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デジタル印刷は、印刷物に可変データ出力というコンテンツ面の付加価値と、ワンストップ・サービスの生産拠点にとして大きな意味を持ってくる。
drupa2008の最も大きな話題はデジタル印刷機であり、インクジェット印刷機はいろいろな参考出品や技術展示も行われた。今後のデジタル印刷の大きな可能性が示されたと言ってよい。
インクジェット方式が将来に向かって技術的にも、ビジネス用途においてもさらに大きな可能性を期待できると実感した。しかし、ワイドフォーマット印刷機を除くとインクジェット印刷機は参考出品も多く、製品レベルの各種印刷機が揃うのは4年後のdrupa2012になる。開発メーカーにとってはこれからの実質3年間が勝負どころだ。
一方において、ゼログラフィー方式(ドライまたはウエットトナー方式)は技術的に成熟化していて、製品開発の方向は、高速化、さらなるオフセット品質への接近、コストパフォーマンス改善、さまざまな後加工機器との連携、たくさんのビジネス事例紹介などを展示の重点にしていたところが多い。
用紙搬送では連続紙タイプとカット紙タイプがある。連続紙タイプは連続帳票へ文字データ出力とカラー広告を同時に出力するトランスプロモ対応機は60m/分以上の高速出力を実現しており、Kodak Stream(参考出品)、同 Versamark VL2000、大日本スクリーンのTruepress Jet520が注目を集めた。
カット紙タイプの高速インクジェット印刷機は、参考出品ながら、大日本スクリーンTruepress Jet SX、富士フイルムJet Press 720はいずれもA2判対応のシングルパス方式で、毎時1600枚以上の速度で、枚葉オフセット印刷機と同様の使い勝手を実現した。
シール・ラベル印刷市場に向けたデジタル印刷機が、参考出品、新製品を含めて多く、EFI Jetrion 4000、アグフア :Dotrix Moduler、ミマキエンジニアリング IPH-300-L、ミヤコシMUP20V、大日本スクリーンのシール・ラベル機などが登場してきた。
電子写真のカット紙モデルは最も機種が多い。フルモデルチェンジされたHP Indigo 7000 Digital PressはA3判片面4色で7200枚/時と高速化され、Xerox iGen4(参考出品)はオフセット品質と運用コストの25~35%削減を訴求している。コダックの新NexPress、SシリーズはS3600、S3000、S2500、S2100を加えた4機種が登場した。印刷向けの新規参入のリコー新製品Pro C900は毎分90枚と高速である。高付加価値という視点では、キヤノンimagePRESS C1+は5色目でグロストナーを印刷するC1+(プラス)、コニカミノルタ bizhub Pro C65hcからは高色域トナーモデルが参考出展された。
ゼログラフィー方式のトランスプロモ対応機では、富士ゼロックスのXerox 490/980カラー連帳機はドライトナー、フラッシュ定着方式である。Xeikon8000もドライトナーでトランスプロモからシール・ラベルまで幅広い用途を提案しており、シール・ラベル専用としては倍速となった湿式トナーのHP Indigo WS6000 Digital Pressがある。
大型のサイン&ディスプレイは、最近では店舗内の装飾や販促印刷物に利用される用途や、一品生産のテキスタイルや壁紙、またボードなどの硬い素材への直接印刷などの用途が拡大してきた。HPは水系ラテックスをベースにしたインクを新開発し、溶剤系インクの特徴を持ちながら水系であるために防炎性も確保し屋内用途に期待されている。大日本スクリーン Truepress Jet2500UVはUVインクによる乾燥時間の短縮と1台でロール基材とボード基材への印刷を可能にしている。アグフアの :AnapurnaもUVインクジェットであるが、最大幅254cm のXLSなど5機種を揃えてきた。
有版印刷機と無版印刷機を組み合わせた印刷機で、トランスプロモと新聞印刷におけるハイブリッド印刷のデモを行ったのが、ミューラーマルティーニのBF機へのコダックStreamヘッド(1色)の搭載、新聞オフ輪では東京機械製作所のColor Top MINIにKodak Versamark DS6250の搭載などが注目を集めていた。
デジタル印刷は、印刷物に可変データ出力というコンテンツ面の付加価値と、ワンストップ・サービスの生産拠点にとして大きな意味を持ってくる。
印刷会社において現実のものとするためには、Web toプリントから始まって、さまざまな後加工や封入封函から配送に至る印刷付帯サービスの提供を、ITに支えられたビジネスモデルの中で効率良く、独自性を発揮するものとして構築することが重要事項になってくる。