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試験のキーワードをワンポイント解説 第7回 「標準印刷」
標準印刷は、発受注者ともに大きなメリットがある。その一方、印刷現場では色見本に合わせたり、少しでも良い印刷物(見栄えのする印刷)を目指したりして、その都度その仕事に合わせてベタ濃度の調整をして色を作り上げてしまう。それでは、大ロット内での品質均一さ(刷り始めと終わり)の維持や毎回色の異なった印刷物となり、工業製品とは言えないし、標準印刷は実現できない。カラーマネジメントが普及した状況では印刷の標準化は、川上でも色々なデバイスを通じて最終印刷物の結果がシミュレーションでき、納期短縮やコストダウンの効果が得られる。
発注者にとっては、いつどの印刷会社に発注しても同じ印刷物が得られる。印刷会社同士でのバラツキはもとより、同一印刷会社での変動が軽減され、品質安定につながる。「いつ発注されても常に同じ物を提供する」を訴求する印刷会社や、印刷通販では不可欠なものとなっている。
標準印刷は、印刷物の品質基準カラーを決めてそれに沿った作業手順、環境で印刷すれば、品質基準カラーに準ずる印刷物ができ、仕事に応じた調整が不要になり、生産効率は上がるという考え方に基づいている。
導入にあたり印刷会社は相応の努力が必要であるが、手順が標準化されることでオペレーターのスキルの比重が減って、誰が行っても品質の安定した印刷物が得られる。米国ではSWOPや欧州ではFOGRAが標準印刷の仕様として古くから普及している。
日本でもJapanColorとして印刷物の色合いの統一を目的にISO規格に準じて日本印刷産業機械工業会と日本印刷学会標準委員会が作成した標準印刷の仕様があり、その認知度もかなり広くなってきている。標準インキ、標準用紙、ベタ色標準測色値、ドットゲイン量などが規定され、枚葉印刷(1996、2001、2007年と改訂され現在に至る)、輪転印刷、新聞印刷用の種類ごとにもJapanColorの基準がある。
この他にJMPAカラー(雑誌広告基準カラー)が、雑誌の広告カラーの色基準として日本雑誌協会から制定されている。
標準印刷は見栄えを求めた印刷ではなく、安定し品質均一の印刷であることを認識してもらいたい。標準印刷には、特に難しい基準ではなく多くの印刷業者がそれなりの管理をすれば対応できると考えがある。例えば、JapanColorのベタ濃度の色差の許容範囲が⊿E±3では大きすぎると言われる。確かに⊿Eをもっと小さくすれば精度の高い品質になるが標準印刷の主旨としては適正であろう。
JapanColorに取り組もうとするのであれば、仕様書を入手して、その作業手順と基準値に従って管理を行って印刷物を作成していけばよい。しかし、実際に導入するには幾つもの留意点、課題点がある。例えば、自社に複数の印刷機があるとか、既にある自社の基準とJapanColorが一致していないとか、濃度計(測色器)がないとかなどが挙げられる。印刷現場では色見本がないと印刷ができないとか、営業では必要ないなどの認識レベルの課題もある。標準印刷の重要性、メリットを再認識し、まずできることから取り組んでいくことが重要である。
FOGRAの認証制度のようにJapanColorでも認証制度が2009年より創設された。これは、第三者機関がJapan Colorで指定したとおりの色再現が適切に印刷会社、各種機材メーカー、材料メーカーなどで行えることを認証する制度である。発注者には、この認証制度によってJapan Colorでの印刷を受注者が適切に行えるか否かの目安、確認となる。受注者である印刷会社においても、ICCプロファイルの提供も始まり、JapanColorの色再現への取り組みも容易になりつつある。しかし、それはプロファイルの供給であって、それを十分に反映できるCMSを含めたデバイス、ワークフローの構築が必要となる。 (教育サポート部)
■標準印刷とカラーマネジメント
次の標準印刷についての説明文で常識的に考えて正しいものかどうかを答えなさい。ただし、説明文が論理的に合っていてもワークフローを考えたときに適さない場合は誤りになります。(正しい:○ 誤り:×)
1.SWOPはSpecifications Web Offset Publicationsの頭文字をとったオフセット輪転印刷の世界標準である。しかし、SWOPは許容色差の値が大きいので、厳密な運用をしているところは少ないように思われがちであるが、全世界に展開している米国の出版社TIME社は、各地の印刷工場の色基準をSWOPで統一している。かつて同社の広告原稿を作成した際に、平台校正を用いた従来のやり方で入稿したところ、色のトラブルになったこともあったが、今ではSWOPの印刷色シミュレーションをインクジェットプリンターで行い入稿している。
[A: ①○ ②×]
2.JMPAカラーは雑誌広告基準カラーともいい、雑誌広告デジタル校了ワークフローにおけるDDCPの色標準である。(社)日本雑誌協会からプリンターメーカー用にベンダーキットが発売されており、JMPAカラー準拠のカラープリンターは既に数多く市場に出ている。また、Adobe Photoshopに添付されている(もしくはアドビシステムズ社のWebサイトからダウンロード)ICCプロファイルであるJapan Web Coated(Ad)がJMPAカラーに準拠している。大手自動車メーカーは、JMPAカラーを用いたデジタル校了ワークフローへ移行している。それ以外にも実証実験を行っている広告主があり今後大きく広がっていきそうだ。
[B : ①○ ②×]
3.Japan Color 2001の印刷条件で契約した仕事なので、デジタルカメラの撮影データをJapan Color 2001のICCプロファイルを使用して分版したら、全体的に暗く重い仕上がりになってしまった。Webで調べたところ「SWOPで分版すると明るめに仕上がる」というTipsを見つけたので、早速やってみたところうまくいったので、以後Japan Color 2001指定の場合にはSWOPを使うことにしている。
[C: ①○ ②×]
4.Japan Color 2007の印刷条件で受注した。自社内にCTPの設備がなかったので、CTPでの出力のできる印刷会社にこの仕事を外注した。Japan Color 2007は、Japan Color 2001からの変更項目が製版機器の運用においてPS版からCTP製版による印刷をターゲットに変更されているだけなので、色の出力指示はJapan Color 2001にした。
[D: ①○ ②×]
5.Japan Color 2007は、CTPの運用を前提したもので、これまでの製版よりCTPの網点再現がシビアにコントロールできるようになったことにより、その色再現領域もJapan Color 2001よりかなり広がっている。
[E: ①○ ②×]
模範解答
A:2 B:1 C:2 D:2 E:1
※上記模範解答に誤りがございましたので訂正いたします。正しくは、下記のとおりです。(2012/6/18)
A:2 B:1 C:2 D:2 E:2