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表面加工は、印刷物の美的価値の向上と耐久性を高めることを目的としている。最近ではさまざまな技術が開発され、選択の幅が広がっている。
表面加工は、光沢感や高級感を高めて印刷物の美的価値を向上し、耐久性を高めて印刷物の表面をキズや汚れから保護することを目的としている。最近では光沢感にもいろいろなパターンが開発されており、選択する幅が広がっていて書籍や雑誌の表紙、ポスター、パッケージなどあらゆるジャンルで活用されている。
加工方法は、フィルムなどを貼るラミネート法と合成樹脂などを塗布するコーティング法に大別される。以下、それぞれの方法について解説する。
ラミネート法
●フィルム貼り
PP(ポリプロピレン)フィルムに接着剤を塗布した後乾燥させ、約100℃前後の熱シリンダーで熱圧着によって紙と貼り合わせる。フィルムメーカーによっては、あらかじめ接着剤を塗布したものを市販していて、それをラミネーターで熱圧着のみで貼り合わせるサーマル式もあり、最近ではこちらの加工方法が主流になっている。
印刷面を汚れやキズつきから保護するだけでなく、加飾性にも優れている。グロスとマットの2種類があり、印象が変わるので注意して選択したい。また、PPだけでなく、より透明度が高く耐久性にも優れたPET(ポリエチレンテレフタラート)を使うことも可能だ。窓貼りの場合は、窓開き加工した紙に接着剤を塗布してからフィルムを貼り合わせる。
●高輝度ホログラムPP
従来のホログラムPPは、フィルム表面に微細なエンボスを施すことにより光が乱反射することで加飾性を高めたものだが、手脂などでフィルム表面に油分や水が付着すると、微細なエンボスが失われてしまうケースもあった。しかし、近年開発されたこの高輝度ホログラムPPは、透明蒸着層側から表面に向かってより深度の深いエンボスを施すことにより、表面は平らのままであるため、ホログラムの柄が消えてしまうこの問題を克服している。
コーティング法
●ニス引き
ニス引きは、PPよりも印刷面の保護という観点からすると劣るが、オフセット印刷機などでインラインによる加工が可能なため、スピーディで安価に加工することが可能である。パターンによる塗布も可能なので多彩な再現ができる。
●プレスコート
樹脂を塗布した後一度乾燥させ、熱と圧を加えながら、鏡面仕上げされた鉄板に通すことにより加工表面が平滑になり、美しい光沢が得られる。
●フィルム転写
印刷表面にUV硬化樹脂を塗布した上に、エンボス加工を施したフィルムを密着させてからUVを照射してフィルムを剥がすと、フィルム上にある細かいエンボス柄が樹脂に写し取られる仕組みだ。全面加工だけでなく部分的な表現が可能なので、教科書の氏名記入欄などに利用されるなど多様な使い方ができ、デザイン的制約がホログラムPPよりも低いと言える。
また、プレスコートより加工皮膜が硬いので、キズに強く半永久的に光沢感も持続可能だ。
印刷の価値を新たに創造する『プリバリ印』2010年3月号より
http://www.jagat.jp/content/blogcategory/114/402/
執筆者プロフィール
須藤 篤[すどう・あつし]
大日本印刷(株)市谷事業部
ブック・アイデア・センター
1990年大日本印刷(株)入社、市谷技術部に配属。雑誌基準の改訂を受け、雑誌付録や特殊加工が注目され始めたのをきっかけに、付録や仕掛け絵本製作など特殊企画を担当。現在は上製本の装丁や特殊加工など造本に関するよろず相談窓口として、業界動向の調査や技術情報の収集、社内外に情報発信を行っている。JAGAT認定DTPエキスパート。
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