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今まで提案しても相手が動いてくれなかった案件はありますか? 本当に困った時こそ、本当に役立つものが選ばれる。PAGE2009特別連載 その3
毎年2月の恒例行事となったPAGEの準備が進んでいる。PAGE2009はこの不況にもめげず、昨年を上回る出展があり、しかもデジタルサイネージZoneは今回初登場、電子bookコーナーも初めて、デジタルプリントも好調、DTPではAdobeのPlugInベンダーも従来以上の新規の顔ぶれが揃うなど、このグラフィックス分野は勢いづいていることが感じられる。なぜ? DTPソフトの種類は増えないし、CTPも普及は踊り場だし、この先に展望がないのではないかと考える人もいるだろう。
しかしこのマイナスの状況がプラスに転じると考える人もいるのだ。今まで役に立つはずの新技術によるソリューションが、なかなか現実のビジネスシーンにはまりにくいことが多かった。XMLをベースにした何々MLも2000年以降にたくさん企画されたが、休眠状態のものもたくさんある。DocuTechのころからあるWebToPrintも最近注目されてきたが、まだメインストリームにはなっていない。明白なメリットがあるリモート校正、デジタル印刷、クロスメディアなどなども、なかなか実行の踏ん切りがつかないケースもあった。これらによるソリューションを提供しようというところにとっては、今がチャンスかもしれない。
それは今までアタマではメリットが理解できるソリューションであっても、現実のしがらみ、とりわけ人のつながりや組織の再編成などにメスをいれなければならないような改善はなかなか着手し難かったことがあった。またオフセット印刷とデジタル印刷の分岐点のようなところは、単価的にはオフセット、機動性ではデジタル印刷、で判断に悩むとか、コストと品質のバランスに苦慮するように、膠着状態になって何年か検討したりプロモーションしたものの、突破口が見出せないのが前述のソリューションであった。
デジタルサイネージは商店街でも目にするようになったが、それはデジカメやパソコンがあればDTPよりも簡単に電子ポスターが作れる時代だからである。作ったら目の前で見えるのでプリンタも要らなければ、カラーマネジメントもいらない。消耗品もない。掲示の手間も要らない。さらにそれがネットワークを介して広域で使われる仕組みが出てこようとしている。電子Bookも紙の印刷物制作のついでに最も安価に制作可能なデジタルメディアで、ネットワークで経費をかけずに流通させることもできる。
要するにデジタルとネットがコンテンツ流通の新たな時代をもたらす時期にさしかかっているのである。そこに景気の冷え込みが重なり、今までの膠着状態に固執するよりも、ゼロリセットであらたなメディア活用を考える機運が生まれようとしている。つまり不景気がトリガーになって膠着状態が崩れるので、その先に新たなソリューションが導入されてしまうと、もう景気が回復しても元の膠着状態には戻らない。新たなソリューションが新たな需給や品質・価格のバランスを作り出してしまうからである。
かつてDTPの萌芽期にアメリカでユーザー訪問をした時に、ある地方の新聞社が洪水にあって写植の設備がダメになり、もっとも早く新聞を出すにはアップルのレーザライタで出力して貼り合わすしかなく、それを経験したらもうDTPで新聞を作った方が良いことがわかったという体験談を聞いた。似たような話で、仕方ない状況で思い切って仕事のやり方を変えたらかえってうまくいった、というのは多くある。このゼロリセットの時代こそ、思い切った変化が可能になる時なのである。
PAGE2009 ご期待ください。