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11/5(金)に開催されたクロスメディア研究会定例セミナーでは、「動画ビジネス」をテーマに取り上げた。講師は、株式会社ニワンゴ代表取締役社長の杉本誠司氏、日本出版販売株式会社の松島凡氏。
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クロスメディア化が進む印刷・メディア業界で今注目を浴びている「動画ビジネス」。SNSや無料で閲覧できる動画サイト、自分が放送局となり動画配信できるサイトの出現などにより、今後の展開も目が離せない状況だ。クロスメディア時代の動画ビジネスにはどのような可能性があるのか、その要素と事例を学んだ。
始めに、杉本氏から「『ニコニコ動画』とは何か?担うべき役割の自己分析」というタイトルでご講演いただいた。ニコニコ動画 は、動画という共通の話題を通して多くの人とつながりを持つ機会(コミュニケーション)を体感する場として作られ、登録会員数1873万人、有料会員数100万人となっている。杉本氏は、「インターネット上での感情共有の場」と表現しており、会員が、動画を介して自己主張、自己認識、自己実現ができる場であると言う。
ニコニコ動画では、ユーザの相互作用により、「ニコニコ市場」、「ニコニコ生放送」、「ニコニコ大百科」など、様々なものが創造されている。なかでも「ニコニコ生放送」は、先の民主党小沢議員や、マスコミには出ることがない政治家などの出演により、話題になっている。事実を話したい出演者と事実を聞きたいオーディエンスが、編集の一切無いこのサービスを支持し、さらに進化しているという。
ネットの普及で発信と受動の関係が劇的に変化したメディアの世界で、従来(既存)メディアにはより質の高い情報発信が求めらるようになった。それが新たなる既存メディアの役割になっていくだろうと話を結んだ。
次に、松島氏から「日販のネット動画への取組事例」というタイトルでご講演いただいた。最初に、出版業界の規模感や自社の立ち位置、出版界の3要素などについて説明があった。現在、出版社は大小合わせて3000社以上、書店は16000以上、コンビニエンスストアは45000店以上あるという。そこに、取次ぎが7社+αが加わり、出版業界は役割分担をしながら回っている。このように、日本の出版業界の機能は成熟したプラットフォームとなっている。
日販が動画に取り組むきっかけとなったのは、1999年のオンデマンド出版社、株式会社ブッキング(現・株式会社復刊ドットコム)の設立である。またアマゾンより早くアフィリエイト販売を始めるなど、インターネットと出版リアルプラットフォームへの取り組みが後の動画に繋がっていった。その後、2007年には検定事業を開始し、現在は出版で動画を活用している。今までは、本を作り、紙面やTVで宣伝し、店舗で購入してもらうだけだったが、無料の動画サービスやSNSなどの新機能をつかった展開を始めているという。今後は、出版物の宣伝に動画を使うのではなく、動画やSNSでコミュニケーションし、既存顧客やファンを顕在化した後、読者に向けてコミュニケーションの延長で「出版」を行なう活動に取り組んでいくとした。
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