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2010年はいよいよ新聞業界のターニングポイントに・・・・・・
新聞各社は新聞紙を作るのではなくニュースを売る会社へと変わりつつある。
新聞業界、3つのショック
新聞業界に転機となる3つのショックがあった。1つ目はリーマンショックと2010年に入ってからのギリシャショックによる不景気で、各新聞社の広告収入が減少したことだ。2つめはメディア王ルパート・マードックによるコンテンツ有料化ショックだ。インターネットの普及に伴い情報が無料化してきたが、情報が再び有料化に向かっている。3つめはiPadショックによる電子化の波だ。2009年、新聞発行部数は-2.8%と過去最大の落ち込みを記録した。部数にして約100万部減ったため、これは北海道新聞や西日本新聞といった地方の有力紙がなくなったくらいのインパクトであった。一般紙は1.9%減だが、スポーツ紙が4.8%減と特に大きく減っている。
新聞の広告費は19.6%の大幅減少で6739億円に減り、7069億円に増えたインターネットにとうとう抜かれた。
経営合理化に努めるわが国新聞各社
ピークだった2000年、新聞の広告費は1兆2500億円あったが、毎年おおよそ500億円ずつ減り続けてきた。2000年は新聞業界にとってひとつの転換点だったと言えるだろう。
そして新聞の発行部数や売上高は、2005年から減り続けている。これはケータイの普及による影響と見られ、2005年もひとつの転換点だった。発行部数と広告収入が同時に大きく落ち込み、前述のように広告費がインターネットに抜かれた2009年も転換点に位置づけられるだろう。
わが国新聞各社は電子新聞による有料化、新聞印刷・配達における他社との連携強化、制作システムの他社とのクラウドによる共有化などにより改革を進め、収入増加と経費削減による収益改善の道筋を模索している。
主要国の状況
ヨーロッパは2000年以降フリーペーパーが躍進し、広告収入への依存度を強めてきていたが、リーマン・ショック以降は廃刊が相次いだ。高級紙「タイムズ」は有料に切り替えた。フランスの「ルモンド」は身売りを発表した。相当に厳しい状況だ。アメリカは2008年まで休廃刊が相次ぎ、休廃刊ラッシュは落ち着いたものの、広告収入の落ち込みが止まらない。アメリカも日本に比べて広告収入への依存度が強かったため、不況の影響が大きい。「ニューヨークタイムス」等の大手紙が有料化への移行を打ち出した。また、新聞各社はiPadでの有料配信に期待を寄せて取り組んでいる。アジアでは、中国とインドが発行部数を伸ばしている。中国の新聞発行部数は世界最大だが、ほとんどが官営から利益追求型に移行中であり、各新聞社が合理化を進めている。韓国はインターネットの影響で定期購読率が36%の大幅減少だったという。
「新聞社」から「ニュースカンパニー」へ
多メディア・多チャンネル発信に対応するため、組織をデジタル時代にふさわしく再編または新設する新聞社が増えている。日経はクロスメディア営業局を新設し、同一部門で紙とネット両方の営業を始めた。福井新聞社は総合メディア開発室とシステム技術局を統合し、メディア・システム局に再編した。秋田魁新報社は経営企画デジタル戦略室、佐賀新聞社は経営デジタル戦略室を新設した。静岡新聞は、新聞の制作技術局・放送技術局・総務局のインフラ班を統合、システム統括局に移管した。新聞各社は新聞紙を作るのではなくニュースを売る会社へと変わりつつある。
プリンティング・マーケティング研究会
2010年6月29日開催セミナー「変わる!新聞ビジネスの動向と戦略」より(藤井建人)