本記事は、アーカイブに保存されている過去の記事です。最新の情報は、公益社団法人日本印刷技術協会(JAGAT)サイトをご確認ください。
「仕組みを変えれば、世界はもっと良くなる」このタイトルはラクスル㈱の松本氏からいただいた資料の最後のことばである。今の社会やビジネスを考えるときの視点としてまさに的を射た言葉である。仕組みを変えれば、新たなビジネスが見える、とも言い換えることができよう。人間社会の営みは歴史とともに大きく変化しているが、衣食住、喜怒哀楽、恋愛、生死など人間生活のコア部分は普遍である。大きく変化しているのは、まさに人間をとりまく仕組みの部分である。
ビジネスの成功は人間の持っている欲求に応えることであるが、具体的には応えるための仕組みをどう作るかである。現在においては、その仕組み作りにITを活用することは明白なことである。e-コマース化はどの企業や業界でも展開している。e-コマースによりコンテンツは同じでも販売の仕組みがまったく異なる。現在用語風にいえば「新プラットフォーム」による世代交代というのだろうか。
| 旧プラットフォーム | 新プラットフォーム | |
| 衣 | 百貨店、商店街 | 楽天、ZOZOタウン |
| 食 | グルメ雑誌、TV番組 | 食べログ、グルナビ |
| 住 | 町の不動産 | Homes,スーモ |
| 本 | 町の本屋さん | アマゾン |
| 家電 | 家電量販店 | 価格.COM |
| 美容化粧 | 百貨店、店舗 | アットコスメ |
| エンタメ |
TV局 | Gree,DeNA |
印刷業界、とりわけ出版印刷、商業印刷の分野は、メディアの多様化、人口減少、グローバル化などの要因によって市場規模は縮小を続けている。そのような中で上位5-6社で約6割の売り上げを占めている。これだけ聞くと、八方ふさがりの息苦しさを感じてしまうが、
プラットフォームの違う「印刷通販」市場を見ると2005年に40億円であった市場が2010年には400億円に達するだろうといわれている。5年で10倍。受発注の仕組みを変えたら新しいビジネスが見えた、ということであろう。この400億市場はどこにあったのか。もともと顕在化してあったものが、企業移動したものもあろう。一方、潜在需要が改めて掘り起こされたものもあろう。どちらにしても新しいプラットフォームが社会の要求に応えたということだ。
土山印刷㈱では、20万円以下の仕事が全件数の74%を占めながら、金額ベースでは14%だという。これで本当に顧客の要求の応えているのだろうかと土山氏はいう。この状況の多くは、顧客も自分たちも印刷物のゾーニングができていない結果でなないかという。ひょっとしたらそこには「営業」への要求が薄いにもかかわらず、営業マンが足繁く通うという現状があるとすれば、そこには仕組み改革の余地が大いにあると考えた。仕組みとしてのプラットフォーム「Web to print」の必要性である。そこには本来の営業活動への集中、あいるはプロデューサー機能の拡充といった10年後、20年後に向けての仕組み作りも考えなくてはならない時期に来ている。
顧客接点としての営業活動の見直しは重要な経営課題のひとつである。厳しい経済環境の中で伸長著しい「印刷通販」を「特別なもの」としてではなく、今後の営業改革の視点から捉える必要がある。
創業100 年を迎える老舗印刷会社の「印刷通販」へのチャレンジの本当の意味、そして弱冠26 歳で大胆不敵にも「印刷通販」の比較サイトを立ち上げた、ベンチャー企業「ラクスル」の目指したものは何か、JUMP 近畿では普段なかなか聞けない印刷通販を正面から捉えてみた。
11月5日(金)開催
JUMP近畿2010
営業価値の再構築(リストラクチャリング)
---印刷通販の伸長の意味するもの