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シール・ラベル印刷の分野に対応したデジタル印刷機が登場している。これは他の印刷分野に比べると移行へのハードルは低いと言われているが、まだ課題はあるようだ。ここではそうした課題と後加工工程での最近の問題点について述べる。
モジュールが充実したラベル印刷機
IPEX2010はデジタルプリンティングの展示会という印象が強いことはいろいろなところで紹介されている。かつてはdrupaで新しいコンセプトが発表され、その4年後のdrupaで製品になるという流れであった。今は新しいコンセプトが出ると2年後には製品になっており、技術開発のペースが上がってきているとも言える。
今回のIPEX2010ではUVインクに対応したロールtoロールタイプのラベル用デジタル印刷機が出展され、実用機としてのものもあった。そして特にラベル業者が注目したのは本体とともにそのモジュラーだ。軟包装のパッケージ、ラベル出力機にはユーザー用のモジュールがついている。これはレイトウトなどを管理するソフトのことであり、巻き取り用紙幅の中にラベルを多面付けして出力できる。さらに従来のラベル印刷機に比べてスピードも劣るものではなく品質面でも問題はない。
■デジタル印刷機移行への課題
何十年も続いているラベル印刷の方法を切り替えられるかというと簡単にできるものではないが、今までのラベル印刷機がデジタル印刷機に代わっていくのではないかという見方もできる。しかし、今のラベル印刷機はダイカッターまで組み込まれた完成型であるのに対し、デジタル印刷機は今のところそこまで装備していないので、すぐに移行するということはないだろう。
もし、現時点で実際にラベル用デジタル印刷機を導入して生産したときの単価については、従来のものよりも少々高めになることが予想される。理由の一つとしてUVインキがまだ高価なためだ。被印刷体であるタック紙はそれほど値段の開きはない。今後の需要が増えたとき、インキの生産量との関係で価格の推移を見守らないといけない。
従来のラベル印刷機のインキとデジタル印刷機のUVインキとでは当然特性が違う。デジタル印刷機に切り替えると色合わせに苦労する。UVインクジェットでの出力は光沢度が高い。それを1つのデザインとして捉えることもできるが、すべてはそうはいかない。従来からのラベル印刷機で印刷されたときのマット調の色の部分をUVインキジェットで再現することは難しい。デザインには限界があるが、それをどこまで認知してもらうかだ。新規で最初からデザインするものはデジタル印刷機を前提としてデザインすればよい。マット調にしたいという要請があれば、マットニスの役割も果たす透明インキを使えばマット調にもできる。
デジタル印刷と表面加工の素材との相性
トナーの技術レベルは完成度が高いものがある。トナーを定着させるにはヒートロールでトナーを溶かす方法とフラッシュタイプの方法がある。ヒートロール方式ではトナーが汚れてロールに転写しないようにシリコンオイルを使う。さらにトナーは各メーカーで違い種類もたくさんあり、シリコンオイルが水をはじく性質があり、表面加工の素材との相性も合わないことがある。出力されたものと表面加工の素材の相性を検証してから制作しないといけない。
実際のところやシール・ラベルの出力機の多くはインクジェットだ。表面加工の効果を表現するには透明インキで盛り上げができる。こうした素材の性質との相性を考えると今のところインクジェットのほうが向いているのかもしれない。