JAGAT Japan Association of Graphic arts Technology


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製本後加工の最新動向

掲載日: 2008年12月10日

高意匠加工はオフセット印刷機のインラインで加工する装置が開発されており、材料メーカーもその設備に対応できる材料の開発も行われ、その製品が市場に見られるようになっている。

書籍市場の現状

最近の書籍市場は長期低落傾向にあるといわれているが、新刊本の種類は増えている。多くの新刊本は店頭に並んでいる時間が短くなり、売れないとすぐに返本される。特に日本のように再販価格維持制度の下ではそうした事がよくある。一方で売れる本は売り切れても本がすぐに補充できないという問題もある。

本に対する要望としてパーソナライゼーションや本来は週刊誌でもデジタル化されることにより最新情報が毎日更新できるようにと、最新情報への需要が強いことがいわれている。

こうした市場動向に基づき出版社および製本現場には様々な要求がある。第一に制作部数をなるべく少なくして返本される率を少なくするための小ロット化。第二に制作期間を短くし、新しい情報を制作する段階で取り込むこと。第三に労働集約型から早く脱却して自動化した環境を作ること。第四に製本の作業コスト・進捗状況をもっと緻密に管理すること。出版社の立場では在庫を最小化し、出版する際の売れ残りのリスクを最小にしたい。という要望がある。

従来の5,000部前後、またはそれを超える部数の製本をするには、高効率の全自動型の高速製本ラインで対応できる。また、小さなプリントショップで扱っているフォトアルバムのような数冊といったものは、オンデマンドの手差しの機械で製作されている。drupa2008出版業界が求める50部から500部というレベルのロットに対応できるシステムの発表がされていた。

市場の要求に対応したシステム

通常の印刷機では、本になる各セクションずつ16ページないしは32ページ立てで印刷をして折丁を作るが、新しく発表された製本システムでは印刷から製本までの一貫システムになっている。これもデジタル印刷機の登場によりシーケンシャル方式で1冊の本を一気に印刷・製本し、次に新たな本を印刷・製本することが可能になった。もちろん、オンデマンドといわれる極小ロットの本も作りたいという要望にも対応できる。

つまり、プリプレスは印刷製本のデータを作り、デジタル印刷機はプリプレスからのデータをダウンロードして印刷データと製本データに読み替える。そして、デジタル印刷で連続的に本を印刷し折機で断裁と折加工を行う。次にコレータで折丁が重ねられ、そこから無線綴じ機に送られて背加工、糊付け、表紙掛け、乾燥、化粧断裁仕上げをして本が完成する。このシステムではライン全体をオペレータ1人でコントロールする。

パッケージに求められる高意匠性

包装とはJISで「物品の輸送、保管などにあたって価値および状態を保護するために適切な材料・容器などを物品に施す技術および施した状態をいい、これを個装・内装および外装の3種に分ける」と定義されている。店頭で商品が並べられているパッケージは、個装の状態がほとんどである。包装は内容物の保護、取り扱いの利便性、情報の提供が3大基本性能といわれている。この性能を引き出すために形態設計・意匠設計・材料設計の3つ要素に基づいて設計される。設計で、どのような材料を使うのか決めた後オフセットやグラビアで印刷を行い、カッティング・ムシリ・製函工程・貼り工程・セット加工等の工程経て仕上げられる。

通常、パッケージを光らせたり凹凸を付けるという付加価値を付けるには、箔押し・フィルム貼り・プレス加工・UVコート加工・エンボス加工・パール加工などが施される。こうして製造されたパッケージが得意先の工場に納入され製品が充填される。その後、各店頭では多くの商品が並ぶ限られたスペースの中に置かれると、商品の魅力が埋もれてしまう危険性を孕んでいる。そうならないためにもパッケージには意匠性が求められ、購買者・消費者の注目を促しさらに興味・関心を持たせる仕掛けが必要である。

各メーカーからは毎年何百種類と新しい商品が出されているが、消費者のニーズが多様化しているためロングランの商品を作るのも至難の業であり新製品の寿命も短命化している。商品には店頭でひときわ目立つ個性的なアピールが必要である。したがって、アイキャッチ効果、つまり注目を引いて消費者にサプライズを提供するために自らアピールするパッケージが求められている。パッケージ表面に高意匠を施すことはその商品の魅力を最大限に引き出しその商品のリアリティ感を伝える効果を担っている。

多様な手法を組合わせて視覚・触感を刺激

パッケージは大量に生産できて他の商品との差別化を図り、消費者の購買意欲を喚起させるような機能が付与されている。例えば、箔押し・エンボス・金銀等の他にさまざまな意匠表現や加工方法が開発され実用化されている。高意匠加工を施すことはデザインイメージの表現のアクセントさらにはその商品の世界観を表現する重要なアイテムとして位置付けられる。

表面加工による高意匠は買い手の感性へ訴求することである。通常、人間には五感があり、嗅覚、味覚、聴覚、視覚、触感がある。パッケージでの高意匠は光沢をつけたりざらつき感をもたせたり、視覚と感触に訴える表現手法がほぼ全てとなっている。 例えば、グラビア印刷で輝度系のメタリックインキを用いたり、パールインキを用いて表面にメタリック感やパール調の煌きを付与させることができる。浮き上げや凹ませなど物理的な凹凸を付けたり、オフセット印刷機のインラインで擬似エンボス加工を行ったり、スクリーン印刷でインキを厚盛りして表面にざらつき感を付けることもできる。箔押し加工は通常の金銀やカラー箔の他に箔押し版に微細なエンボスを施すこともできる。

パッケージはUVインキで印刷を行うことが主流となっており、インラインコーターを設備したオフセット印刷機をほとんどのパッケージメーカーが保有している。その光沢加工にはUVコートニスが多く用いられている。また、ホログラム調のフィルムを使用することにより、ホロのエンボスをUVコートニスに転写させる加工や、UVコートでマットニス加工をインラインで行われている。

その他に、フィルム貼り加工で、PPフィルムやPETフィルム、アセテートフィルム等を基材に転写させて独特の光沢感を再現できる。さらに商品に合わせて蒸着フィルムを作成し、その商品のイメージを付与する基材を作ることもできる。こうしたパッケージは、各種表面加工のコンビネーションが主流となっている。

高意匠加工はオフセット印刷機のインラインで加工する装置が開発されており、材料メーカーもその設備に対応できる材料の開発も行われ、その製品が市場に見られるようになっている。

「2009 グラフィックアーツ機材インデックス」より一部抜粋

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