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電子書籍は、書籍・雑誌など出版分野だけを対象とするわけではない。電子カタログを使ったネットショッピング、企業内のリファレンスマニュアルなどでも利用が広がる可能性がある。
オープンエンドの平田憲行氏に、自動組版による電子カタログの制作方法について話を伺った。
■電子カタログの自動組版事例
10年以上前、高級ホイールとタイヤ・セット専門の通販会社に電子カタログの仕組みを納品したことがある。
カタログは自動組版したもので、オリジナルのビューアーも作った。自動組版なので何がどこにレイアウトされているか、領域情報がわかる。そこにURLを付加している。どの商品が選択されたかもわかるので、在庫を参照して、その結果も表示できる。
この電子カタログは、通販会社のコールセンターで電話オペレーターが使うものである。コールセンターには、問合せ電話がかかってくるが、当時は雑誌を6誌発行しており、月刊誌で何月号を見ているわからない。それを聞くだけで、即座に画面に呼び出し、クリックするだけで在庫が参照できるという使い方をした。クリックすると、商品の画像を反転させることもできる。発注情報と結びつけることも可能である。
また、単なるPDFでもリンクを貼ることで、商品を選択して発注する仕組みを作ることができる。
フリーペーパー・情報誌の大手である「ぱど」は、当社が開発したWeb to Printのシステムで情報誌を製作している。営業マンがWeb上でクライアントの原稿の自動組版を行う。営業マンはPDFのプレビューを見て内容を確認し、その後で各拠点の担当者がページレイアウトをおこなう。
以前からWeb上でもリンクを貼ってはいたが、手動で貼っていたため量が多くて大変であった。それを自動化した。自動組版の結果から領域座標とどこに何という情報だけを渡している。
これは、フリーペーパーにとって、新しい収入になるようだ。今まではWebに出すのはサービスであったが、この場合は申し込んでいない人はリンクがない。プラスアルファのお金を出した人だけが、詳細リンクに行けるようになっている。
■通販カタログとWebの連動
大手通販は、ほとんどがカタログ中心でビジネスを行っており、売り上げ面でもカタログが主流である。しかし、一部でWebファーストの販売も始まっている。
つまり、Webで売れ行きが良かったものだけを、紙のカタログに反映する。そのためには、自動組版を行い、必ず修正データをデータベースに戻す仕組みが必要である。これを実現する技術が、データシンクロである。
■データシンクロの意義
データシンクロは、基幹系のデータベースを利用するか、あるいは掲載情報データベースを作って実現する。
チラシの場合、まずデータベースからExcelやCSV形式のデータを書き出す。通常の自動組版では、このデータに対して、前加工が必要となる。たとえばブロック型自動組版であれば、データ項目を結合させたり、後ろに「円」などの文字や記号を付加したり、項目データが空だったら位置が変わるなど、前加工を行っている。
自動組版を行ったら、データベースに修正部分のデータ戻しをする。前加工した状態のデータではなく、入力時のデータにデータ戻しをおこなう。そのためのフィルターがあって、例えば項目を結合した場合はそれを分離したり、文字を付加した場合は削除することができる。
チラシの場合、発行直前に価格差し替えや商品の差し替えをおこなう。差し替えのデータが来て、どこを変更するかという情報を抽出するのが差分抽出である。新しく持ってきた価格や注文番号だけ入れて、そこだけ組み直すような感じである。
チラシの最終データがデータベースに反映できると、データベースからオンラインメディアやデジタル媒体に連動させることができる。今のWebチラシは、注文や在庫参照とは結びついてはいないが、そのような連動も可能になる。