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モバイル市場の海外・国内のトレンドとして7つの傾向がある。
①端末の多様化~スマートフォン・タブレット
②アプリケーションストア・ブーム
③モバイルアプリ
④ソーシャルネットワークとモバイル
⑤電子書籍端末とモバイルビジネス
⑥ポータブル無線ルータ
⑦LTE
①端末の多様化~スマートフォン・タブレット
世界のコンシューマ・エレクトロニクス市場予測では、2007年に比べ2011年は既存ケータイが26%から16%へシェアを減らし、逆にスマートフォンは2%から14%にシェアを伸ばす。それぞれ増減はあるが、合計すると伸びていることから、二台目需要が予測されているということである。
CES2011では、各種タブレットが展示されたが、なかでもAndroidタブレットが数では圧倒していた。また、Windows7タブレットも起動・応答は機敏になっており、Microsoftもタブレット戦略を重視していることがうかがえた。
スマートフォン市場は急速に伸びている。突破口となったのはiPhoneであるが、実際のところiPhoneが売れている印象はあるものの、メーカー別シェアとしては2.7%に過ぎない(Gartner)。一番手はNokia。SamsungやLGなど韓国陣営も非常にシェアは高い。
②アプリケーションストア・ブーム
アプリケーションストアとは、サードパーティが開発したアプリやコンテンツ(有料・無料)を提供するストア。そもそもiPhoneに対応するストアはAppStoreであるが、ここはiTunesを入り口として販路をコントロールしているものの、Androidのアプリはそういった縛りがない。そのため、アプリの販売側へまわることで利益を得られるため、アプリストアビジネスへ各社が参入している状況である。そこには端末ベンダーやキャリア、はたまた独自系も参入している。
しかし、それぞれのストア運営側がそれぞれ独自に動いていて効率の悪い部分もあり、そのため世界各国の通信事業者が共同で卸売アプリケーションストア「WAC(Wholesale Application Community)を開設すると2010年2月に発表された。これは、アプリの試験や承認といった作業を共同で行い、そこから販売については各ストアが独自に行うというものである。
③モバイルアプリ
AppStoreでの人気アプリは、有料アプリについてはゲームなどエンタメ系アプリが上位をしめている。無料アプリの多くはゲーム、またはSNS関連のツールが目立つ。
しかしAndroid Marketにおける人気アプリは、ゲームではなくツールが多い。これはAndroidスマートフォンはユーザがファイルを直接触れたり、拡張性に特徴があるためである。iPhoneについてはこういったツールはまずAppStoreの段階で承認されない。
また、ニュースや天気予報、地図やナビゲーションといったアプリは定番中の定番であり、これらはスマートフォン利用者はほとんど何か一種類はインストールしている傾向がある(Nielsen)。
④ソーシャルネットワークとモバイル
Facebookはユーザ数6億に達し、まだ勢いは衰えない。2007年5月の「開発者向けプラットフォームのオープン化」によるサードパーティ製アプリの登場(2008年後半)をひとつの契機に爆発的に増加した。6億というのはMAU(月間アクティブユーザ)での数字であり、月に一回はログインして滞留しているということなので、実際のアクティブユーザである。登録ユーザ数でいえば、Facebookは13~16億のユーザをかかえているということである。
ユーザの心を掴んでいるのが、ソーシャルアプリといわれる、いわゆるゲーム。Facebookをプラットフォームとしてそのブラウザ上で動くソーシャルゲームが非常にヒットしている。Facebookのゲームで2010年12月現在で一番ヒットしているのがZynga社のFarmVille。これはMAUが5,000万ユーザを超えている。
FacebookはFacebook Connectにより、外部ウェブサイトやアプリを繋ぐ戦略を行っている。すでに100万サイト以上で導入されている。これとスマートフォンが結びつき、PC上のアプリとスマートフォン上のアプリが連携・同期するなどユーザに利便性を提供できている。
⑤電子書籍端末とモバイルビジネス
2009年度の日本の電子書籍コンテンツ市場は約570億円。これは米国市場の数倍以上の規模。日本における電子書籍の利用の中心は「ケータイ・コミック」である。
今後としては、新たなプラットフォーム向け電子書籍市場が大きく伸び、ケータイ向け電子書籍市場規模は横ばいから若干の減少傾向に入ると予想されるが、それでも既存ケータイ向け市場は大きい。
⑥ポータブル無線ルータ
ポータブル無線ルータとは、WAN側が無線網(有線網に対応した機種もある)、LAN側がWi-Fiに対応した持ち運び可能な小型の無線アクセスポイント。つまり外へは3Gなり3.5Gで出ていくのだが、LAN内でWi-Fiにしか対応しないデバイスをネットに繋げられる機器であり、携帯ゲーム機、スマートフォン、ネットブックなど各種端末を利用できる。
⑦LTE
LTEはLong Term Evolutionのことで、下り100Mbps以上が実現できる次世代高速無線ネットワーク技術。3.9G。期待されている一方、LTEに向けたリソースの確保、モバイル・キャリアの高速化に対する戦略が議論となっている。LTE導入を示唆したモバイル・キャリアは、「モバイル・データ・トラフィックの増加への対応」を最大の理由として挙げている。スウェーデンのTeliaSoneraが2009年12月、ストックホルム(スウェーデン)およびオスロ(ノルウェー)において世界初のLTEの商用サービスを開始した。
ほかにも2011年以降はマルチメディア放送といった話題もある。
今後もスマートフォン関連では各種情報をキャッチアップしていく必要があるだろう。
(JAGAT 研究調査部 木下智之)