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厳しい時代だから経営者としてのやりがいがある

掲載日: 2011年03月10日

[若手印刷人 リレーエッセイ] 世の中の展望をどう見て、自社を社会にどう活かして行くのか?それがこれからの経営者に私達に求められることだと思います。


「昔は良かった」。よく聞く言葉ですが、最近になってより実感することがありました。私が事業を引き継いだのは5 年程前になります。世の中の景気が悪くなり、中国に仕事も取られ、状況的には決して楽な時ではなく、それとともに表面化工の認識も悪くなり、リサイクルの問題で表面化工は無くなるのではないかと騒がれていた状況でした。自社の状況を良くするために何とかしようと立ち上がり、社長に就任しました。
しかし、世の中は容赦なく、どんどん不景気になって行き、どんどん中国に仕事は流れて行きます。それでも、お付き合いいただいているお客様や、取引先、社員の協力もありなんとかやって行けている状態です。そんな折にふと「昔は良かった」と実感したのは15 年前か20 年前の古い帳面を見た時でした。お得意先の件数は今と比べると5 分の1 程度、1 件当たりの売り上げは逆に今とは比較にならない程ありました。
現在の状況と比べると余りにも大きな違いがあり、「なんで俺の時にはこんなシンドイ思いせなあかんねん!」と腹立たしさを感じました。私が社長になる時に会社は大きな赤字が出て、社員もやる気が無く年齢的にも年を取った人ばかり、大きな改革が必要とされていました。社員の若返りに伴う新規採用、排ガス規制によるトラックの全面買い替え、設備の見直し、営業を入れることにより仕事の確保、社員教育、石油製品の値上がり、私が社長になってから多くの問題に見舞われました。そして今、新たに電子書籍へ書籍の移行という問題も出てこようかという所です。でも、こんな苦しい時だからこそ社長に選ばれた。その中で私が選ばれた。最近、代表者になった他社の社長にも言えていることとも思いますが、「時代が私達を求めている!」。そう思うと随分と気も楽になりましたし、逆にこの不況も「腕の見せ所」と思えるようになり、力も沸いてきます。これからの状況をどう?打開して行こうかと。

「書籍が電子化に移行するかもしれない」と言われていますが、そのことによりかなりの影響が出ると思います。例えば、それは10 年後かも知れませんし、もしかすると1 年後にも大きな影響が出るかもしれません。
音楽関係等でも、昔はレコードだったのがCDに変わり、今はダウンロードに変わっていったように、電子化の波はどうしようもなく動いていくと思われます。弊社の仕事でも昔はペーパーバッグがほとんどを占めていたのに対して、中国への流出により現状では売り上げの5 パーセント程でしかなくなりました。何がなくなり、何が残るのかよく考えて行動しなければなりません。よく特許を取って新製品で一発逆転を考えたりしますが、私の知り合いで大手の電機メーカーで開発をしている人は、ノルマとして年間で3 つの特許を取らなければならないと言っています。それを上回る特許が我々が考えて出せるとも思えませんし、そこから更にその特許を現金化するまでの労力を考えると割に合うものではありません。だからと言って指をくわえて、ただ衰退するのを見ているだけではどうしようもない。印刷関係の中小企業のほとんどの経営者が同じ様な悩みを持っていると思います。
今、弊社としての行動は、社員にいろんな物を見せて興味を持ったことに対して企画を立ち上げて遂行しようとしています。社長の思いつきで動くのではなく、社員が興味を持ったことに対して計画を立てさせ、実行させる。実際には、まだ計画をしている段階で前に進んではいませんけど……。そうすることにより、どの程度の期間と費用が必要で、どの時点で止めるか?続けるのか?と冷静に判断できると考えるからです。もしも、自分で行うと本業は疎かになる。思い込みから止めることができなくなる。判断が緩くなることを避けるために、そうすることが必要だと考えています。リスクをどこまでと考えるのが、何より経営者としては必要なことではないでしょうか?

もしも成功すれば企画を考えた社員のおかげ。
もしも失敗をすれば決定を下した社長のせい。

それで十分だと思いますし、その方が社員にもやる気が出ると思います。ただ、リスクをどこまで負えるのかは社長にしか判断できないと思います。それだと、社運を賭けて新事業に乗り出すなんて馬鹿なことはしないと思います。あくまで自社でできる範囲内でことを起こそうと思うのではないでしょうか。実際に今までに私がこれは良かれと思い独断で導入した設備に対しても、1 カ月半程社員は使ってくれないという状況がありました。まして、全く新しいことを社長がすると、「何か社長が勝手にやってはるわ」と言われるのが落ちです。
次に人材の話ですが、今は優秀な人材も世の中に多く眠っている状態だと思います。実際に社員の募集をすると、様々な技能を持った人が表面化工の会社の機械オペレーターに募集してくる状態です。社員を雇うことは人件費も掛かります。ですが、それをどう使うか?どう見るかが経営者として必要なことではないでしょうか。そして、世の中の展望をどう見て、自社を社会にどう活かして行くのか?それがこれからの経営者に私達に求められることだと思います。
今、私が考えているのは上記のようなことです。若輩であるが故に考え違い等も多々あるかと思います。また、考え方が変わることもあると思います。これからも諸先輩方の意見を取り入れ、経営に全力を尽くしていきたいと思いますので、ご鞭撻、ご指導の程、よろしくお願いいたします。

 

[著者紹介]                                                          relay201102.gif  
植田稔久(ウエダ トシヒサ)。1970年3月10日 大阪府にて出生、2006年1月代表取締役就任。
趣味 仕事、自転車、ゴルフ、日曜大工、パソコン、工作、カラオケ、
        ギター(今から)、読書


関西化工株式会社
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設立年月日 昭和56年10月24日 
業種 印刷物表面艶出加工及び印刷物表面艶出加工に付帯する加工

 

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