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EPUB変換による電子書籍制作

掲載日: 2010年12月21日

※EPUBには、構造化、デザイン、メタデータと電子書籍に必要な要素がすべて揃っており、オープンな規格のため、今後の可搬性や再利用性が確保されている。

リフロー型電子書籍フォーマットの代表がEPUBである。株式会社デジタルコミュニケーションズ の加藤圭志氏に、EPUBの概要と電子書籍化の経緯について話を伺った。

■EPUBの概要

電子書籍方式には、静的レイアウト型とリフロー型とその複合型がある。
リフロー型はデバイスごとに異なる画面サイズに対応し、さらに個々の読者にとって最も読みやすい文字サイズを設定し、ページ送りだけで読み進めることができる。
リフロー型電子書籍フォーマットの代表がEPUBである。

EPUBは、IDPFというアメリカの標準化団体が策定、普及促進が行われている電子書籍フォーマット規格である。フォーマットの中身は、3つの規格の組合わせで成り立っている。
1つ目はOPS2.0で、コンテンツの中身の規格である。実際の中身を記述するのは、XHTMLとCSS2.0のサブセットである。さらに、DTBook(DAISY)という読上げ用のフォーマットも仕様に含まれている。
2つ目はOPF2.0で、コンテンツ以外のXML、メタデータやファイルのリストや順序を記述する。
3つ目はOCF1.0で、コンテンツをZIPにまとめる規格である。 

EPUBは、オープンな規格である。リフローレイアウトを基本として、内容はXHTML+CSS+構造XMLである。デバイスに依存しない可変レイアウトなので、流し込みの文章や小説に向いている。雑誌・カタログなどレイアウトそのものに情報があるものには向かない。
現在、日本語組版を含めた次期バージョンの仕様が検討されており、最終案は2011年5月に公開される予定である。

■Word2EPUB

デジタルコミュニケーションズには、WordのファイルからXMLファイルを取り出すソリューション、Word2XMLがある。
それをベースにして、EPUBファイルを出力するコンバーターを作成した。DRMには未対応である。入力するものはWordコンテンツ、画像ファイル類、デザインを指定するためのCSS、表紙用の画像であり、EPUBにコンバートされたファイルが出力される。

Wordの文章をXMLに構造化するということでWordのスタイル機能を手がかりにしている。
JepaXのDTDに定義されている構造が、あかじめWordのテンプレート部分にスタイルとして用意されている。カバー、ドキュメント、凡例から、段落、見出し、章・節・項などの文章の深さ、目次などの構造を表すものをスタイルシートに付与するようになっている。

コンバートする際、いくつか注意が必要な点がある。画像や記号挿入、段組変更、全角/半角変換を、ツールバーから呼び出す方式の入力補助機能が用意されている。

■情報通信白書EPUB版の制作

「ぎょうせい」が出版している総務省の平成22年度情報通信白書の電子書籍(EPUB)制作を担当した。
今回が官公庁の刊行物としては初めての電子出版物である。ブクログのパブーより販売されている。書籍版が2900円だが、電子書籍版は1300円である。

先方からの要望で、なるべく元のデザインを引き継ぎつつ電子化した。元のデータはInDesignであったがそのままでは使えず、HTMLに変換してデザイン調整、最終的にEPUBとしてパッケージ化する作業を行った。メインの端末として、iPadで見られるようにした。

■電子書籍の抱える課題

EPUBは、構造化、デザイン、メタデータと電子書籍に必要な要素がすべて揃っている規格である。なおかつオープンであるため、今後の可搬性や再利用性が確保されている。単にEPUBにするだけではなく、その後に色々な使い方がある。
アマゾンのサイトでは、EPUBをKindleのAZW形式に変換するコンバーターも公開されている。コンテンツをEPUBにしておけば、今後潰しがきくだろう。

今、電話と言うと携帯電話を指すようになった。同じように「本を買う」と言えば、オンラインで電子書籍を買う時代が、何年したらくるのだろうか。

(テキスト&グラフィックス研究会)

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