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[若手印刷人 リレーエッセイ] 各従業員が自己の役割と強みを自覚し、個人の損得ではなく善悪を基軸に考え、行動できる理念を共有に価値を置く企業としてクライアント・取引先・従業員の三方から最も信頼される企業になれるように邁進していきたいです。
幼年期は自宅の隣にあった製版事務所を遊び場とし、また、輪転の巻取紙の上に乗りたいと思い、当時は10代で今では機長になっている人と遊んでいた私は、28歳の結婚と同時に勤めていた生命保険会社から父と兄が経営する会社に転職いたしました。
会社設立は昭和21年の弊社は大阪梅田と東京の2事業部をメインの営業拠点とし、主にメーカー様の商品カタログや取扱説明書、小売業様の折込チラシやDMを企画・制作から印刷・加工まで社内で一貫して行えることを強みに業務を行っています。さらに近年ではクライアントの要望もあり、中国語やアラビア語などの多言語翻訳業務も主力の一つとなっています。
設備の面では環境配慮型の「水なし印刷機」の導入や輪転会社との資本提携を行うなど多様化するニーズと激しくなる価格競争に応えられるよう東大阪と高松の2工場体制を整えて参りました。
ただ、そのような過去の業績や設備投資を可能にしたのはクライアント・取引先の皆様と従業員が半世紀以上に渡って強い信頼関係を構築してきた結果であり、そのような強い信頼を得られる従業員がいることが当社の最大の強みであり、それを重要視する社風・伝統は先輩たちから受け継いだ財産だと強く思っています。
例えば、商品内容や商品番号についてカタログ制作ご担当者様から、調べるよりも早くて確実ということで、まず弊社従業員に聞かれることや、最終電車が終わった後も、弊社でお客様と担当者が校正・修正を行う姿がよく見られます。そういった業務のやり取りを通じて、いつの間にか強い人間関係ができており、 15年以上勤めた社員が実家の事業を継ぐために退社した際は、取引先様のある部署で20名の方が壮行会を開いてくださったり、会社都合で発注が他社になってしまった際も機会あるごとにご尽力いただき、半年後にそれまでいただけていなかったお仕事も併せて弊社に戻ってきたということがありました。
高度化・専門化するニーズに対する課題
もちろん、今後も人的関係が良ければ仕事量が維持・拡大していける時代ではないと思っています。IT革命以降、Web広告の台頭と環境問題が重なり紙媒体の存在価値が低下し、またリーマンショックによる印刷広告費削減の流れは加速してきていると思います。
そのような背景からクライアントから求められることもより高度化してきているように思います。商品カタログ等では大量の商品を管理するためのシステムを提案し、データベースの構築とそれをカタログ作りだけでなく、どこまで広く利用できるかを競合他社と競うようになってきており、また、小売業様においても 内部の人的要因により、広告制作を含む販促企画全般において今までよりも弊社に企画立案とその実行をサポートすることが求められています。
今後の取り組み
私が弊社に転職した当初、受注から納品されるまでを自社だけでは完結できず企画や加工の一部を取引会社様にしていただくという製造業では当たり前のことに驚きましたが、今後はその取引会社様との関係をいかに強く・太いものとしクライアント様により高度なサービスを提供できるかどうかが重要だと思っています。
企画・制作・印刷という3つの分野があり、その各過程で企業が存在していますが、おのおの技術的にも、経営資源である「人・物・金・情報」においても得手不得手があります。現状でも取引先様との連携はできていますが、現状の高度化・低コスト化しているマーケット状況のなかで業績拡大を目指していくには得意分野に資源を集中し、相互に補完しあえる関係構築が不可欠であると考えています。
その目的達成において、弊社の人財という強みは核になり得ると思っていますし、今後もそうであり続けられるよう各従業員が自己の役割と強みを自覚し、個人の損得ではなく善悪を基軸に考え、行動できる理念を共有に価値を置く企業としてクライアント・取引先・従業員の三方から最も信頼される企業になれるように邁進していきたいです。