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電子書籍のもつ特性のうち、コンテンツのリッチ化という面と、コミュニケーション性のあるソーシャルリーディングというサービスについて。
12/10(金)のクロスメディア研究会では、「新しい電子書籍・読書体験から見えてくる『明日のメディア』」として電子書籍について取り上げた。
「明日のテレビ-チャンネルが消える日-」の著者・志村一隆氏に海外メディア動向を学び、電子書籍は形態が多様化していくという観点から、リッチコンテンツ化についてもお話を伺った。こちらは小松左京氏の「空中都市008」をiPadアプリとしてリリースされたオフィスエランの鈴木直大氏に。
それから、ソーシャルリーディング機能についていちはやくアプリをリリースされているスピニングワークスの白形洋一氏からは、同アプリ「Qlippy」について解説していただいた。
オフィスエランの鈴木氏からは、オーディオビジュアルノベル(オフィスエラン社商標)について解説がされた。
オーディオビジュアルノベルとは何か?ということだが、「全く新しいマルチメディア小説の形式。カッコ書きの台詞でボイスを再生し、音楽とイラスト(さし絵)を物語の進行に合わせた演出に使用する」ということである。これにより、新しい読書スタイルの提案し、小説を読むのが苦手でも読みやすく楽しめるということである。
この形態の特徴としては、あくまで小説の読み味を残した、ほどよいマルチメディア化であり、読む人の想像力をサポートする声・音楽・さし絵の使い方を研究した結果のスタイルということである。
現在は電子デバイスの市場変化の真っ只中であり、新スタイルの楽しさや読みやすさが存在すべきとのことで、小説を読む楽しさを拡げるオーディオビジュアル述べるが、今後の新しい楽しみとなるとしている。
オフィスエラン社はこれまでもWindows向けDVDとしてもオーディオビジュアルノベルを推進しており、今後も様々なデバイスやグローバル化も検討しているとのことである。また、このジャンルの健全な育成(クオリティキープ、レーティング運用、参入企業育成など)を目的とした関連企業団体「オーディオビジュアルノベル協議会」も設置・運用しており、全国小中学校への体験キャラバン活動をはじめとした啓蒙活動を行っている。
スピニングワークスの白形氏からは、読書のスタイルを変える「Qlippy」についての説明。Qlippyとは何か?ということだが、これは電子書籍ならではの読書体験を提供するkとで「読書」のスタイルを変えるサービス。文章中のコメントやハイライトを共有できる。流通サービス、端末、ビューア、を限定せず、いつでも同じ読書を楽しめる。Webサイトで読書履歴やコメントを共有し、他のユーザと交流し、新しい書籍と出会える。
概要としては、電子書籍のソーシャル化に重点を置いており、「コメント、ハイライトの共有」「スクラップブック機能」「コミュニティ機能を持つWebサイト」などから成る。書籍の一部をクリップするとはいっても、書籍コンテンツそのものを扱うわけではなく、言わばニコニコ動画におけるコメントのようなものである。Qlippyは各デバイスや各サービスの持つような、依存したソーシャルリーディングではなく、オープンな環境を目指しているということである。そのために受け入れやすい機能の提供などを行うとしている。
これにより、書籍は一方通行から双方向のメディアへ変化し、これまでスポットライトの当たらなかった人たちに注目が集まるのではないかとしている。これからの課題としては、好きな端末、好きなビューアを使って購入した書籍を読むことができるようになって、電子書籍なりのメリットをアピールすることが必要ではないかということであった。
(JAGAT 研究調査部 木下智之 )