本記事は、アーカイブに保存されている過去の記事です。最新の情報は、公益社団法人日本印刷技術協会(JAGAT)サイトをご確認ください。
PDFからiPhone向けの電子書籍アプリを生成する「moviliboSTUDIO」は、低コストで手軽に実現できる電子書籍として注目されている。
電子書籍には、テキスト中心のコンテンツに適したリフロー型と、印刷データを転用するレイアウト優先型がある。印刷データを転用する方法では、PDFを画像化して配信することが実用レベルで行われており、低コストで手軽な電子書籍として注目されている。
PDFからiPhone向けの電子書籍アプリを生成する「moviliboSTUDIO」について、ポルタルトの北條氏に話を伺った。
■moviliboSTUDIOとは
moviliboSTUDIOは、ソリッド(固定)レイアウト方式の電子書籍ソリューションである。エンドユーザー自身がPDFデータを用意し、それを画像化して、iPhone、iPad向けの電子書籍アプリを生成する。
App Storeから販売(または無料配信)するまでをカバーしている。MacでもWindowsでもWebブラウザー環境があれば良い。
操作は、WebブラウザーでmoviliboSTUDIOのサイトを開いて行う。PDFを登録して、プレビュー確認、エントリー設定、仕上がり確認、それからApp Storeへの申請と進んでいく。アイコンの登録や解像度、画像品質の設定も行う。
PDFを画像化する際に、テキスト情報を抽出することで全文検索にも対応している。また、PCのデジタルブックと同様にハイパーリンクや、動画・音声にも対応している。
■事例
AiR(エア)という文芸誌の電子書籍がある。作家が出版社を通さずに発行したことで話題になった。InDesignで組版とPDF書き出しを行い、moviliboにセットした事例である。
他にワールドカップの総集編と中田英寿氏の体験記をまとめたものもある。元となった紙媒体に中田氏の体験記を足し、さらにムービーやCMを追加したものとなっている。
そのほかに、数多くの電子書籍が発行されている。
■電子書籍ビジネスで成功する条件
「電子書籍を出したいが何か良い方法はないか」とクライアントから持ちかけられるケースがあったら、これはビジネスチャンスである。今、電子書籍が旬なので、版元はいろいろなタイトルを世の中に出したいと思っている。
例えば、「紙媒体で出したものを電子化したい」とか、「まだ本屋に並んでいないが、コストの関係でとりあえず電子書籍にしたい」という話が非常に多い。そうなると、当然データが必要になるが、印刷会社にはDTPで組版されたデータがたくさんある。PDFに落とすだけで、すぐに電子書籍への流用が可能である。
また、以前発行したが全く売れなかったタイトルを電子書籍として復活させたいという話や自費出版など、眠っているタイトルはたくさんあると思う。
その他、デジタル版の「WIRED」や「TIME」のような非常にデザインリッチなコンテンツがある。多くのクライアントはあのような表現をしたいと考えているが、それなりにコストもかかるため、なかなか実現しない。
現実的なのは、やはり紙媒体の二次利用であり、PDFを利用する方法である。ただし、電子書籍ならではの要素として、ハイパーリンクを付けたり、少しだけ動画や音声を入れることが重要である。
現状の電子書籍は、App Storeに配信しただけで売れるかというと、まず売れない。よほど有名なタイトルでない限り、200位以下に埋もれてしまい、検索することもできない。そのため、なかなか売れないという現状がある。
コストをかけずにどうやってプロモーションすればいいのか。電子書籍には必ずURLが割り当てられるので、そのURLをプロモーションする。
例えば既存のお客様にメルマガ的に一斉メール配信してもいいし、ホームページやブログ、プレスリリースにそのURLを載せる。また、TwitterでURLをつぶやくという方法もある。また、当社で運営しているmoviliboGARDENというポータルサイトでも、App Storeの電子書籍を紹介している。
(テキスト&グラフィックス研究会)