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2011年2月2日PAGE2011カンファレンスが基調講演1「基1 徹底検証 電子書籍で編集・制作がこう変わる 〜アジア的規模で電子書籍を考える〜」 で幕を開けた。
おかげさまで展示会場の方も出展社、スペース共にPAGE2010を上回り、カンファレンスの方も事前申込者数で昨年を大きく上回ることが出来た。お題目に挙がっている基調講演1も120名を超える受講者で熱気に溢れていた。
これも電子書籍ブームのおかげといえるだろう。Adobe Systems社も2月1日に「Adobe Digital Publishing
フォーラム
2011」を開催し、大々的に電子書籍ソリューションをPRしていた。PAGEを意識しての開催かどうかは定かではないが、PAGE前日にイベントを開い
てくれたというのはJAGATとして光栄に思わないといけないだろう。
基調講演1だが、毎日コミュニケーションズ「eBookジャーナル」の小木編集長をモデレータとして迎え、スピーカーとしてワンソースマルチユースを実践しているクリエイターの代表選手である株式会社クロスデザインの黒須氏とアジア代表として株式会社方正の河田氏の三人で徹底検証を行った。
正直な話、黒須氏のレベルの高さ、デザイナーでもありながらデータベースのプログラム設計から関われる現役プログラマーとしての実力の高さに目を見張られた方も多かったと思う。XMLデータベースを中心としたワークフローの中でいかにイニシアチブを取れるか?という点でビジネスを構築しているのだ。
方正は気がついたら世界的な大企業になっていたというチャイナドリームを地でいく会社だが、電子書籍コンテンツに関しても盤石の基盤を築きつつある。黒須さんの場合、才能があれば個人が大組織に勝てるという実例だが、方正の場合は、言葉こそ悪いが数の論理を見せつけている好例だろう。
両社に共通しているのは、自分の方法でクライアントの要望に応えられる力を持っているということである。
登壇者三人それぞれ環境や立ち位置は異なっているのだが、紙中心のコンテンツ的発想やAdobeの主張は理解できたとしても「やっぱり元コンテンツはプレーンなものほどスッキリすることは間違いがない」というのが結論である。
おそらくDTPは99%同じワークフローに従っていたのだが、電子書籍の場合はAdobe方式、Sigilなどのエディタ方式(かつてのHTMLエディタでタグ付けしていたのと同じ)、そしてXMLデータベースからの自動レイアウト方式が簿妙なバランスで推移していくのだろう。
日本は国民的、市場的にAdobe方式が多い国のような気もするが、黒須さんのようなプログラマー&デザイナー的な人が増えてくるのも間違いがない。そしてビジネスの主導権を取るのはこのタイプの人であり、単なるプログラムだけ、単なるデザイン・組版だけというタイプはイニシアチブを取るのが難しい状況になるだろう。
要するにXMLデータベースのシンプルコンテンツをマルチユースする技術ということである。(もちろん一つ一つ手作業でやっていたら意味がない)
ただしコンテンツの数が極端に増えるのでまじめにやっている人にも当然チャンスは回ってくる。その時に備えてXML的なデータハンドリングはしっかり押さえておく必要があるというのが結論である。