JAGAT Japan Association of Graphic arts Technology


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DTPエキスパートのための注目キーワード -6-

掲載日: 2011年03月06日

試験のキーワードをワンポイント解説 第6回 「Web to Print」


Web to Printは、語句に表されるようにWebを通じて印刷物を発注するシステムで、印刷発注者が営業人員を介さず出力データをWebで入稿してデジタル印刷やオフセット印刷を行う。身近にある印刷通販がその代表的な事例である。限られた営業活動のおける工数削減、人件費削減、納期短縮などの省力化が図れるので、デジタル印刷の多品種小ロットの仕事の形態には合っており、さらに従来のプッシュ型からプル型の営業になり大きな効果をが期待できる。一方、印刷通販であるような発注形態の運用では、データ作成入稿までその制作責任は発注者もしくは入稿者が追わなければならない。そのために完全な入稿データ(正しい印刷物として仕上げることのできるデータ)作成の環境、方法、手引きなどの仕組みを提供しなければならない。サイトによっては、完全データ作成のためにかなり詳細で丁寧な説明を行っている。校正手段も現物の校正に加えてオンライン校正などの仕組みが求められる。

どんな実用例が……
一般企業などでは社内印刷物や各種マニュアルなどの発注では、納期、ロット数、品質の面からデジタル印刷の利用するケースが多い。さらにリーピート発注などを考えるとWebでの受発注が適している。入稿されたデータは、デジタル印刷機へ転送されると同時に、工程管理や、見積もり、受発注管理、作業進捗管理、納品管理などが行われ、発注者は何時でも発注ができ、発注業務の簡素化が可能となる。受注者は、効率的な営業活動(営業レス)と、効率的に印刷物の提供(配送システムの充実)でき、従来の営業業務の効率化が図れる。電子送稿やオンライン入稿、24時間受付、オンライン校正などが省力化のキーワードとして挙げられる。

さらに色々な展開が……
テンプレートを利用して顧客自身が編集するオンライン編集機能や、サーバー側でデータを管理し集約して自動組版する機能を実装する展開が図れる。運用例では、発注者向けの印刷ポータルサイト(ポータルとは、portから派生して入り口、玄関などの意味)として、年賀状やはがきの印刷を注文するサイトが国内では数多くある。Web上でレイアウト指示では、名前を入れ、宛名もデータベースからアップロードし、写真を貼り込む仕組みが提供され、校正・発注することでワークフローが簡単になり、発注する企業側では経費管理も容易になる。
名刺受発注サービスでは、会社名、部署名、役職、名前や住所、メールアドレスなど、1つの会社で何種類もの不定形なレイアウトが存在する。そこで想定される全てのレイアウトを集約し、そこにデータを流し込むことによって連動した組版サーバー上で複雑な組版ルールに従って自動的にレイアウトを行える。可変データを扱うためには、自動組版を利用した名刺発注サイトが別途必要になる。
中古車や求人・グルメ情報などを掲載する情報誌型フリーペーパーの制作では、営業担当者が広告受注と同時に記事を制作していく進行の運用では、Web to Printとサーバー自動組版のシステムが必要となる。当然両者の間でのやり取りが必要になってくるので、承認、校正、発注履歴、経費管理と言ったことの対応が必要となる。
印刷通販では、完全データの作成方法やトラブル情報の公開、自社作成の標準カラーチャートの配布など完全な入稿データが作成できるための情報提供、マイページの提供(進捗状況、過去の発注履歴)、請求書・見積書発行など Webの特徴を大いに生かした色々なサービスがある。

(教育サポート部)

■Web to Print
次の文の[ ]の中の正しいものを選びなさい。
Web to Printとは、Webブラウザーからデータエントリーや印刷指示を行い、印刷物を制作・納入するシステムや仕組み、及びビジネスの総称である。Web to Printを活用した様々なビジネスは世界各国で成長しているほか、国内でも急増している。
Web to Printの第1のタイプは、印刷発注者がWebブラウザーからデータ入稿と印刷発注を行い、印刷物を制作するシステムである。入稿されたデータは、印刷管理者によって適切なデジタル印刷機やオフセット印刷へとデータを転送する。同時に、印刷ジョブの工程管理や、見積もり、受発注管理、作業進捗管理、納品管理などを行う。デジタル印刷ビジネスや印刷通販の基盤として普及しつつある。
つまりWeb to Printを活用することで、[1:①営業レス ②キャッシュレス ③DTPレス ④B to C]で、印刷受注を行うビジネスフローを構築することができる。一般企業における各種規定や製造マニュアルなどの社内ドキュメントは、デジタル印刷専業者に発注することが多いが、Web to Printでのデータ入稿と印刷発注、またリピート発注などを行うことで、発注側、受注側双方の効率化を実現する。
近年、低価格路線と全国対応で急成長している印刷通販は、オフセットでもデジタル印刷であっても、Web上でデータ入稿と印刷受発注を行うWeb to Printだと言える。
第2のタイプは、Webブラウザー上でレイアウトデザインと印刷データ作成を行い、印刷発注する仕組みである。サーバー上で組版レイアウト機能を実現することから、[2: ①Webパブリッシング ②Webページ自動レイアウト ③ネットワークDTP ④サーバー自動組版]と呼ばれることもある。
はがき・年賀状、フォトアルバム、ブログ出版、ウエディング関連印刷などをWeb to Printでオーダーする[3: ①ネットショッピング ②産地直売サイト ③印刷ニュースサイト ④印刷ポータルサイト]が増えている。例えば、デザインテンプレートを選択して写真データをアップロードし、文字を入力すると、最終イメージを画面上で確認することができる。レイアウトデザインがOKになると、印刷物をオーダーする。これらは個人向けWeb to Printの一例でもある。
中古車や求人・グルメ情報などを掲載する情報誌型フリーペーパーは、Web to Printを前提としたビジネスとなりつつある。つまりこれらの記事の中心は広告であり、[4: ①営業レス ②営業担当者 ③編集者 ④DTPオペレーター]が広告受注と同時に記事を制作し、広告出稿主の承認を得る方式が中心となっている。この方式の実現には、Web to Printとサーバー自動組版が不可欠である。
国内のDTPメーカーは、早い時期からサーバー自動組版を実現しており、顧客向けのカスタマイズとしてWeb対応も行われていた。名刺受発注サービスは、名刺特有の[5: ①多品種小ロット化  ②特殊用紙対応 ③面付け処理 ④複雑な自動組版ルール]が備えられたことで実現されたと言える。また、近年ではInDesignサーバーやQuarkサーバーの国内での提供が始まっている。これらの製品もWeb to Printシステムを構築するための仕組みであるが、カスタマイズを前提とするため[6 : ①ユーザーインターフェイス ②自動組版エンジン ③PDF出力機能 ④ネットワーク機能]を持たないという特徴がある。


模範解答
1:①  2:④  3:④  4:②  5:④  6:①

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