JAGAT Japan Association of Graphic arts Technology


本記事は、アーカイブに保存されている過去の記事です。最新の情報は、公益社団法人日本印刷技術協会(JAGAT)サイトをご確認ください。

メディアとビジネスをつなぐ

掲載日: 2008年12月19日

ビジネスの促進のために自前のメディアを作ったところが強い。またそれをきっかけに他のメディアへの展開でビジネスを深化させることができる。

社会の中で自由に手に入る情報が少なかった時のビジネスは、マスコミが文化事業をしていた時代を思い起こせばよいが、大きなビジネスをするところが情報発信源でもあり、情報発信源がビジネスを支配するとかコントロールすることができた。今でも大新聞社の企画する海外の美術品の展覧会などは多くの人を惹きつけているが、大新聞でなくても手がけられるイベントは非常に増えてきた。これは文化の厚みであるともいえる。

そのような変化の中で文化的な嗜好のビジネスも変わってきた。雑誌の大氾濫時代というのもあったし、ドラマのパターンも時代劇とか探偵モノなどのパターンを抜け出て数多くなりトレンディドラマのように若い人のライフスタイルとシンクロしたコンテンツもあった。嗜好の世界は次第に多様化していったのだが、それは情報源が増えていることでもあり、かつては数少ない情報源に依存していたビジネスが、自立した情報のハブになることで強みを発揮するような時代への変化である。

別の言い方をするとマスメディアと対面販売しかなかった時代は、マスメディア広告に金をかけて勝負にでるか、ドブ板営業の積み重ねのどちらかを選択するわけで、マスメディア依存のリスクを負えない場合は、非常に小さなビジネスで下積みをするしかなかった。ところが情報誌の登場や通信販売が市民権を得た以降は、自前メディアを作って対面販売の限界を破っていくところが次々と出てきた。さらに昨今ではインターネットやケータイで新たな商機が登場してきたといえる。これも自前メディアとの組み合わせでまだ大きな可能性がある。

今でこそ新聞広告の中で旅の広告がたくさんあるが、そもそもは旅行代理店が旅のプランの中心であった時代に、クラブツーリズムの前進であるところが始めたものである。旅行客は行き先を変えながらリピートするので、この会社は顧客データ管理や会員化を図り、顧客にダイレクトマーケティング誌を発行して、旅の楽しみを拡大していった。「旅を通じて仲間を作ろう」という考えは、当時としては珍しい顧客視点のビジネスであった。顧客は自分の目的・嗜好に応じていろいろな旅の企画の中から自分なりに旅のプランを織りなすことが出来る。

この顧客視点の考え方が、クラブツーリズムのユニークな「旅の友」という媒体及びそれを配布する独自のネットワーク、他所にはないユニークな旅の企画と、フェローと呼ばれる顧客側が添乗の仕事に参画する仕組み、旅の目的ごとのコミュニティを増やすクラブ1000構想、SNS、講座・イベントからカフェに至るまで、顧客層の生活・人生に非常に深く関わるような事業展開を可能にした。このために360万部の「旅の友」を始め、毎月多くのパンフレット・冊子を発行している。

こういった自前メディアでビジネスを推進してきたことは理解できるが、今の団塊世代という一過性の需要増がヤマを越すと、クラブツーリズムが自分のターゲットとする市場をおおい尽くす日も近いのではないかと思う。クラブツーリズムでは各旅の商品ごとに媒体の紙面占有面積のコストを按分していると思われるが、おそらくこういった考えがあれば、今余り使っていないネットメディアやPODも含めて、メディアの役割分担を見直すとかクロスメディアの管理をすることは可能で、それによってメディアのコストパフォーマンスを高められるとともに、今までではできなかったような、もっと顧客に密着したサービスも可能になるだろう。

例えば今日ではネット受注のPOD写真アルバムというものがよく行われるようになったが、こういったサービスも旅と連動する時代が来るであろう。今は自分の記録としてのアルバムだが、「仲間」と共有することを目的にしたもの、またポストカード化など仲間の輪の拡大に向けた派生的なPODプリントなどで、旅の充実感が外部にも伝わっていけば、参加者もビジネスをする側も良い関係を重ねていけるだろう。

旅の過程での写真や旅の後の感想などをうまく集める仕組みが出来て、コンテンツの蓄積がデジタル的にされるようになると、バリアブル印刷の出番になる。またネットの上でも旅のコンテンツを基軸にしたアフィリエイトや連携ができるはずだ。ちょうど「ぴあ」が映画のデータベースをポータルサイトに提供しているように、旅のコンテンツはネットの世界にも足場を作れるものであるし、従来の「旅の友」とPODとネットの良い関係には必須の要件だろう。

2008.12 ALPS協議会

(C) Japan Association of Graphic Arts Technology