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クロスメディア研究会9月のセミナーでは、デジタルサイネージをテーマに取り上げた。
デジタルサイネージを今後も多大な影響力を保有する情報媒体と捉え、その最新動向や展望、さらにはポスターなど、紙媒体の置き換えニーズにおける成功事例を通し、サイネージコンテンツの効果的な制作とビジネスモデルの提案について考察する。さらに、クロスメディアビジネスを進めるうえで、デジタルサイネージを情報媒体のひとつとして活用し、様々な媒体をクロスさせるデジタルマーケティングという視点で検討する。具体的には、海外含めここ半年のトレンド、リアルタイム+インタラクティブ、ネットワーク配信、などの要素・事例を学ぶ。
講師は、コンテンツサービスプロデューサー 町田聡氏、ピットメディア・マーケティングス株式会社 村山裕輔氏、株式会社オックスプランニング 渡辺剛仁氏、株式会社クロスオーシャンメディア 市原義文氏。
最初に町田氏から、最近の事例について。免税店におけるパンフレットの配布を目的としたサイネージ(オランダ)について、配布印刷物とディスプレイのバランスが絶妙で、そのサイネージが何であるかの目的が瞬時に判別できるためシンプルだが優れていると紹介した。日本の同様な例では、映像を見せたいのか印刷物を配りたいのか目的が不明瞭で、利用者の関心を引かないものが多いとした。
3DAR(仮想現実感)について、ドイツMETAIO社のソリューションを紹介。通常、ディスプレイに商品を映し出すと3Dモデルが浮かび上がるなどのARでは、特殊なマーカーを必要としたが、紹介された事例では画像登録+認識を後から行えるのが特徴で、既製品の販促に使えるとした。
中国では登録制クーポン発券機器が活用されていて、中国に進出する日本企業にも注目されている。2007年からサービスを開始して、現在は350万人もの会員を誇る。ケータイクーポンとは異なり、機器設置場所への集客効果と、サービスを受けられる店舗への送客を同時に実現できている。
次に村山氏からフォトモザイク技術の応用による販促ソリューションを紹介。厳密なフォトモザイクの定義であれば、膨大な写真画像から、パターンと色合いを組み合わせ抽出する計算を行い、マッチするよう配置して別の模様を浮かび上がらせるものである。この場合は、たくさんの写真画像から最終的にごく一部が活用されるにすぎず、また計算にとても時間がかかり、なおかつこの計算をスタートするのが素材がすべて揃ってから、ということになる。
ピットメディア社のソリューションは、ASP型で提供されるものだが、色調補正をすることでリアルタイムにフォトモザイクを構成でき、前述の問題を解消する。具体的には、イベントにおいてユーザからケータイ経由などで写真やコメントを投稿してもらい、画像変換をして完成写真を次々に埋めていく。イベントに対するユーザのロイヤルティが高く、そのイベントへの集客や、フォトモザイク完成品を印刷物などにしたときのコンバージョンも非常に高い。
消費者にとって、「メディアに掲載される満足感」「自分が好きなシンボルとの一体感」「ビジュアルインパクト」「キャンペーン・イベントに参加した思い出」「エンターテインメント性」などのメリットが得られ、企業にとっても「ファン作り、及び継続したファンサービス」「ダイレクトマーケティング・情報取得」「ポスター等の印刷商品売上」「支持率PR」「社員の写真を使って企業PR]などのメリットが得られるとした。
次に渡辺氏より、オックスプランニング社の事例を中心とした紹介。単にパネルにデジタルコンテンツを映し出すものだけでなく、OOHという観点で様々なソリューションを提供している。バスラッピングにtwitter表示をリアルタイムに組み合わせたものや、人の形をしたアクリルに特殊なスクリーンを貼り付けてプロジェクターから照射することでインパクトのある展示を実現するもの、通電することでスクリーンと化してプロジェクターの映像を映せるもの(オフにすると、透明となり向こう側が透けてみえる)。
店舗内デジタルサイネージ媒体としては「Water Vision」も紹介された。これはスーパーマーケットに設置されている水の自動販売機にサイネージをつけたもの。利用者は、給水を受けている30秒ほどの待ち時間中に、CMを流すというもので、視認性が高く、ターゲットが明快であり、音を使ったプロモーションも可能であるとした。広告枠は別に販売しているとのこと。
最後に市原氏より、東京メディアについての解説。
東京メディアの特徴としては、約300店舗に設置されて1日あたり約400万人にリーチするというロケーション、豊富なコンテンツ、時間帯やエリアごとに編成可能であること、モバイルとの連動などが挙げられる。
また、顔認識技術により年齢層などを判別してマーケティングデータとして蓄積しているとした。立ち上げから3ヶ月が経過し、前述の顔認識のデータも含め、実際に観ている(+注目している)人はかなりいるとのこと。TVCMの作り方とは異なり、短い接触時間で如何にしてメッセージを伝えていくかが重要であるとした。ローソン店舗に設置されてはいるものの、出稿コンテンツに制限を設けているわけではなく、地域性も考慮して広告を積極的に展開していくとした。
印刷業界への期待として、テレビとは異なるアプローチの媒体であり、素材も編成も違うやり方になる。新しいメディアであるがゆえに、これまで出来なかったことにもトライしてみたい。そのため、顧客へのソリューション提案という面で、お互いに知恵を出し合い、良い関係を築いていきたいとした。