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印刷業界にとって脅威になるのは電子書籍よりも電子書籍端末を使用したパンフレットやカタログ類である。
最近は電子書籍の話題が多くて食傷気味になっている方も多いと思うが、日本で電子書籍がアメリカの様に普及するのは少々疑問が残る。(もっともこればかりは断定できないが)
GalaxyをはじめとするAndroidが浸透してスマートフォンが普及すれば、朝の通勤風家もほぼ一変するなるだろう。現在でもサラリーマンの iPhone保有率は相当なものだが、Androidが普及しだすとアンチApple派もスマートフォンを持つことになり、親指から親指&人差し 指へシフトするのだろう。日本での電子書籍の進み方はこんなところがメインになるのだろうが、現代日本で受け入れやすい電子書籍は通勤時間帯に読んでいる 新聞・雑誌・漫画・実用書・推理小説の類だろう。
印刷業界にとって脅威というには大げさだというのが現在の状況だろう。むしろ脅威になるのは電子書籍端末を使用したパンフレットやカタログ類である。商品 名を露骨に挙げた方が判りやすいと思うので言い直したい。要するにiPadカタログといわれる範疇に入るものである。出版業界の人ばかりが電子書籍につい て焦っているが、本当の脅威は商印系のカタログやチラシ類だと考える。例えば株式会社ヤッパと千趣会が共同開発したソリューション などがこの範疇に入る商品である。
電子書籍の分類ではいわゆるラスタライズ系に属すものだが、雑誌や新聞、また日本の複雑なレイアウトのカタログにはラスタライズ系は合ってい る。「紙を単にスキャニングしたコンテンツは?」と懐疑的だった私もiPadのビューン(Softbank)などは結構重宝して使っている。ビューンを知 らない方には説明が必要だが、Softbankがヤッパと技術協力して主要雑誌の主要ページだけ有料配信しているiPad/iPhoneのアプリケーショ ンである。ビューンを使用するようになってたまに買っていた週刊ダイヤモンドやAERAはまったく買わなくなってしまったし、今まで読んでいなかった雑誌 も結構読むようになった。・・・のは私の偽らざる実例である。
またiPadカタログには紙とは違う機能が色々用意できる。その中でも筆頭なのがVR機能というか、一時代昔ならVRMLなどといってモデルがぐるぐる回 転したりするものである。VRMLは特殊カメラで360度の周辺から撮影してデータを作成するのだが、こういうデータを用意するのなら3DCGを活用しな い手はない。3DCGの新しい活用の場として「iPadカタログ」は大きな可能性を持っている。
立派な例ではないが、中国の例を挙げる。中国のビジネスでは現時点でiPadカタログがびっくりするくらい使われている。中国のマンション販売は一戸ごと の販売、つまり生コン打ちっぱなしが基本で販売される。間取り等はマンションの購入者が個別に業者を使って行うという感じなのだ。その時の内装施工業者が 持ってくるカタログがiPadなのである。
2・3冊iPadを持ってきて説明するという具合だ。iPed(iPadそっくりのWindowsタブレットPC)などではなく、まだまだ中国では高いiPadだが高級マンションの内装にはiPadで説明するのが最適なのだろう。
2010年11月30日のテキスト&グラフィックス研究会セミナー「iPadカタログの特徴と可能性 」ではこんな二例を題材に色々検討してみたいと思っている。時間はいつも通 り14:00-16:10だ。同じく毎年恒例のトピック技術セミナー であるが今年は2010年12月21日にJAGAT で行う予定である。基調講演は技能五輪の日本代表に決まった長野の亜細亜印刷さんに「わが社の人材育成と技能 五輪へのチャレンジ」というテーマでお願いする。
実は先日お願いに亜細亜印刷を訪問したのだが、入り口のところに技能五輪の記事がiPadで表示されてお りフォトフレームの様に使われていた。なるほどとあらゆる意味で考えさせられてしまった。ご期待いただきたい。
(文責:郡司秀明)
iPadカタログの特徴と可能性
2010年11月30日(火) 14:00-16:00
商品の魅力を認知させることに長けた紙カタログと、シームレスに購入手続きへと誘導することができるiPadカタログの両者をうまく使い分けることで、大きな可能性がある。
JAGAT トピック技術セミナー 2010
2010年12月21日(火) 13:00~17:30 ※JAGAT会員企業は参加費無料
「トピック技術セミナー2010」では、本年度話題となった製品を通して、新しい技術の流れをお知らせします。各製品の発表については開発思想や方向性を強調し、そのもとで具体的な製品があるという形で説明していただきます。