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景気低迷のなか物を売るための手段として五感に訴える手法が研究され、特殊印刷(特殊なインキや特殊な素材に印刷すること)や後加工は新たな価値を提案する販促ツールとして注目されるようになった。
また、背景として(社)日本雑誌協会が「雑誌作成上の留意事項」を緩和し、サンプルやCD-ROM添付などの解禁により普及に至っている。
紙媒体とWebサイトや電子書籍など、ニーズが二極化するなかで、特殊印刷や後加工など紙媒体のなかでも工夫を凝らした差別化への提案が重要になっている。
■「特殊」だからこそ表現できる質感、インパクト
従来、特殊印刷は主に小学生向け雑誌などの付録やキャンペーンのくじに使用されていた。しかし、技術の進化とともに応用範囲も広がり、POP、中吊広告、本の表紙、カバー、商品パッケージなどに使用され、一般の消費者にも浸透している。
もちろん、即時に必要な情報などはWebサイトなどが優位であるが、五感を刺激する触感、香りなどは、特殊印刷・加工ならではの優位性がある。
とくに他にはない工夫やハッとして思わず手に取りたくなるような商品はインパクトが大きく魅力満載である。最近では広告を3Dで見せたい等の引き合いが多いという。
以下、特殊印刷の一例を紹介する。
香料印刷 : 擦る、剥がすと香る
感温印刷、液晶印刷 : 温度の変化で色が変わる
感紫外線印刷 : 紫外線に当たると色が変わる
パール印刷 : 見る角度で色が変わる
デコレリーフ : 微細な凹凸により立体に見える
蓄光印刷 : 光を当てると一定時間光る
レンチキュラー : 見る角度で立体に見える
ステレオグラム : 目の焦点をずらし立体に見える
UV隆起印刷 : UVインキの厚盛りにより隆起
発泡印刷 : 熱で浮上り、隆起させる
バーコ印刷 : 樹脂パウダーを熱処理し隆起させる
また、人目を引きやすい箔押加工は、別名ホットフォイルスタンプとも言われ、文字や模様の凹凸対の型を作り、金箔、銀箔などを貼り付けて金属版で熱と圧力をかけて箔を転写する方法で製作する。さらに、エンボス加工のように、裏面を押し上げて浮かす浮出し(エンボス、裏面凹)方式、空押し(デボス、表面凹)方式がある。
これらの用途は、パッケージ、製本、文具、カードや電器製品などがある。身近にも数多くの箔押が利用されている。
■特殊印刷・加工を使った豊富な企画提案
特殊印刷や加工の組み合わせ、応用により新しい表現ができ、今までにない提案が可能になる。また、プレゼンテーションなど他社との差別化を図ることができる。特殊印刷や加工は、毎回使用しなくてもその知識を持っていると、いろいろな場面で活かすことができメリットになる。逆に特殊印刷の知識がないと、いざというとき非効率になりやすく、企画提案からデザイン、原稿作成にも注意が必要である。
例えば、箔押しのコストは箔材料の使用量に依存するところが大きい等があるため、製造面にも精通している人に相談するのが良いだろう。多くの特殊印刷から最も効果的な手法を選択することが成功のポイントになる。
特に、デジタル印刷の商品価値をより向上させるには、後加工による製品としての付加価値が重要である。より少部数で価値を得られるデジタル印刷と後加工のコラボレーションによって、新たな可能性が広がるのではないだろうか。