて、それを返すことでさらに活性化していきます。このメカニズムはとても重要で、伸びているサイトはフィードバックを続けてやっています。実体験としては、良いサイトほど新規開発コストよりも維持運用コストにお金をかけていることが多いです。
短期的な成果として、たくさん連れてきて購入に結びつけるということは定量的に把握可能です。大体はコストに応じた結果になり、見えやすい成果になります(図7)。
(図7)
これをずっと続けていくと深みが出てきます。レベニューというものは、やはり使い続けてくれることとブランド、顧客の満足度に関係してきます。長期的には、定量的では無理ですので定性的な視点が重要になります (図8)。
(図8)
国内に限れば、売上高IT予算比率は下がりつつあります。多くの企業が売上高の3%弱をIT投資に回していますが、売上高が上がらなければ、システム開発費も絞られるという現状です。一方、ネット広告については、売上高広告予算比率は業種によりバラツキがありますが業種により違いは大きいですが平均2%くらいです。そしてネット広告は、効果が透明化していて多様化しているので、工夫次第では良い方法があるのではないでしょうか。これからどうしていくのかが非常に難しいところですが、私は嗜好性をキーに考えるべきだと思います。Twitterになることは無理ですし、新規性や独自性の面でもここでしか売っていない商品というものもなかなか難しいと思われます。そのようなとき、嗜好性をキーに考えれば、解決策が見つかるのではないでしょうか。
不況の中、確実な利益を出し続ける、とあるコンビニ経営者の名言を紹介します。
「ものを買うことはいつも小さな喜びである」
今まで述べてきたように、良くなるために買うわけなので逆説的には、小さな喜びとは基本的に変化の中に存在していることになります。変化しないで喜ぶことはまずありません。そのときに大事なことが、類は友を呼ぶということです。友は基本的に喜びをくれるものなので、類を知ると喜びも呼べるということになります。嗜好性によるコンバージョンの基本原則はこのあたりにあるのではないかと思います。
以上、私のメッセージが皆さんのお役にたてるなら幸いです。ありがとうございました。(ご質問等がありましたら
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